8 力
「こちらが修練室になります。」
案内された部屋は特に何も無い広い部屋だった。
いや部屋の中央に台座のような物があるか。
しかしこの世界に来てまだルーナさん以外に誰にも会ってないな。
それなりな広さがある建物だと思うのだけど…。
「ルーナさん、この建物…神殿か?にはルーナさん以外居ないのか?最初の部屋、案内された部屋、この部屋までそれなり距離はあるが誰にも出会ってないからさ。」
「この神殿には…そうですね。人としては私と後数名います。夜も遅いので皆各部屋にいるかと。人以外のものも居ますが、皆人見知りですので召喚されてすぐの方の前には姿を現さないかと。」
流石に1人ではないかって人以外ってなんだ以外って。
すっげぇ気になるじゃないか。
「人以外?」
「はい。まぁ、その辺は明日にでも分かるかと思いますよ。お話してもよろしいですが、あまり遅くなると…」
確かにハルが起きたら面倒だな。
よしやるか。
「そうだな。わかった明日改めて聞こう。で、どうやって力のコントロールをするんだ?」
「まずはご自身の内側にある力を認識して頂くところからとなります。こちらの水晶を使います。この水晶はご自身の力を半ば強制的に具現化する力があります。もちろん暴走の危険がある為、極わずかな力のみとなっていますのでご安心下さいませ。」
そう言うと新たな水晶を取り出し台座に載せる。
どっから出したその水晶?
それにしても、しれっと暴走とか怖いこと言うよなこの人。
しかし、また水晶か…。
大神官ってのはただの役職で多分役割は水晶に関わるものなんだろうな。…多分。
まぁこの人の役割を聞いた所でだからな。
「わかった。さっきの水晶のように手をかざせば良いのか?」
「はい。かざした後…自分の体内にある力を感じ取れると思います。その後水晶が力を吸収し始めます。それを身体の外に力を出す感覚として感じ取って頂ければ。」
「水晶が力を強制的に吸い出すと言うことか。」
「はい。ですがその水晶が吸い出せるのは極わずかになってますので、先程お伝えした通り暴走の心配は無いかと。」
「わかった。やってみよう。」
と、水晶に手をかざそうとすると、
「よろしいので?」
「ん?何がだ?」
「ユウキ様もハル様も一切私を疑うことをしないので…。先程ハル様はユウキ様が居るからと仰ってましたが、ユウキ様は何故疑いをお持ちにならないのでしょうか?」
「なるほど。もっともだよな。んー。何でって言われると困るんだが、とりあえず現実としてこの異世界に転移してまだ実感はわかないし、実は夢じゃないかとか考えはするんだけども…。昔から起こった事は受け入れるしかないって生きてきたからなぁ。」
だから就職して会社員になっても流れに流されるだけ。対して出世もせずのらりくらり仕事して気づけば30歳を過ぎて彼女もいない。…童帝では無いぞ。
「後は俺もハルと一緒さ。」
「ハル様と一緒?」
「そう。ハルと一緒に居れることぐらいしか、俺には望みもないからな。一緒に居れるならなおのこと受け入れるだけ。それにこっち側に来てからルーナさんからは敵意…のようなものは感じない。」
これものらりくらり社畜をしてきた事で培ってきたものだな。嫌われてる人には必要以上に近寄らない。
敵意を感じたら距離を取る。それが俺の行き方だったからな。
「そもそもルーナさんを疑った所で他に助けてくれる人がいるかもわからない訳だし。今は信じるしか無いってのが本音かな。」
「なるほどですね。お2人はお互いが大切な存在なのですね。」
「ハルはどうだろうな。1人で不安で知ってるのが俺だけだからってのはあるんじゃないか?俺は…まぁそうだな。大切…だな。」
「これはハル様大変ですね…。」
「何か言ったか?」
「いえ!何も…。しかしそうなりますと役割の件は中々辛辣…ですね。」
「そう…だな。元の世界に戻るには2人同時ってのはな。まぁ俺はハルを帰らせてあげたいからそれを目標にするつもりだが。」
「ですが、それは結果として…」
「…それも仕方ないと思ってる。いや思うようにしようとしてるが正しいか。今は考えても仕方ないかなって。ただの現実逃避かもしれないけどな。」
俺がハルにとってのラスボスだとしたら、俺がするべき事は…今は考えたくないってのも本音だな。
「…ユウキ様」
「まぁルーナさんが言った通り違うかもしれない。…違うかもしれないんだよな?」
「はい。上手く私も理解できていないのですが、過去の災いをもたらす方々のものとは違うと感じています。」
「ならその感覚を今は信じるさ。話が長くなったな。始めるか。」
さて考えるのは今度にしてと。。水晶に手をかざして…
んん?何か身体の中がゾワゾワしてくるな。
水晶が輝いたかと思いきや黒く…
「あ。なん…だ、あ、あれ…。ち、ちか、力が…」
急激な脱力感を感じ立ってられなくなる。
身体の奥底から何か感じたことの無い物が湧きだしてくるような。
視界が赤く染っていく。
身体の中が黒く、真っ黒になっていくような感覚。
「ユウキ様っ!!手を!手を離して!力が…ぼ…」
そこで俺の意識は完全に途絶えた。




