86 船旅
ゼノンがすごいのか直ぐに船は手配でき、どうせ一日でつかないのだからと直ぐに出発となった…のだが。
「わー!風が気持ちいいねぇ!」
この世界の船は帆船だった。まぁエンジンなんて無いもんな。
とはいえ魔法のある世界のため、
風は起こせるし、水もコントロールできるわけで。
しかもこちらには風と水の精霊を召喚できるわけで。
なんなら水の精霊は召するまでもなくここに居ますしね。
「水の調整もこのぐらいでいいですかね?」
「凄いなアクアは。アクアが調整してくれてから船が全然揺れないな」
乗った瞬間はあの船特有の揺れがあったのだが、アクアが調整したところ全く揺れを感じなくなったのだ。
おかげて船酔いせずに済んでいる。
そしてハルの召喚したシルフのお陰で風が目的地方向へ吹き続けているため最速で進んでいる。
「シルフちゃんありがとうね!」
「どういたしましてだよー」
「一日でつかないと思ったんだがな、精霊をこんな簡単に使えるお前らの事忘れてたわ。この調子なら明日の昼には向こう側に着きそうだな。最短記録だぜこれ」
ゼノンが船室から出てきながら呆れている。
まぁ精霊を一体でも召喚できるだけでもとてつもないと言われる中すでに4体だもんな。チートも良いとこだ。
「向こう側は街なのか?」
「いや船着場があるだけだな。その先は徒歩で世界樹の森まで行くことになる。確か近くにギルドの施設はあったと思うが、街って街はないな」
なるほどな。どちらかと言うと未開拓の地ってことか。
「あの辺はエルフのナワバリみたいなもんだからな。あまり人が近づくことを好まない。今回も大丈夫かなって心配はあるさ」
ゼノンが心配そうにしている。
エルフは人を好まないか。確か古いしきたりだと。
「ふむ。どうにかジュリアさんと合流した方が良いのかな?」
「ジュリアがいた所でって話だとは思うがな。どちらかと言うとジュリアはエルフの中で異端児だからな」
「なるほど…な」
「ユウキ様?そこまで心配なさらなくても大丈夫だと思いますよ?」
アクアがそう言いながら近づいてくる。
「ん?そうなのか?」
「はい。エルフは魔法主体の生活をしてる関係か、精霊を大事にしてくれる種族です。ユウキ様は私と契約してますし、ハル様は3体の精霊…しかもそのうちの一体は大精霊様です。お2人に対してエルフが敵対するようなことはまず無いかと」
「精霊の認めた人間なら…ってことか?」
「はい!なのでゼノンさんはどうなるか知りませんが」
「おーい。ユウキ?俺の事守ってな?」
「…善処する」
「まぁ敵対するようなら私の水で薙ぎ払ってさしあげますね!」
この子中々過激な事言い出すんだよなぁ。
指摘すると闇堕ちしたからで通してくるし…。
「あー!また私のいない所でユウキにちょっかい出してるなー!」
最近この流ればかりだな…
ハルのヤキモチは正直嬉しいんだけどな。
「しかしまぁ、ハルも気持ち全面に出すようになったな。俺が最初に会った時とはだいぶ違うな」
「えー?そうかなぁ?まぁあの頃は完全に片思いだと思ってたから…」
ゼノンの言葉にハルが答える。
いや、この会話ここでするの?
「ってお前ら本当にお互い一方通行だと思ってたんだよな?俺ですら会った日にわかったのに」
「え?そうなのか?」
「あぁ。どんな茶番だよと思ったぞ」
まぁ今思い返せば…あぁ。って事は無くはないのだが…。
「まぁ、ルーナのやつはそれはそれで面白がってたけどな。でもお前らまだ…そういう関係じゃないんだっけか?」
「うん。そーだよー。お互いが一番特別ではあるけどね」
ハルが一番を強調する。
アクアをまた煽ってるのかと思ったら…
「それ以上はまだダメなんだってさー。ゼノンどう思う?」
おや?これは俺が言われてるやつか?
んー。俺だって別に付き合いたくない訳ではないんだけどなぁ。
「ユウキに何か理由があんだろ?とは言えお前らの事なんだ。二人で決めるしかないだろ?」
「むー。ゼノン使えない…」
「え…そう言われてもなぁ。そういうのはルーナ辺りに言ってくれ」
ゼノンがヤレヤレと言った感じになる。
「そう言えばゼノンにそう言った人は居ないのか?」
「ん?俺?…まぁ里に戻れば居なくはない。とは言えもう何年も帰ってないけどな」
おや。意外だったいるのか。
しかし何年も会わないとか…いいのか?
「えー。会いたいとかないのー?ってかもしかして奥さん?」
「…ん。そうだ。一応番だな。…いや会いたいとかはないな。元々竜人族って家族で過ごすこともないんだよ。子孫残すために番になるがその先夫婦で過ごしたりはしないんだ」
「えーーー。そんなの寂しいよー?ねぇ?ユウキ?ユウキはそんな事しないよね?」
「そんな事しないってどんな質問だよ…。って事はゼノンは子供もいるってことか。ってゼノンって何歳なんだ?」
子孫の為に番になると言っていたからな。
番がいるってことは子供もいるってことだよな。
「あー。200位までは数えてたがその先はもう忘れたな。300はいってないと思うぞ。ルーナよりは下だ。まぁ誤差みたいなもんだけどな」
おっと。想像以上に上だった…。
やはり人以外の種族は寿命も全然違うのか。
そういう所やっぱり異世界なんだよなぁ。
「さて…そろそろ日も暮れるな。船室入った方がいいぞ」
「そうだな。とりあえず今日は休もう。シルフ、アクア船の事頼んでいいか?」
「大丈夫だよー」
「お任せ下さい!魔物も近寄らせませんから!」
休んでいても、風は目的地へ吹き、水の抵抗も減り、魔物も近寄らない。うん。精霊様様だな。
「ありがとう。よろしくな。」
精霊2人に挨拶して船室へ向かう。
「そういやお前ら1部屋でいいのか?まだ他の部屋も…」
「大丈夫!」
ゼノンの言葉にハルが食い気味に答える。
あー。この流れもあったなぁ。
「はいはい…。ご馳走様だな。ほれここだ」
「ありがとう。じゃあまた明日な」
「おう。あまりイチャつき過ぎるなよ?」
ゼノンがヒラヒラと手を振りながら去っていく。
別に何もしないって…同じベッドでは寝るけども…。
いや俺は同じじゃなくてもいいんだよ?
ほんとだよ?
「ふぁぁ。眠い…。ほらユウキ寝るよー」
ハルが先にベッドに入って俺を呼ぶ。
うーん今日も理性との戦いだなぁ…




