36 お願い
「依頼?まだ登録も完了していない新米も新米の俺達にか??」
そう。カードも受け取っておらず明日Fランク冒険者としてスタートする事になっている俺達に頼みたいことなんて……。
「あぁ。もちろん受けるか受けないかは2人の自由だし、受けなかったからといってここから出ていけなんて言わない。」
「話を聞くだけになるかもしれないぞ?」
「もちろんだ。頼みたい依頼ってのがな、ダンジョン探索なんだ。」
ダンジョン!あるのかやはり。
正直気になる……が、危険があるならハルを連れてってのはなぁ。
「ダンジョンを踏破してくれとかって訳じゃない。この辺りでは有名なダンジョンだしな。頼みたいのはそのダンジョンである物を持ち帰って欲しいんだ。」
「ある物?」
「あぁ。そのダンジョンにだけ生息している植物なんだが、魔源草って言ってな。その植物が欲しいんだ。そんなにレアな物でもなんだが最近そのダンジョンに行く冒険者が居なくてな。」
「来訪者が最近居なかったからか?」
「ああ。正確にはいたんだがそのダンジョンに行けるやつらが居なかったって感じだな。」
「それはなぜなんだ?」
「お前ら1週間でここまで来てるのが異常なんだよ。大抵の来訪者はこの街に1ヶ月以上かかって身銭もギリギリな奴らがほとんどだ。ちなみに俺もこのタリスまでたどり着くのに3ヶ月かかった。タリスに着いてから腕を上げる頃にはこの街から出ちまうし、そのまま命を落とす者もいる。」
「修行するのにダンジョンに行く奴はいないのか?」
「いるにはいるが命を落とすか大怪我して戻ってくるだな。魔源草を持ち帰れたやつは最近いないんだ。」
ふむ。となるとそれなりに危険か。
「その…魔源草はなんで必要なんだ?」
「あぁ。アレスティア人だけがかかる病で魔力枯渇症ってのがある。俺達来訪者はアレスティア人に比べて魔力が多く、魔力の自然回復も早い。それに対してアレスティア人はそもそも魔力が少なく、自然回復しにくいんだ。そんなアレスティア人が過剰に魔法を使うと魔力枯渇症で倒れちまうんだよ。」
そこでナツキさんがお茶を持ってきてくれる。
「実はウチのお母さんが魔力枯渇症で倒れちゃってるんです。」
「ナツキ!それはまだ話すことじゃない!」
「ごめんなさいお父さん。でも2人には話して良いかなって。」
「ちなみに奥さんはなんでそんなに魔法を使ったんだ?」
「…先月に魔物の大量発生があってな。怪我人が多く出た。ウチの嫁はアレスティア人だが治癒の魔法が使えてな。多くの怪我人を治療したんだ。自分の魔力の限界を超えてな。」
…なるほどな。人々を助ける為…か。
「わかったよ!私とユウキでその魔…何とかを取ってくるよ!」
「おい!ハル!??」
「何??トオルさんの奥さん助けなきゃだよ!……ユウキは断るの?」
「話聞いてただろ?それなりに危険な場所だぞ?依頼は受けるつもりだ。だけど行くのは俺1人だ。」
「なんで??私も一緒に行くよ!」
「だーかーらー。危険だって言ってるじゃないか。」
「だーかーらー!一緒に行くの!」
2人でちょっと口論になっていると…
「ユウキ気持ちはわかる。けどハルも戦えるんだろ?魔法の方が得意と言っていたが…。」
「私ファイヤーアローで20発以上出せるよ!」
「…マジか?実は炎の精霊か?それだけの実力があるならダンジョン自体は問題ないと思うぞ。それに魔源草は魔力感知が出来ないとなかなか見つからなくてな。それが来訪者に頼みたい理由でもある。」
魔力感知。確かにそれはハルの方が俺より間違いなく適してるな。
だけどなぁ…。
「ユウキ!それに私の役割だよ。トオルさんの奥さん助けることもそうかもしれないじゃん!」
(世界を破滅から救う者)か。いや今回の依頼は救うのは世界では無いだろう。でもそうか。ハルがその役割になったのはこういう性格も関係してるのかもしれないか…
まぁその理論だと俺は…いやそれは置いておこう。
「ふぅ。わかったよ。2人でこの依頼受けよう。トオルさん明日ギルドでカードを受け取ってからだけどな。」
「本当か?すまん。会った日にこんな依頼をするのも良くないと思ったんだが、2人の力がずば抜けてそうだったからな。それで報酬なんだが…」
そうか。報酬が発生するのか。
「受けてくれた時点からうちの宿泊費は全て無料にさせてもらう。今後一生な。この先この街を出て何かでこの街に立ち寄った際もな。それと魔源草を持ち帰ってくれたら金貨2枚でどうだ。本来ならもっと支払ってやりたいんだが…。」
「普段そのダンジョンでちゃんと採れていた場合いくらで買えるんだ?」
「銀貨5枚程だ。」
それを宿泊費一緒無料と金貨2枚って出しすぎだろ。それだけ奥さんが大事なんだろうな。
「なら報酬は先の宿代と銀貨5枚でいい。その代わりそのダンジョンに行くための準備で必要な物を揃えて欲しい。自分で調べるのもいいんだが、急いだ方が良さそうだからな。」
「ユウキ!カッコイイ!!」
「お前…本当にいいのか?」
「俺の役割でもあるからな。」
俺は世界を滅ぼすモノ。ハルが嫌な思いするものを全て滅ぼす。…なんてな。
こう言っておけば納得するだろう。
内心ただハルにカッコつけたかっただけなんだけどな。
どうやら上手くいったようだ。
「後可能であれば報酬って訳じゃないんだけどお願いしたいことがあるんだ。」
最後のユウキのお願いとは?
X(@jamjam698564891)始めてみました!気軽に覗いてみてください。
次回更新は5月2日1時を予定しています。




