34 ペガサス亭
ペガサス亭に着いた。
うん。漫画とかでよく見る宿屋だな。
1階部分が食堂兼受付。恐らく2階より上が客室って感じかな。
「着いた!さぁユウキ入ろう!」
ハルに腕を引かれるまま宿に入る。
この子は腕を組んでること気づいているのか?
こっちの世界に来るまで何度俺がチャレンジして、日和って諦めていたのか知らないだろ?
などと一人で葛藤しながら宿へ入る。
「いらっしゃいませー。お二人様ですか?」
受付の女性が迎えてくれる。
この人が来訪者…か?
「2人でーす!」
「お泊まりでよろしいでしょうか?」
休憩あんのかよ…。
あ。まだ腕組っぱなしか…。
「宿泊です。しばらく滞在させて貰いたいんですが、連泊は大丈夫ですか?」
「はい。もちろんです!連泊ですと日にちによってお値段変わります。1泊1部屋銀貨1枚。10連泊ですと9枚になります。」
「あ。」
そこで俺は気づいてしまった。
きっと俺も初めての街で舞い上がってたのだろう。
そしてハルに腕を組まれた事がトドメとなったのだろう。
「金ないじゃん。まだ換金してないじゃん。」
「あ!そう言えばそうだね!」
無一文で泊まろうとするとかアホか。
やっちまったなー1度出るかーと謝ろうとすると…
「違ってたらごめんなさい。もしかして来訪者ですか?」
「…はい。実はそうです。…コレ。」
そう言って収納の腕輪を見せる。
「あ、それはルーナ様の水晶ですね!ちょっと待ってくださいね。…おとーさーん!おとーさーーん!ちょっと来てーー!」
腕輪を見た女性が受付の奥へ声を掛ける。
お父さんか…これはお父さんが来訪者ってことかな?
少しの間を置いて受付奥の恐らく厨房であろう扉から人が出てくる。
「どーしたー?ナツキ?トラブルか?」
「違うよ。お父さんこの2人来訪者だよ。来訪者来たら呼べっていつも言ってくるじゃん」
「おー。来訪者か。久しぶりにだな。2人組か。俺はトオルだ。知ってるかもしれんが俺も来訪者だ。」
事前情報の通りだったな。やはりこの人が来訪者か。
そして娘がいるってことは…こちらの世界に残ることを選択した人ってことか。
「俺はユウキ、こっちはハルです。」
「ユウキにハルだな?よろしく!まぁ立ち話もなんだ奥の店の方に行こうか。」
「あ、いやそれなんだが…」
そこでトオルさんに魔石をまだ換金していない為お金を持っていない事を伝える。
「ハッハッハッ!そうか、そうか。まぁ異世界の初めての街だもんな。仕方ないさ。」
盛大に笑い飛ばしてくれた。
「こちらに泊まらせて頂きたいのですが、どこで換金させてもらえますかね?」
「ん?あぁ換金なら冒険者ギルドだが…ここでもいいぞ?この街だけの話だが基本誰がやってもいいんだ。店を構えてるやつなら換金率も同じだな。まぁあまりにも上物の魔石はギルドでないと厳しいが。白金貨なんて基本は持ってないからな。」
なるほど。チュートリアル後の初めての街って感じだな。
「ではこちらでお願いさせて頂けますか?」
「おう。構わんよ!それと敬語もいらんよ。同じ来訪者だ。元の世界が同じってことは無いだろうけどな。」
「同じことってないのー?」
ここでハルが質問する。確かにそうだな。
「あぁ。基本的には1つの世界から1人って言われてるな。お前らも導きの石だろ?1つしかなくなかったか?」
ん?おや?それはどうゆう事だ?
確かに石は1つだったと思うが…。
「石は1つだったよー。でもユウキと私は一緒にこっちにきたよ?」
「マジか…。てっきり召喚されてこっちで知り合って付き合ってるのかと思ったぞ。恋人と2人で召喚されたヤツは聞いた事無いな。」
おっと。トオルさん勘違いだな。
残念ながら恋人ではないのだよ…残念ながら…。
「トオルさん俺達はそう言う関係じゃないんだ。でも同じ世界から一緒に召喚されたんだよ。なぁハル?」
「…。」
「ハルー?」
「うん。そうだねー。」
???
どうしたこの子?お腹でも痛いのかな?
「ハル大丈夫か?具合悪いのか?」
「んーん。別に大丈夫だよ。」
何かテンション低くね?
最近こんなことばかりなような…
あれ?オレ嫌われちゃう?でもさっきは腕組んで…。
え?なに??なんなの???
「くっくっく。ハル大変そうだな。オジサン理解したよ。」
「そうなのー。」
何かトオルさん笑ってるな。え?なに?俺何かした??
「まぁその話は置いておいて、珍しいのは間違いないな。役割も珍しいのか?あ!いや何なのか答えなくていいぞ。あまり人に言うべきものではないからな。」
「あぁ。2人とも珍しいものだとは思うよ。こちらも聞いていいか?」
「あぁ構わんよ。だがその前に換金を済ませておこうか。魔石を出してくれ。あぁ全部換金しなくてもいいぞ。魔石のままの方がいい事もある。後は…連泊だったか。とりあえずある分で先払い足りない分は後でも構わん。別に利子も取らん。」
めちゃくちゃ良い人じゃないか。
まぁ来訪者だからこそか。
「ありがとう。とりあえず今ならあるのはこれぐらいだ。」
そう言って持ってる魔石をテーブルの上に出す。
神殿周りで集めた分と、タリスに来るまでに俺が倒した分と合わせて出す。
それを見たトオルさんが驚いた表情で…
「お前ら何ヶ月神殿周りに居たんだ?」
「ん?神殿にいたのは1週間ぐらいだぞ?」
「1週間!?召喚されてまだそれだけ?それでここまで来てこの魔石の量?…本当にか?」
「あぁ本当に。」
「マジか。あー。正直に言うな。そもそもここまで来るのに早いやつで1ヶ月。そして持ってる魔石も小さめで50もあれば多い方だ。」
「門の受付も期間はそんなこと言ってたな。」
「あぁ。だからウチは来訪者には緩くしてるんだ。皆苦労するからな。場合によっては仕事も斡旋してる。皆が皆役割果たせるとは限らんし、冒険できる力があるとは限らんからな。」
「なるほど…な。」
「そーか。うーん。そうかぁ。」
そう言うとトオルさんは何か考え込みはじめてしまった。
次回更新は1日10時を予定しています。




