94 エルフと人
「なるほど…私達の信頼を得たいと。それがノーム様の信頼になると。そういう事ですね?」
「あぁ。だけど先に伝えておきたいんだが、確かにノームとの約束でもあるが、俺個人としてはエルフと仲良くしたいって気持ちもあるんだ」
「我々と?」
「俺達はこの世界に来てまだ日が浅い。その中で知り合った人達は皆とても良くしてくれる。そしてその中にジュリアさんもいる」
そう。この世界で知り合った人、エルフ、精霊と皆良くしてくれている。もちろんそうでない人も沢山いるのだろうが…。
「ジュリアさんへの恩を返したいんだ。過去にエルフにとって許し難い出来事があったのはジュリアさんに聞いた。それでも全ての人がそうでないって事をわかってもらいたい。それが人の世界で生きることを選んでくれているジュリアさんへ返せるものだと思うんだ」
そう。ジュリアさんはエルフのしきたりが嫌で里を飛び出したと言っていた。
そんな中俺達のために里へ戻ってくれた。
里の中で見るジュリアさんは、特に里に対し嫌悪感があるようには見えなかった。
「俺の思い違いだったら恥ずかしいんだが、ジュリアさんは人もエルフも好きなんだと感じたんだ」
「ユウキ…。あぁその通りだ。里を飛び出した身でこんなことを言うのもおかしいかもしれないが、私はエルフも人も等しく好きだ。お互いが手を取りあって暮らして行ければと思っている」
良かった。俺の勘違いじゃ無かったようだ。
ジュリアさんが話を合わせてくれた…って感じでもないな。
「過去のことを全て水に流せと?犠牲になったものたちを忘れろと?そう言うのですか?」
俺達の言葉にアメリアさんが圧をかけてくる。
やはり面白くは感じないよな。
それは予想できた。
「そんな事は言わない。過去に人が犯した罪は罪だ。そして犠牲になったエルフの事を忘れろなんて言わない。ただ未来を見て欲しいんだ」
綺麗事だと、偽善だとエゴだと言われてしまうかな。
…それでも
「先々まだ産まれてない子達が憎まなくていい世界にできないか?お互いが手を取りあって助け合う世界にすることはできないだろうか?今の俺達とジュリアさんのように」
「…。」
俺の言葉にアメリアさんは沈黙している。
「長よ。ユウキ達はこの世界に来てからまだ、ひと月足らずだ。その中で私、竜人族、そしてこの世界で生まれた人達の信頼を得ている。全ての人を信じよう等と言うつもりはない。それでも人だから信じないと言う事もないのではないか?」
ジュリアさんの言葉に長は少し沈黙した後…
「……今この場で信じるとは言えん。信じる理由がないからな。」
「それは理由があれば…?」
「信じてやると言い切ることはできない。だが考える事はすると約束しよう」
どうやら歩み寄ってくれるようだな。
後はその理由か…。
エルフの信頼を得る為のものって何があるのだろうか?
「…この森の北で起きている問題を解決して欲しい」
ボソッとアメリアさんが呟く。
「森の北?何か起きているのか?」
「少し前から得たいの知れない魔物が現れている。何度か調査したのだが、エルフにも犠牲が出ている」
「それを退治して来いと?」
「退治するか、追い払うか。そもそもあの魔物が何なのかもわからんのでな」
「わかった。どうにかしよう」
アメリアさんの話を俺は即答で受ける。
「ユウキいいのか?我らエルフは魔法の扱いにおいては人より優れている。そのエルフに犠牲が出ているほどの魔物だぞ。…正直危険だ」
ジュリアさんが心配をしてくれる。
「魔法が聞にくいなら俺とゼノンの出番だろう?危険は承知の上だよ。それにこれだってハルの役割でもあるだろう?」
ハルは【世界を破滅から救う者】なんだ。
その魔物がもし破滅をもたらすのなら倒さなきゃならない。
そして俺の力は逆に言えば倒せないものは無いはずだ。
俺は【世界を滅ぼすモノ】だからな。
「でも魔法が効かないんだと私余り役に立てないかなぁ?」
ハルが不安そうに呟く。
「んー。でもハルは回復魔法も使えるし、全く何もできないってことはないだろ?あの女神の光?なら聞くかもしれないし」
そう。魔法が効かない理由が何なのかなんだよな。
魔法無効とかなら、マリクさんの無属性は効くかもしれないし。
「とは言え不安ならここに残っても良いぞ?確かに危険はあるだろうからな」
「むー。私がそれでここに残ると思って言ってるの?」
俺の言葉にハルがムッとなる。
まぁそういう反応するよな。
「一緒に戦うって決めたもんな。わかってるよ。でも危険な目に合わせたく無いのも本音だからな」
「…うん。ありがと。でもそれはユウキだって一緒だからね?私だって心配してるんだからね?」
「あぁ。ありがとうな。ハル」
そう言ってハルの頭を撫でる。
撫でられたハルも笑顔になってくれる。
あー。可愛いなぁ本当に…。
「ゼノンよ」
「どうしたジュリア?」
「あの2人何か進展したのか?なんと言うか…」
「あー。前から近かったけど距離近づいてるよな。でも相変わらず付き合ったりはしてないみたいだぞ」
「…あれでか?」
「…あれでだ」
「どこからどう見てもカップルなんだがなぁ」
「…俺はあの2人を守るぞ。ミナトのようになって欲しく無いからな」
「…ゼノン。大丈夫だ。私もいるしあの2人は強い」
「そうだな。それはそうだ」
「さて。私は準備してこよう。また後でな」
ジュリアを見送ってゼノンが呟く
「今度は守る。ハルの役割も重い。そして…ユウキ」
ゼノンがユウキの方を見る。
「お前の背負ってるものはなんだ?」
その呟きはユウキ達には聞こえなかった。




