第四章 第二十四話 「虚空の檻、神の黄昏」
なかなか話が浮かばず、投稿が遅くなりました。すみません。
乾いた音を響かせ、覆いつくしていた殻に亀裂が走る。それは、突然にして必然の予期されていたもの。城砦の奥深くにて眠っていた神獣は黒い泥によって神の従僕へと新生した。
「おめでとう、これで君は我らの従僕だ」
そして、その誕生を見届けるのは背に白い羽をもつ顔は中世的でありながら、その肉体は神聖でありながら熟れた女の色香が香る存在、大天使ガブリエル。
「■■■■■■■■■~ッッ!!」
神獣ラドゥーンのそれは新生を告げる産声のようであり、悲鳴のようでもあった。そんなラドゥーンにガブリエルは命令を下す。
「我がガブリエルの聖名において命ずる、神に逆らうこの国の全ての悉くを破壊し、奪いつくせ!」
ガブリエルの命令によってラドゥーンの巨体は蠢動し、一歩を踏み出した。その様を見届けてたガブリエルがその場から転移して。
「そいつは、不可能だ」
「っ!?」
手元に作り出した光の槍をふるったがその横をすり抜けるように一迅の影がガブリエルの片翼の半分を切り飛ばす。
「ぐっ、貴様あぁぁ!」
一瞬にて分解し針のようになった光の槍が影を襲うがその全てが影をすり抜けるだけに終わる。
「馬鹿な、空間をずらしたのか!? そんな芸当が下界の者に扱えるはずが」
言葉を言い切る前に再び地面を跳躍した影が振るった刃を光の剣で受け止め、わずかに拮抗した後弾かれるようにガブリエルは上へ。影は地面へと着地する。
僅かな接触で、ガブリエルは目の前の人間があり得ない存在であることを知覚する。
「貴方は一体、何者?」
「ただの、人間だよ」
「ただの人間ですって? 面白いことを言うわね。たかが人間ごときがその身に竜を宿すなどあり得ないわ」
「敵であるお前が認め名からろうが純然たる事実だ。そして準備は整った。白夜!」
「おうさ!」
颯天のすぐ隣に権限した白夜の容姿は普段の幼女のものから中学生ほどまで成長しており、尻尾の数も三本へと増えていて白夜の全身から霊力が可視化されるほどに迸り、その手には颯天が切り落としたガブリエルの翼があり。
「揺ら揺ら、揺れ動くは虚ろう籠。囚われの籠へと汝の身を誘う【幽虚揺籃】」
祝詞を唱え終えると取り出した匕首をもって貫く。
それと同時にガブリエル周囲の空間が歪み、それはまるで鳥籠のようにガブリエルを覆いつくす。
「この程度!」
もちろん、わざわざ捕まってやろうという気はガブリエルにもなく術の起点である白夜のへと人の丈を遥かに超える極太の光の槍が投擲されるがそれはまるで圧縮されていくかのように小さくなっていき白夜へと到達するころには針ほどの大きさしかなく白夜の三本ある尻尾のうちの一本によって容易に搔き消された。
「ふむ。大天使の名を持つことから期待しておったんじゃが、この程度か」
「ば、馬鹿な!? 全力じゃなかったにしても私の力を簡単に散らすなって、お前は、いやお前らは一体何者なんだ、なぜそんな奴らがこの世界に居る!?」
神より授かった啓二にはあのような存在はなく、あるとすれば女神を進行する人魚達の反抗だけでそれも神獣の存在でどうにかできる、といった内容で。
「くそっ!」
咄嗟に転移でこの場からの脱出を図ろうとするも自分を構成する肉体だけではなく根源である魂すらも籠の中に取り込まれているような感覚を覚え、それでも抜け出そうとがむしゃらに翼を動かすガブリエルの前に颯天が立っていた。
「落ちろ」
鞘に納めた状態の「黒鴉」を振り下ろしガブリエルを籠の中へと叩き落し。
「じゃあ、そっちは任せた」
そういい、颯天もガブリエルを追うように籠の中へと沈んでいき二人を飲み込んだ揺り籠は空間に溶けて消える。
◇
「……ここは、どこなの……っ!」
ガブリエルが叩きつけられた先は、上下左右の概念すら曖昧な灰色の虚空だった。 そこには空もなければ地もなく、ただ白夜が放った「籠」の格子代わりとなる、白銀の霊力の奔流が網目のように空間を仕切っている。
「言っただろ。お前を逃がさないための準備だってな」
音もなく、背後から声が響く。 ガブリエルが振り向くと、そこには「黒鴉」を構えた颯天が、重力に縛られることなく空中に立っていた。
「ふざけないで……下界の、ただの人間が……神の使徒であるこの大天使ガブリエルを檻に閉じ込めるなんて!」
屈辱に顔を歪ませたガブリエルが、残った片翼を限界まで広げる。 その全身から放たれる神々しいまでの光は、本来ならば見た者を平伏させる威光。だがそれを前にして颯天の余裕は崩れることはない。
「気づいているんだろう? お前程度の存在じゃ、俺を殺すに至らない。ただの『羽の生えた人』に過ぎない」
「黙れぇッ!!」
ガブリエルが叫ぶとともに、周囲に数千、数万という極光の針が生成される。 それは全方位からの同時掃射。回避不能の神罰の光。
だが、颯天は動じない。 彼の右手が黒鴉の柄に触れ。
「【閃光】」
颯天の剣によってその全てを弾き切る。
それは言葉にすれば単純な抜刀術。ただ早く納刀と抜刀を繰り返しあらゆるを切り裂きその際にわずかな光を反射する最速の抜刀術。
体が、いや魂すら震え上がらせるほどの実力差の乖離に硬直したガブリエル。
刹那。 ガブリエルの視界から颯天の姿が消えた。 万の光の針の中心に彼はいない。
「が、はっ……!?」
衝撃が走ったのは、ガブリエルの胸元だった。 音を置き去りにした一閃が。 「黒鴉」の刃が大天使の肉体を深く、そして鋭く切り裂いていた。
「神だろうが天使だろうが関係ない。牙を剥くというのなら滅ぼす」
一方、城砦の外では——
主を失いながらも命令の順守する神獣ラドゥーンが、その巨体を震わせて咆哮を上げていた。 黒い泥に侵食されたその瞳には、今や破壊の衝動しか残っていない。それを証明するかのようにラドゥーンは周囲の者を無差別に襲い掛かる。
「第二陣、防御陣形!」
そしてそんなラドゥーンの突進をアイスの指揮のもと騎士団が受けきる。
「第一陣、側面より攻撃せよ!」
続く指示に槍と大楯を持った騎馬の一群が側面からラドゥーンへと突撃し、それを援護するように魔法をも飛び交う。
「さて、わしは見物させてもらうが、おぬしたちは行くんじゃろ?」
三本の尻尾を揺らし、幼女から少女へと成長した白夜が、楽しそうに笑いながら後ろの三人に声をかけるが、帰ってきたのは無言で。
「颯天が戻るまで、『お留守番』は、うしが務めておく。暴れてこい」
そういうと白夜の周囲に展開される数多の護符が、三人の少女たちを包み、加護を得た三人はまるで白い流星となって戦場へと向かっていった。
次は、いよいよ戦闘にまでもっていければと思ってます。時間がかかるかもですが、自分も楽しみにながら執筆をしていきますので、次話を少しお待ちくださいませ。




