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エテルナ ―星の涙と帰る光―  作者: Takeko
第8章 火の息づく地
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灰域を抜けて

門兵たちの視線が、街道から現れた四人へ向いた。


一人が、ミラの左腕を気に留めた。


裂けた袖には血が染みついている。


ミラは指先を軽く曲げ、まだ残るしびれを確かめていた。


その隣では、リアが短杖を支えに立っている。


レイも足を止めると、小さく息を吐いた。


槍を持った門兵の一人が、門の前へ出た。


「ずいぶんやられたな。どこを通ってきた?」


「アルヴァから南西街道を進み、灰域を抜けてきました」


セレスが答える。


神殿護衛隊の外套は、すでに荷へ収めていた。


リアも目立たない旅装へ着替えている。


門兵は四人を見回した。


「灰域で襲われたのか?」


「はい。狼に似た異獣が三頭。肩の高さが、人の胸ほどもありました」


門兵の眉が寄った。


「そんな大きなものが?」


「黒く長い爪があり、体から黒い靄が漏れていました」


門兵は、傍らの兵士と顔を見合わせた。


「……聞いたことがないな。このところ、街道を通った者からも、そんな話は出ていない」


「三頭とも倒しました。ただ、爪で毒を受けた者がいます」


セレスがミラへ視線を向けた。


「傷はふさがっていますが、まだ腕にしびれが残っています。治療師のいる場所を教えていただけますか」


門兵はミラの左腕を見て、すぐに門の内側へ手を向けた。


「入って右の通りだ。軒先に赤い布を下げた治療所がある。マレナという治療師を訪ねてくれ」


「ありがとうございます」


セレスが頭を下げた。


リアが歩き出そうとして、わずかによろめいた。


レイがすぐに腕を支える。


「ゆっくりでいいよ」


リアは支えられた腕へ目を落とした。


「ありがとうございます……」


門兵が脇へ退き、道を空けた。


「早く診てもらえ。暗くなる前に着けるはずだ」


四人は鉄門をくぐった。


門は開かれたまま、槍を持つ兵士たちが行き交う人や荷車へ目を配っていた。


レイは門の脇を通り過ぎながら、一度だけ背後を振り返る。


赤黒い石柱の間に、灰色の街道が続いている。


灰霧はもう見えなかった。


それでも、ラミアの声だけが耳の奥に残っていた。


――また遊びましょう、光の使徒。


「レイ」


セレスの声に、レイは前を向いた。


門の内側には、赤い屋根と石造りの町並みが広がっていた。


煙突から細い煙が立ち、通りのあちこちで炉の火が揺れている。


乾いた槌の音が、夕暮れの空へ一定の間を置いて響いていた。


灰域とはまるで違う。


色がある。


熱がある。


冷えていた体へ、人の暮らしの気配が戻ってくる。


アルヴァ方面から来る行商人や旅人は珍しくないのだろう。


道行く者たちは、四人の旅装そのものには目を留めなかった。


ただ、灰と血にまみれた姿には、何人かが振り返った。


荷車を引く男が、黙って道を空ける。


四人は教えられた通りへ入った。


リアの歩みは遅い。


レイが腕を支え、歩調を合わせる。


ミラも左腕を庇いながら、二人と並んだ。


通りを横切る荷車が過ぎるまで待ち、それから先を指す。


「あの赤い布じゃない?」


通りの先に、軒から赤い布を下げた石造りの建物が見えた。


開いた窓から、乾燥させた薬草と温めた水の匂いが漂ってくる。


「ここですね」


セレスが扉を開ける。


四人は薬草の匂いに迎えられながら、治療所の中へ入った。


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