73 森の入口
2人で北の森を目指して歩く。
道中の魔物はエルバに向かう途中の連中と変わらなかった…が。
「なんか堅い気がするな…」
「そう?私はそんな感じないけどなぁ」
まぁ貴女の火力はずば抜けてますからね。
元々オーバーキルならそりゃ変わりませんよね。
「剣で切るとな…これまで手応えがほとんど無かったんだけど、ちょっと切る時に…なんて言うのかな切ってる感じがするんだよ」
「そーなの?」
刃が通らないとかそういうのではないんだけどな。
でもダンジョンでの件もあるし、違和感には敏感でいないとな。
「まぁ問題ないレベルだとは思うけど油断はしないでおこうな。ハルも何か違和感とか感じたら教えてくれな?」
「うん!わかったよー」
それから程なくして森の入口に着いた。
「ここか。なんて言うか…」
「…うん。ちょっと嫌な感じするね」
事前に聞いていた話では、迷いの森の通り迷いはするが、こんな嫌な感じがするような話は聞いていなかった。
「やっぱり今日は無理に入る必要はないな」
「…うん。でも……」
ハルが気になる素振りを見せる。
「どうした?何か気になるのか?」
「うーん。なんて言うか…放っておいちゃダメな気がするの」
「…ふむ。」
ハルがそんな無理をして冒険するような子じゃないよな。でも何か気になる…と。
救う者の何かが引っかかってるのか?
「ハル。マリクさん召喚してみよう。この状態が普通じゃないかどうかマリクさんならわかるんじゃないか?」
「そっか!うん!……この石で魔力を込めて…マーリークさーん!」
あーそーぼ!って言いそうなテンションだな。
ハルが精霊石に魔力を込めて呼びかけると強い光を放ち…
「呼んだかの?」
マリクさんが現れた。
「もう水の精霊に会えたのかのぅ?早いのぅ?」
「いや、まだなんだ。森まで1度下見に来たんだが、森の雰囲気がちょっと気になってな。マリクさんに聞いてみようと思って」
そんな事で大精霊呼び出すのは失礼だったかな?
「ふむ…。これは…」
マリクさんが森を見て厳しい顔つきになる。
「あまり良くないかもしれんな。ワシを呼んで正解だったかもしれん。2人きりで入らなくて正解じゃ」
おっと。良かったのか。そして語尾が普通になってるということは…結構マジなやつだな…。
「何が良くないことなの?」
ハルがマリクさんに聞く
「恐らくだが、森の中の魔力が通常より高まっておる」
「それって…どういうこと?」
「自然に高まるにはちょっと不自然な魔力量だな。誰かが故意に何かしないとここまでは高まらん」
おい。それって…
「魔力のダンジョンと同じ状態だということか?」
「同じかはわからん。ルーナから聞いた話では魔封印の扉の力で溜められていたのだろう?ここにはそういったものの気配はない」
「だけど高まってる…と。ハルあの時のような嫌な重たい感じはあるか?」
そう。あの時はハルがその異変に気づいていた。
俺はわからなかったが。
「うーん。あの重たい感じはないかなぁ。でも何か悲しい感じはする…」
「ふむ。やはりハルちゃんはいい感性だな。恐らく水の精霊アクアに何かが起きておる。その悲しさはアクアのものだろう」
魔力の不自然な高まり。
水の精霊アクアの悲しみ。
…何が起きてる?
「放って置く訳にはいかないか…」
「ふーむ。ワシとしては今このタイミングで行くのは止めたいがな」
「だけど、あの魔力のダンジョンもあの時どうにかしてなかったら、もっと酷いことになっていた可能性もあっただろ?」
「だが、ここにミナトが来ていて2人を待ち受けてるとしたら?ジュリアもゼノンもいないのだ。2人に連絡を取って万全の状態で行く方が安全じゃろ?」
…それはそう…なんだ。
俺達も強い力は持っている。
…奥の手もある。
けど純粋な戦闘力ではあの二人の方が上だろう。
「ハルはどうしたい?」
「うーん。この悲しそうな感じは助けてあげたい。けどそれでユウキがまた危ない目にあうのはイヤ」
「で、あろう?今ジュリアとゼノンにはワシから連絡を入れておいた。恐らく数日中にエルバへ来るだろう。それからでも遅くは無い…はずじゃ」
2人の言うことは正論だ。
でも…ここにあのスケルトンみたいな魔物がいて、今何もしなかったがために、エルバの街にそれが襲来したら…
「ユウキ殿の心配はわかる。ではワシの魔力でここにゴーレムを設置しよう。ここから魔物が出て街に向かうようなら直ぐにわかる。せっかく召喚してもらったのだしばらくこのままワシも一緒に2人とおるからのぅ」
あ。語尾戻った。
「…わかった。マリクさんがそう言うならそうしよう」
「うむ。2人きりを邪魔するのは心苦しいがのぅ」
そう言ってマリクさんが笑ってみせる。
「んー。2人きりはもちろん1番だけど、みんなと一緒なのも私好きだよ!」
「ホッホッホ。流石はハルちゃんじゃのぅ」
本当にこの子はいい子なんだよな。
しれっと2人きりが1番とかさ。
「まぁあの門番さんにも今日は下見で帰るって宣言したしな。これで俺達に何かあったらまた落ち込んじゃうもんな。とりあえず戻ってこの件を伝えよう」
「うむ。それがいいのぅ」
そうしてマリクさんのゴーレムをその場に残し3人でエルバの街へ戻るのであった。
〜〜〜
3人が立ち去った後…
「ふーん。なかなか慎重だねぇ。まぁあのダンジョンの事があるからか。でもこのゴーレムじゃ反応できないよねえ。」
森の中からフードの男が現れ、ゴーレムの肩を触る。
「これは魔物にしか反応しないもんね。このフードを被ってる時の僕はただの人間だし。…さてもう少し魔力溜めたら街へ行こうか」
森の方を見ながら言う…
「堕ちた精霊アクアよ…」




