第79話
そんなある日、いつもの通りに朝ギルドに顔を出すと
ギルドの雰囲気がいつもと違っていた。
冒険者達の数も普段より多く、何やらざわついている。
その雰囲気を感じながら受付のキャシーに
「どうしたんだ?今日は。いつもと雰囲気が違うけど?」
「ちょうどよかった。ギルドマスターがお二人をお待ちです
奥にどうぞ」
雰囲気の事は言わず、キャシーに案内されるままに
カウンターの奥に行く二人をギルドにいた冒険者達が
皆食い入る様に見ていた。
ギルドの応接に入るとすぐにギルマスのアンドリューが
部屋に入ってきた。
挨拶もそこそこに、
「新しいダンジョンが発生した」
「新しいダンジョン?」
ティエラがおうむ返しに言う
「そうだ。場所はベルグードから北東の方角
ちょうどお前達が最近アルゴナに向かった時に
通った道の近くだ。こちらに向かってきていた
商人達を護衛していた冒険者が発見して報告してきた」
アンドリューは言葉を続ける
「一般的に新しいダンジョンが発見された場合は
ギルドから指名を受けた冒険者が突入して
ダンジョンの規模や魔獣の強さを調査することに
なっていてな。
この指名クエストは報酬が良いので冒険者としては
やりたいクエストなんだ。
しかも一番最初にダンジョンに入れるって名誉も
あるしな。それにひょっとしたらレアアイテムが
落ちているかもしれないし。とにかく”美味しい”
役どころなんだよ」
「なるほど。それでみんな騒ついているのね」
「そう言うことだ。ところでお前達も新しい
ダンジョンの調査に立候補するか?」
ギルマスのアンドリューの問いにはレンが、
「いや。俺たちは手を挙げない。
他の冒険者に頼んでくれよ」
と即答すると、
「そうね。私たちは今南のダンジョンのレベル上げ
がメインだし、新しいダンジョンまで手を伸ばす気は
無いわ。落ち着いたら行きたいとは思うけど」
ティエラもレンの言葉をフォローして言う
二人の答えを聞いたギルマスのアンドリューは
二人の回答をある程度予想していたのか
驚くこともせずに
「わかった。じゃあこのクエストはお前達じゃない
他の冒険者の希望者の中から指名することにする」
「ああ。それで頼む。何でも俺たちってのは
あまり好きじゃ無い。他にも優秀な奴らが
このギルドにはいっぱいいるし、
今回はそいつらに任せてみたらいいと思う。」
レンの言葉に頷くギルマス
「実は他の冒険者達からは、レンとティエラに
調査に行かせるのか?と結構問い合わせが
来ていてな。お前達が出張るかどうかを
確かめてくれと言われてたんだよ」
最後は笑いながらギルマスが言うと
「そうなんだ。ギルドマスターってのも大変ね」
ティエラが言うと
「それだけこのギルドでのお前らの影響力は強い
って事なんだよ。まぁ今回お前達が行かないと
知ったら今度は誰を送るか、俺にとっては頭が
痛いんだけどな」
「せいぜい悩んでくれよ」
そう言って二人はギルドの応接を出て受付に戻ると
そこに集まっていた冒険者達から
「新しいダンジョンが発見されただろう?
レンとティエラは調査に行くのか?」
待ちきれなかったのかすぐに質問してくる冒険者に
「いや。俺もティエラも行かないって答えたよ」
「何? 行かないのか?じゃあ調査に行くのは
俺たちのパーテイだな」
「いやいや、俺たちだろう?」
とそこらかしこでPRし始める冒険者達
新しいダンジョンに最初に潜る名誉と
ひょっとしたらレアアイテムもゲットできるかも
しれないという可能性もあるので、ギルドの中が
急に盛り上がってきている。
それを横目に二人は受付のキャシーに
「いつもの南のダンジョンに行ってくる」
と告げてギルドのドアを開けて外に出て行った。
二人は南のダンジョンの入り口に飛んで
いつもの通り79階に降りてそこに配置されている
ランクSSの魔人、魔獣を相手にレベル上げと
武器や魔法の鍛錬を続ける。
最初の頃に比べるとパワーアップした身体や武器にも
慣れ、殲滅速度がだんだんと早くなっていく中で
この日は79階の最後のランクSSの魔人の討伐まで行き
そしてレベルもLV78に到達した。
80階に降りる階段の前にいた最後の魔人を倒して
階段を下りながら
「5時間位かしら?」
「そうだな。これからはタイムアタックにしようか。
毎回この場所を目指してどれくらいの時間で行けるか」
「それ、楽しそうね。」
今回は短くなりました。
次話で完結します。