89 ゼノン
「ゼノンのせい?」
「あぁ。俺のせいだ。俺が竜の力に目覚めたいなんて言わなきゃあんな事にはならなかったんだ」
それから昔何があったかゼノンが語り始めた。
〜〜〜
100年前この世界に召喚されたミナトは同じく召喚されたマナカと出会う。
2人とも元の世界に戻る為の達成がわからず、元の世界に未練もなかったためこの世界で冒険者として生きていくことを決める。
旅を続ける内にお互い好意を抱き始める。
そんな時にゼノンと知り合い、一緒に依頼をこなした所から冒険を共にするようになる。
「ミナトは錬成者としてマジックアイテムとか作り出すことが出来た。マナカの探求者は分からなかったがとにかく勘が冴えてたな。2人は幸運チートだとか言ってたかな」
どちらかと言えば後方支援の得意な2人とゴリゴリの前衛のゼノンは相性が良かったらしい。
「当時の俺はまだ竜人族として覚醒してなかったんだ。この角も無かった。竜人族ってのはある試練を受けて竜人に成れるんだよ」
「試練?」
「あぁ竜と戦い勝つことで竜の力をその身に宿すことができるんだ。あの頃3人でいればなんでも倒せるってなっててな。竜に挑んだ」
竜の試練か。でも今ゼノンが竜人に成っているということは…
「試練は突破できたんじゃないのか?」
「あぁ。試練は…な。だがその時にマナカが犠牲になった。」
ゼノンがグラスの中身を飲み干す。
「俺は竜人の力を手に入れたが、ミナトはマナカを失ってな…。マナカを甦らせると言っていたんだが、その後程なくしてミナトは姿を消した。」
「そのマナカを甦らせる術を探すうちに魔王の魂を錬成する術を知ったってことか」
「恐らくな。今もマナカを甦らせるつもりなのか…それともこの世界を滅ぼしたいのか…わかんねぇけどな」
ミナトがスケルトンを使っていたのも人の命を甦らせる術を探していたからなのかもしれないな。
「ゼノンはミナトに会ってどうしたいの?」
ハルがゼノンに質問する。
「正直わからん。マナカを失ったのは俺のせいだ。許してくれと謝りたいのかもしれんが…今更だとも思う。ただアイツが世界を滅ぼそうとしているなら止めたいと思う。昔の仲間としてな」
「うん!それでいいと思うよ?100年前の事私は見てないし、詳しくどうしてマナカさんが命を落としたのかもわかんない。けど、ゼノンはマナカさんを犠牲にしたかった訳じゃないでしょ?」
「あぁ。もちろんだ。」
「悲しい結果になっちゃったのかもしれないけど…」
「ハルの言う通りだ。100年後悔してたんだろ?ゼノンがあの神殿にいたのもそれが理由なんじゃないのか?」
きっと召喚された人が無駄に命を落とさないよう指導する。そうしてきたんだろう。
俺達も指導してもらったんだ。
「あぁ。自己満足だってのはわかってたがな。まぁ、ここに俺の指導なんて必要ないような2人がいるけどな」
そう言って、笑いながらお酒を注いでいく。
「いやゼノンの指導のおかげだよ。少なくとも俺はそうだ。感謝しているよ」
「私もだよ!ゼノンは良い人!」
「ありがとな。…俺はミナトを止めたい。例えそれがミナトを殺す事になったとしても…な。ユウキ、ハルお前らに着いてきたのも俺の私情だ。すまん」
「謝る必要なんてないさ。結果ミナトは俺たちを狙って来るしな。ゼノンが一緒にいてくれるのは心強いよ」
「そう言ってもらえると助かる」
「あぁ。今後もよろしくな。…と一つだけ質問してもいいか?」
「ん?どうした?」
「ミナトが召喚されたのは100年以上前ってことだよな?」
「あぁ。正確に何年ってのは覚えてないがな。それがどうした?」
「ルーナさんも面識あるんだよな?あの人も竜人族みたいな種族なのか?」
そう。つまりルーナさんも100年以上生きてる事になるんだよな。この世界に生まれた人だとは聞いていたが。
「あー。それか。…んー。俺から詳しくは話せないな。ただルーナにも抱えてるものがあるって事だ。…お前のようにな」
そう言って俺を見る。
「…なるほど。わかった」
「ユウキの抱えてるものも俺にはわからん。ハルも知らないんだろ?」
「そうだよー。知りたくないって言ったら嘘になるけど…今はユウキを信じるって決めたから…」
ハルが船の中での事を思い出したのか少し泣きそうな感じになる。
「お前ら2人の事だから俺はとやかく言わないが…。あまり泣かせるようなことするなよ?…大事な相手なのは間違いないんだろ?」
「あぁ。それは間違いない」
ゼノンの問いかけに即答する。
「…えへへ。今はその言葉だけで私は幸せになれるよー」
「あー。藪蛇だったか。イチャつきやがって。さぁ昔話も終わりだ。今日は休むぞ。明日は世界樹の森に入るからな」
「わかった。明日からもよろしくな。ゼノン」
「おう。また明日な」
「ゼノンおやすみー!」
ハルと2人でゼノンの部屋を出て自分達の部屋へ向かう。
歩きながらハルが喋りかけてくる。
「ミナトも可哀想な人なのかな?」
「そうだな。でもだからと言って世界を滅ぼすことも、ハルを傷つける事も許すつもりは無いよ」
「んー?ユウキにとって世界と私は同列なんだ?」
ハルがちょっと照れながらこちらを伺ってくる。
しまった。勢いで口走ってしまった。
ちょっとお酒入ってるせいだな。
まぁいいか。むしろ…
「…同列じゃないよ」
2人の部屋に到着し扉を開け中に入りながら答える。
「え?あ、そうだよね。流石に世界と一緒ってわけじゃ…」
ハルがちょっと寂しそうな表情になる。
それに対し、ベッド近くまで進んだ俺がハルの言葉を遮りながら…
「ハルの方が上だ。俺は、世界なんかよりハルの方が大事だよ」
「……っ!ユウキ!」
ハルが胸に飛び込んでくる。
そのまま勢いでベッドに倒れ込む。
「ユウキ…。うん。嬉しい…嬉しいよ!そこまで言ってくれてるのにって思う所もあるけど…」
まぁ告白してるのと何が違うんだって話だと自分でも思うわな。
酒の勢いって良くないな。
「ごめんな」
「ううん。いいの。今はこれでいいの。ただ今日は…このまま寝てもいい?」
このまま…つまり抱きついてる状態か。
中々理性との戦いになるな。
ただ…断れないよなぁ。
「わかったよ。今日だけだからな?」
「えへへ。うん。ありがと。おやすみなさい」
「あぁおやすみ」
そしてそのまま眠りについた。




