65 風の契約
シルフから言われた事でその場の全員が固まった。
「魂が2つ…ある?」
「うん。そのもう1つの魂がきっとこの禍々しい魔力なんだろうなと思うよ」
きっとアイツのことを言ってるんだろうな。
それをわかってるのは俺と…ルーナさんだけか。
「ユウキ?ユウキが2人いるってこと?」
ハルが不思議そうに聞いてくる。
「どうなんだろうな?実は二重人格とか?」
恐らくそういう事なんだろうけど、正直には話せないな。
「それでシルフ。俺達はシルフと契約しに来たんだけど…その禍々しいのがあるとダメか?」
「んー。キミはあくまで今話してるキミが、キミなんだよね?」
「そのつもりだ。と言うより俺の中にもう1つ魂があるって言われてもピンとこないんだよな」
「まぁ話してても悪い人じゃなさそうだしなぁ。そちらの女の子はとても良い魔力してるしね」
ハルを見てシルフが言う。
するとジュリアさんが出てくる。
「シルフよ。この2人はマリクの爺さんも力を貸してくれてるんだ」
「あー。そーなんだね。爺ちゃんが大丈夫だってなってるなら大丈夫かな。いいよ。契約しようか」
マリクさんってそんな影響力あるのか。
魔力の精霊だったか。
「マリクの爺さんは、この辺の精霊の長みたいな存在だからな。爺さん以上になると大精霊か、精霊王ぐらいのもんじゃないか?」
…そんな偉かったのね。
「さぁ。契約しようかー。2人とも手を出してー」
シルフがそう言いながら近づいてくる。
「こうか?」
「これでいいー?」
シルフが俺とハルの手に触れて言う。
「うん。いいよー。じゃ。契約ー!」
シルフの言葉と共に緑色の光が発せられ、
俺とハルを包み込む。
「これは…。」
「なんか気持ちいいね!」
しばらくすると光が収まる。
「はい。これで契約完了だよ」
思ってた以上にアッサリだな。
なんかもっと試練みたいなのあるかと思ってた。
「シルフちゃん!契約したら何ができるようになるの??」
ハルが質問をする。どうでもいいがちゃん付けいいのか?
「契約した事で、ハルは風属性の魔法も制限なく扱えるようになってるはずだよ。ユウキに関しては元々適正があるから、集中をしなくても魔法を発動させられるようになってるはず。具体的に言うと力ある言葉を言わなくても魔法を放てるよ」
「つまりウインドカッターって言わなくても発動させられると。」
「そう。試しにやってごらん?」
言われて俺は岩に向かって手を向ける。
頭の中でウインドカッターを放つイメージだけをしてみると…
魔法が発動した。
「おお。これは便利かも。剣で戦いながら魔法を発動させるのができなくて使ってなかったんだよな。これなら戦闘中も問題なさそうだ」
「ユウキパワーアップだね!」
「あぁ。あ。そーか。そーすると」
俺は1つ思いついた。思い出したかな?
「どうしたの?」
「いや、フライってもっと使いやすくなったかなって」
そう言ってフライを発動させてみる。
俺の周りに風が巻き起こり宙に浮く。
覚えた時はフワフワ浮くだけだったけど…。
ちょっと集中してみる。
するとある程度空中を飛び回れるようになった。
「すごーい!ユウキ空飛んでるよ!!」
ハルの近くに降り立つ。
「戦闘とかには使えなさそうだけどな。飛んでる間は他のことに意識を向ける余裕はないな」
「それでもすごいよ!」
「気に入ってもらえたかな?」
シルフが近づいてくる。
「あぁ。助かる。ありがとうシルフ」
「ちなみにもう1つオマケがあるんだ。……これはハルかな。この石をあげるよ」
「な!シルフ本気か!?」
見守っていたジュリアさんが声をあげる。
なんだ?ハルの受け取った石が何かあるのか?
「うん。ハルは…なんて言うかな。んー。きっと世界のためになるって予感がするんだ。…ハル。この石は風の精霊石だよ。この石に魔力を込めて呼び掛けてくれれば僕が力になろう」
「え?助けてくれるの?」
「うん。そうだよ」
ハルとシルフが話しているところにジュリアさんが近づいてくる。
「ハルよ。これは結構とんでもないことだからな?精霊が自ら精霊石を渡して召喚することを許すのは普通は絶対ありえない。私も火の精霊からもらっていないからな」
おー。なんかすげー事なんだな。
ようはゲームの召喚獣的な?
「まぁ僕は風の魔法しか使えないからね。風の魔法の力が必要な時は召喚してね」
「うん!ありがとうシルフちゃん!よろしくね!」
これは風属性の俺のパワーアップを考えてシルフに会いに来たが、結果ハルの方がパワーアップした感じかな。
「よし。今日は神殿に戻ろうか」
「そうだね!シルフちゃんバイバイ!」
「うん。またねー」
そうして4人は神殿へ戻る。
その道中…
「ハルは天才肌だとは思っていたが、まさかここまでとは。初めて会った、しかも適正属性ではない精霊から精霊石を受け取るとはな」
「そんなに凄いことなの??」
ハルがジュリアさんの声に無邪気に答える。
「あぁ。とてつもなく凄いことだ。もしかしたらハルはこの世界の救世主かもな」
「えへ!私世界を破滅から救う者だからね!」
……おい。




