95 北の森の魔物
「それで北の森の魔物はどんなやつなんだ?」
準備をして北の森へ向かう途中俺はジュリアさんに質問する。
「それがな…恐らくなんだが悪霊と呼ばれる魔物だと思われる」
「悪霊?恐らくって言うのはなんでなんだ?目撃者はいるんだろ?」
犠牲者も出てるとは言っていたが全滅しているとも聞いてない。
「あぁ。いや恐らくと言うのが悪霊と言う魔物自体よくわかっていない存在なんだ」
「正体が不明の魔物ってやつだな」
ジュリアさんの言葉にゼノンが続く。
「正体不明?」
「というより本当の姿が不明と言う感じだな。おそらく魔力生命体であろうとは言われてるのだが、姿を変えるんだ」
それはなかなかめんどくさい相手になりそうだな。
「魔力生命体なら魔法が効くんじゃないのか?」
「そうなんだが、結果魔法が効かずエルフに犠牲が出てるという訳だな。魔法が効かないとなるとエルフの戦闘力はかなり落ちてしまう」
エルフにとっては天敵な訳か。
んー。正体不明…か。
「アクアは何か知らないのか?」
困った時は理の外にいる便利精霊に聞いてみる。
「悪霊ですか…。古代の魔族が…関係している存在とだけ…」
お。やはり知ってた。しかしちょっと言いにくそうな感じなのか?
そう思いマリクさんを見ると難しい顔をしてる。
やはりこれもあまり言ってはいけない話か。
「魔族?しかし奴らはすでに滅んでいると…」
「えぇ。ですので魔族そのもの…と言うか魔力と言うか…」
ジュリアさんの言葉にアクアが返す。
何かハッキリとは言えない感じに聞こえるな。
「滅んだのに魔力だけ残っていると言うのか?」
「…そうですね…流石にこれは話すのを躊躇うのですが…」
アクアが言い淀んでマリクさんを見る。
理から外れたアクアが言うのを躊躇うってどんな事なんだ?
「…ふむ。我ら精霊の根幹が絡むからのぅ。うーむ。順番がまためちゃくちゃになるからのぅ」
マリクさんが唸っている。
順番がめちゃくちゃか…
と言うことはいずれ知る可能性があるって事か…。
「…精霊王に会えばわかる話なのか?」
「…本当にユウキ殿の察しの良さは怖いのぅ。そうじゃ。本来この話は精霊王がするべき話じゃの。とは言えワシも大精霊の身。一応話す権利は持っておる。精霊石をハルちゃんに渡しているから聞く権利もある」
「え?私は聞いてもいいって事??」
「うむ。その資格はあると言うことじゃ。」
なるほど。大精霊が認めた相手なら話してもいいと。
「じゃ教えてもらおう!ユウキも知りたいよね!?」
「そうだな。これから戦う相手だからな」
マリクさんが目を瞑り少し沈黙したあと意を決したのか目を開き話し始める。
「悪霊と言うのは精霊と同じような存在じゃ。正確にはある特定の条件を満たした魔族が成る存在じゃな」
「…精霊と同じような?」
「うむ。それについて話すにはまず精霊とはという所じゃな。」
この流れで精霊の話か。つまり…
「精霊は初めから精霊じゃないってことか?」
「うむ。察しの通りじゃ。では精霊は何か…と言うことじゃ」
「悪霊が魔族から…精霊は…」
「…エルフが成る存在じゃ」
「…っな!」
マリクさんの言葉にジュリアさんが絶句する。
「これは今存在しているエルフでも知っておる者はいないであろうな。最後に精霊に成ったのは何千年も昔になる」
「ジュリアさんもいつか精霊になるの?」
ハルが質問を投げかける。
まぁエルフが成るなら可能性はあるんだろう。
「条件を満たす事があれば…あるいはのぅ」
「と言うことはマリクさんやアクアも元はエルフだったと?」
「うむ。と言っても古代の話じゃよ。そうじゃのぅ…1万年以上前の話か」
そんな昔の話なのか。
「エルフと魔族からそれぞれなるのが精霊と悪霊って事か。その両者に何か関係があるのか?」
「ユウキ!我らエルフが魔族と同じと言うのか!?」
俺の言葉にジュリアさんが怒りを見せる。
しまった言い方が悪かったな…。
「ジュリアさんごめん。そういう意味で言ったわけじゃ無いんだ。ただマリクさんの話では精霊と悪霊が同じような存在となるとその前の存在も…な?」
「…それはそうか…すまない大きい声を出してしまった」
「気にしないでくれ。むしろ俺の配慮が足りなかった。こちらこそすまない」
ジュリアさんとお互いに頭を下げる。
その姿を見てマリクさんが続ける。
「うむ。エルフと魔族の話となると、この世界の成り立ち。神の話にもなる。その辺は精霊王でないと話せぬ。と言うよりワシも全てを知ってるわけではない。話せることは魔族が悪霊に成ると言うこと。そして悪霊を倒すにはどうするかと言う話じゃ」
精霊と同列の存在…。
アクアと戦った時は魔法で魔力を削るしかないとマリクさんが言っていた。
後は核…精霊石を俺の力で切るだったか。
だけど魔法が効かないとなると。
「悪霊を倒すには核を壊すか、魔力そのもので消滅させる。もしくは…」
「もしくは?」
「女神の力で浄化するか。じゃのぅ」
魔力そのものってなるとマリクさんが使ってたあの力か。
ハルは使えるようになったやつだな。一応ジュリアさんも使えるか。
そして女神の力…
「ハルのあの光か?」
「うむ。本来精霊王に会ってその話を聞くべきなのでな。順番は…まぁここでそれを話さずにお主らに何かあるのは困るからの。仕方ないのぅ。ハルちゃんは確かに女神の力を持っておる」
マリクさんが断言する。本来はこれも今知るべきことではないんだろうな。
「悪霊に対抗する手段としては、ハルの力と俺の力が使えるってことか。女神の力を使えば俺の闘魔融合も安定できそうだからな」
「むー。あの力は使って欲しくないんだけどなぁ」
ハルがむくれて言う。
「でもそうするとハルに任せきりになっちゃうからな。一緒に戦うんだろ?大丈夫だよ。ハルがいるならな」
「むー。」
あまり納得してないようだな。
さてどうしたものかと悩んでいると…
(ユウキ様…聞こえますか?)
アクアからの念話が聞こえてきた。




