37. エンカウンター
「はぁ!はぁ!」
疲れた様子で、閉架書庫のドアの前にやってくる。
「先輩!!」
「遅れてごめんね。」
人差し指を立てた手を口に当てる。
「でもこっからは静かにね。」
「はぁーい。」
「改めて、作戦言うよ。」
フローラル達は交互に作戦の確認をする。
「もうすぐ、閉架書庫にあるものが、初期魔法特別展で展示される。」
「そのために展示物を運びにここにやってくるから、職員が鍵を開けたときに!」
「そう、レッシェルがその職員に質問しまくって気を逸らす。」
「そのうちに私は、不安定だけど透明化の魔法で閉架書庫に入る。」
「入ったら、『読んだものを一時的に脳に入れとく魔法』を使って魔法記伝No.−3を速読する。」
フローラルは微笑んで言う。
「よし、完璧だねっ。」
レッシェルも目を煌めかせて言う。
「はいっ!」
「フローラ、やめとけ。」
背後から声が響いてくる。
階段を降りてくる。
フローラルは振り返る。
「ん?その声、ジーク?」
ジークは下を向いたまま話出す。
「フローラ、それは危険だやめとけ。」
「えぇ…。そう言われても。」
「知ってるよ。2人とも、部活で話し合ってたんだろ?」
ジークは普段とは違う雰囲気を漂わせていた。
(見られてたんだ…!)
フローラルは息を呑む。
そして、レッシェルは困惑する。
(先輩の友達?めんどくさいことになってきたな…!)
「ごめん。ジーク、これはどうしても…」
ジークはフローラの言葉を遮る。
「分かってる。でも、言われたんだ…。」
「こないだの、定期試験の実技のとき。」
そう。もうすぐ自分の番が来る直前。
「そんな呑気で、試験いけんの?」
「ぅえ?」
ジークが振り向く。
隣のフィールドの前にいる人が話しかけてきた。
俺の次の出席番号の人だ。
そう、そいつがゼクト。
話したことはほとんどなかった…いや、全くない。
そんな彼が俺に初めて話しかけてきてくれた。
その時はとても嬉しかった。
ゼクトは関西弁で第一印象、面白いやつだ。
そして、フローラの話が出された。
「君、最近よくフローラと話してるよな。」
「ぁあ?まぁそうだな。」
「フローラさぁ、なんか怪しいと思わへん?」
フローラルはこのジークの話を聞いてなにかに気づく。
「はぁっ。」
(そういうことかっ!)
「え?なんでだ?」
「君、そこまで馬鹿ちゃうやろ?考えてみぃ。」
「中2で、あの魔法技術。」
「あれは、普通やない。」
ゼクトは普段からよく笑っている。
でも、その目だけは笑っていなかった。
「ぁ、ぁあ?」
「何言ってんだ?おまえ。」
俺はその時、あんまりゼクトの言葉が理解できなかった。
すると、フィールドの向こう側からレーラの声が響く。
「そこ!早く位置につけーっ。」
「急に話しかけて悪かったな。僕の名前はゼクト。君はジークよな?」
「ぁ、うん。よろしく…。」
ジークは少し、戸惑う。
それから、ゼクトとよく、話すようになった。
そして、ある日の放課後、教室の前の廊下で。
「あのさ、あのさ。頼みたいことあんねやけど。」
「な、なんだ?」
(俺に頼み事?なんだ?)
「フローラのことやねんけどな、ほら、こないだもその話したやろ?」
「あ、あぁ。覚えてるぜ。」
「それで、なんか最近フローラ、僕のカンやと、なんか企んでんねんっ。」
「あぁ?マジか!?」
「そ。だから、その調査をしてほしい。僕が行ってもよかったんやけど、それじゃバレた時、言い訳できんからな。」
「うーん。なるほどな。まぁ…。」
「いける!?よっしゃー!ありがとな!」
ゼクトはまだジークがイエスと答えていないのに喜びだす。
「え?!俺まだ答えてないけど…。」
「じゃ、よろしくなっ!ジークっ!」
「あ、ああ。」
どっちにしろ、俺は引き受けてた。
なんだって友達の頼み事だ。そう簡単には断われない。
「ぁ、あと、もしフローラが本当になんか企んでたら、その時は…!」
「止めてや?なんとしてでもな。」
ゴクリ。俺はその言葉で一気に頼み事の重みが増した。
「もし企んでんねやったら、それはきっとヤバいことやからな。」
ゼクトは笑顔て でそう言った。
でも、相変わらず目だけは笑っていない。
ゼクトもまた、何かを企んでいるかのような。




