12. 大魔法使いフローラルと同じぐらい。
『キーンコーンカーンコーン』
『ガタン!』
「はぁ…はぁ…。遅刻しかけた…!」
扉を開け、マヨーナは急いで教室に入ってきた。
「あ、マヨーナ。危なかったねぇ。」
フローラルはもう着席している。
マヨーナは目を丸くする。
「ぇ、え!?なんで居るの!?」
「もう私は心を改めたんだよ。」
ふっふーん!と決まった顔で、そう言った。
「…っていうか、昨日のフローラのせいで遅刻しかけたんだからね!?」
「あはは、ナンノコトダカ…。」
「惚けるなぁ!」
「でも、どうやって遅刻回避できたの?」
「え?あぁ、実は私、分身でさ。」
「え?」
「影分身の魔法。ちゃんと実体があって良いでしょ。ちょっと全体的に黒いけどぉ…」
ますますフローラルの分身とやらは、色が薄く暗くなっていく。
「ちょ、フローラ!?」
「アァ、アトこのマホウ、じゾクジカんは20プんなんダァ…。」
そう言って、フローラルの分身は影になって消え去った。
「はぁ…、なんだ結局、遅刻か、フローラは。」
そうマヨーナがため息をついた時。
「まぁ、そうじゃないと、怖いだろ、逆に。」
「おやすみぃ…。」
ジークがフローラルを引っ張りながら教室にやってきた。
2人を見ると、マヨーナは再びため息をつく。
「はぁ…そういやジークも遅刻だったね。」
「しょうがねぇだろぉ、フローラのせいなんだし。」
「マヨーナ…また明日…。」
フローラルは寝ぼけているのか、はたまた寝言なのか。
担任の先生もやって来る。
「ほら、席につけ。」
「今日から、新しい先生が君たちのクラスに担当することになった。」
マヨーナや他の生徒は先生がやってくるであろう教室の出口付近に注目していた。
「フローラ!新しい先生だって!どんな人だろ!」
フローラルは、なんだ…?と目を覚ます。
そして、呟く。
「?…とんでもない魔力だ。」
マヨーナはフローラルの方を向く。
「え?」
その新しい先生らしき人の足音が彼女らの教室に向かって来る。
そして、担任の先生が紹介する。
「教科担当、魔法鍛錬。」
「性別は男で、この学校の先生の中では比較的若い。」
「そして、魔力容量はとても多く。」
「数多くの魔獣を1人で始末してみせた。」
紹介された通りの1人の先生が教室に入ってくる。
「レーラ先生だ。」
「どうも、レーラです。教科担当は魔法鍛錬です。私は数多くの…」
担任は話を横切る。
「あ、先生が来るの遅かったんで、もう紹介させてもらいましたっ。」
「ぁ、ソスカ。」
「ぁー、ではー。私レーラに質問はありませんか?なんでも受け付けますよっ。」
「「「はい!」」」
たくさんの生徒の手が上がる。
(このなかで強そうな生徒は──)
レーラはクラスを見渡す。
(あの魔力のオーラ…。)
(ん、そしてなんだあの目つきは。)
(まるで、私を魔獣の主としてでも見るような目は。)
レーラは出席簿を確認する。
(どれどれ。あの生徒は、フローラか。覚えておこう。)
またフローラルは、ゲヴァルトにつづき、レーラに目をつけられたのであった。
「先生、早く当てないと。」
担任に急かされる。
「ぁあ、えーと、ではそこの君。」
生徒が立ち上がる。
「レーラ先生は何故そんなに強いのに、この学校に来たんですか?」
レーラは自然と微笑む。
「できるだけ多くの人に、私の魔法技術を叩き込みたいからかなぁ。」
マヨーナはフローラルにヒソヒソと話す。
「実はこの先生、めっちゃ怖いとか?」
フローラルは目を細めて言う。
「全然あり得るよ、それ。」
フローラは手を挙げる。
「はい。」
すると、レーラはすぐにフローラルの方に気づく。
「お、じゃあそこの桃髪。」
「レーラ先生はどれだけ強いですか。」
「うーん…。そうだなー、言うなら『大魔法使いリヒト』よりも、かな。」
教室は静まり返る。
「…」
フローラルは唾を飲む。
「では、逆にあなたはどれだけ強いのか教えてくれませんか。フローラさん。」
「はぁ…。先生がそう言うなら──」
「私は大魔法使いフローラルと同じぐらいかな。」
すると、さっきまで静かだった教室は盛り上がる。
「ハハハッ!、強がんなってっ。」
「嘘にも程があるよっ!。」
「クラスの中で一番でも、世界から見れば違うんだよっ!」
「あの偉大なるフローラル様を馬鹿にするなっ!フローラ!」
マヨーナ、ジークはレーラとフローラルの様子を見て息を呑む。
((ごくり))
レーラとフローラルは見つめ合っている。
((これは、舐めてかからないほうがいいな。))
お互いにそう思った。




