75 水の大蛇
「くっ。精霊と戦うことになるなんて!」
「ユウキ殿!精霊に物理は効果が薄い!魔法主体で戦うのじゃ!」
水の大蛇はゆっくりとこちらに近づいてくる。
「魔法なら私!」
ハルがファイヤーアローを放つ。
ボシュンッ!ボシュンッ!
「あれ?」
「ハルちゃん!相手は水じゃ!火の魔法は相性が悪い!風を!」
そりゃそーだよな。
多少の属性不利はハルなら何とかなりそうだけど、
相手は水の精霊。
ハルの火の魔法が強いとはいえ、格が一緒なら属性不利は大きくなる。
「うー。風かぁ。…ウインドダート!」
適正属性でないため力ある言葉が必要なハル。
飛んでいく風の矢がが大蛇に当たる。
「効果が薄いか…。ならこれで!」
俺は適性があるため力ある言葉無しで放てる。
俺の放ったウインドカッターが大蛇を切り裂く!
「どうだ!?」
胴体を切り裂いたに見えたが、直ぐに元に戻ってしまう。
「精霊は魔力そのものじゃ!見た目にダメージはないと思え!こちらの魔法が当たることで向こうの魔力が減っていく!…要は削りあいじゃ!」
マリクさんがそう言いながら、
大蛇の放つ水の刃を相殺してくれる。
「マリクさん!水の精霊相手なら、格的に大精霊の方が上なんじゃないのか?」
「普段ならな!だがコヤツ何かに操られながら魔力を高められておる!それに今のハルちゃんとワシの繋がりはまだ最低限じゃ。今のワシは本体ではない。向こうの攻撃を捌くのが限界じゃ!」
なるほど。召喚ってそういう事なのか。
ってそこを詳しく聞くのは後だな…
「ハル!とにかく打つぞ!魔力はハルは今打ち放題だ!」
「うん!…でも…」
ハルの顔が曇る。
「どうした?」
「あの子悲しい、助けて欲しいって…」
そういえば最初からハルはそう言ってたな。
それに相手は魔物じゃない…精霊だ。
「マリクさん!アクアを助ける方法はないのか?」
「むぅ。操っている方法がわかれば…」
操ってる方法か。そもそも…操ってる奴は…
アイツしかいないか!
「くっ。…ミナトォッ!!居るんだろ!」
大きく息を吸い大声で呼びかける。
まぁバカ正直に反応してくれるとは…
「フフフ…」
あ。いた。
「本当に出てくるとは思わなかったぞ!?」
「ちょうどそろそろ挨拶していこうかと思ってね…」
大蛇の後方の空間からフードの男が現れる。
ミナトだ。
「どうだい。魔改造した精霊は。大精霊を連れて来てるとは思わなかったけど、なかなか苦戦してるね?」
ミナトの言う通りマリクさんが居なければ恐らく大蛇の放つ魔法を防ぐ術が足りないと思う。
「倒し方教えてあげようか?」
「なんだと?」
ミナトの突然の問に答えながらも大蛇に風の刃を放つ。
「ダメダメ。魔法で削ろうとしてもソイツのコアには魔源草を与えてあるからね。もちろん光り輝くね。魔力は無尽蔵だよ」
言われて見ると大蛇の顔の部分にある石が光り輝いている。…あの石は?
「コア…と言うか精霊石だよ。ついでに僕の術で闇に汚染してあるけどね」
「なんということを…。精霊石を闇に染めるとは…」
「マリクさん?」
「精霊石は精霊の魂のようなもの、それを闇に染められれば精霊は…悪霊になる」
「くくく。その通り。流石は大精霊だね。そして救う方法は殺すことだけだよ?」
なんて事を…。
「そして殺すには魔力を削りきるか、コアを破壊する。前者はさっき話した通り不可能。なら…1つしかないよね?」
「コアを…」
「そう。そして君の力ならそれが可能だよ。ユウキ。魔王の因子を持つ…君ならね」
コイツ…。どこまで知っている?
「ユウキは魔王じゃないよっ!!」
ハルがミナトに向かって火の矢を放つ。
「おっと。危ない危ない。フフ。彼はどちらかと言えばこちら側の人間だと言ってるんだよ?」
「何を!…これなら!」
ハルが魔力を高め術を放つ。
ミナトの足元からとてつもない炎の渦が巻き上がる。
あれは…ジュリアさんが使っていフレアストームか!
上級じゃないか!
「これは……ハッ!」
ミナトが全身から魔力を放ち炎の渦を吹き飛ばす。
「なっ!…効かないの?」
「僕は未完成とはいえ魔王の魂を持つからね。この程度なら大したことは無いよ」
火の上級だぞ?それを大したことないとは…。
「さぁ。ユウキ。このままジリ貧でやられるのを待つかい?そろそろ大精霊も時間切れだろう?」
「く。ユウキ殿…。ハルちゃんを連れて逃げるのじゃ。今のままでは勝てん!」
逃げるって…。
マリクさんは本体ではないにしろ、
そしたら街は?街の皆は?
振り向くて門の中で戦いの音が聞こえる。
「…やるしかないのか」
(そうダ。破壊を求めヨ)
アイツの声が聞こえる…。
「その気になったかな?…まだ足りない?じゃあその子を…」
ミナトがハルに手を向ける
「っ!!やめろぉぉ!!」
ハルに手を出す奴は…許さない!
右手から闘気、左手から魔力を剣に流し込む。
「ユウキ殿!ダメじゃ!それは使ってはならん!」
「ユウキ!」
漆黒の剣が完成する。
「…くっ!」
なんだ身体が重い。意識が持ってかれる…
(ククク。そうだ。そのまま闇に身を任せろ)
「…ダメだ…俺は…ハルを…」
自分の意志とは裏腹に闇に染まっていくのがわかる。
見ると剣から俺の手へと漆黒が上がってきている。
…これは。闇が俺を…
(その通りだ。我が声もはっきりと聞こえるであろう?さぁ1つになるのだ)
…1つに…
(全てを破滅へと)
…破滅…
(さぁ…)
俺の意識が落ちる直前に声が聞こえた。
「だめぇーーー!」
ハルが後ろから走ってきて俺の背中に抱きつく。
「ユウキ!それはダメ!何か分かんないけどダメぇぇぇ!!」
ハルの叫びと共にハルの全身から眩い光が放たれる。
その光にその場にいたもの全員が包まれた。




