122 まさか
ゼノンとも話終え次の部屋へ。
次はジュリアさんか。
ルーナさんに聞いていた部屋へ向かう。
部屋へ着きノックをする。
「ジュリアさん?ユウキです」
なんでこういう時って敬語になっちゃうんだろうな。
「開いているぞ。入ってくれ」
中からジュリアさんの声が聞こえる。
言われるがままに扉を開けて中に入る。
「待たせてすまないな、ジュリ…ア...さん」
「ふふふ。どうした?」
そこにはいつもの軽鎧を装備したジュリアさんでは無く、体のラインがハッキリとわかる薄いピンクのワンピース姿のジュリアさんがいた。
「あ、いや…いつもと雰囲気が違ったんでちょっと驚いたんだ」
「ふふ。私だっていつもいつも戦闘用の服ではないんだぞ?どうだ?似合ってるか?」
…やべぇ。めっちゃ綺麗だ。
いやジュリアさんが美人なのは初めて会った時からわかっていたが。
私服姿のギャップってやつか。
これは破壊力高いな…。
「正直似合ってる。めっちゃ…似合ってる」
「ははは。なんだその言い方は?ハルがいたら怒られてしまうな?」
まぁ。そうだな。
絶対「むー。」って言ってるな。
「本来なら戦いの前にこんなにリラックスすることもないんだが。ここにおいてはルーナがいるから少しぐらい気を緩ませても問題はないと思ってな」
「なるほど。確かに精霊王の加護の元にいる訳だもんな。ある意味ここが一番安全か」
「そういう事だ」
ジュリアさんが笑顔で答える。
いや普段の凛々しい感じからのこの服装での笑顔はヤバい。
「…それでジュリアさんが俺に話したいことって?」
「何をそんなに急いでるんだ?ゆっくりでいいだろ?ほらユウキ。こっちに来て一緒に座ろう?」
そう言ってジュリアさんが俺の手を取りソファーへ座らせる。
「ジュ、ジュリアさん?」
「ユウキ…どうだ?私は?…ハルもいいが私のことも…どうだ?」
そう言ってジュリアさんが近づいてくる…
「え?え?え?」
「私はユウキが……ユウキのことが………ぷっ。」
ぷ?
「くっ!ハッハッハッ!ダメだこれ以上は笑いが堪えられん!」
「……おい?」
「ハッハッハッ!…慣れないことはするものでも無いな。いやしかしユウキの焦る顔もいいな!」
なんてイタズラをするんだこの人は。
……ちょっとドキドキしちゃったじゃないか。
「変な冗談はやめてくれよ…」
「ふふ。あながち冗談ではないとしたら?これでもエルフの里を救ってくれたことを本気で感謝してるんだ。それこそ嫁いでもいいと思うぐらいには」
「…え。あ。いや…俺にはハルがいるから…」
しどろもどろになってしまう俺。
いやこの美人エルフに言われたら戸惑うだろ!
「あぁ。わかってるさ。二人の間に入ろうなんて思わない。勝てるわけないからな。それにユウキからしたら私はお婆さんだからな」
「いやエルフと人の違いだろ?…良くはわからないけど」
200歳越えには見えないしな。
とゆーかエルフってどのくらいから老けるんだろ?
「ふふ。…しかしハルは本当にいい子だな。真っ直ぐで裏表がなくて、周りを笑顔にする子だ。女神という感じでは無いが…」
「そうだな。本当にいい子だよ。俺にはもったいないと思うぐらいの…な」
ここでジュリアさんが立ち上がり真面目な顔になる。
「ユウキ。ハルを泣かせるようなことをするんじゃないぞ?」
「そう言うなら変な冗談はやめてくれよ」
「ハハハ。アレでユウキがその気になるようなら説教をするつもりだったんだがな」
どんなハニートラップだよ。
大抵の男は引っかかるぞコレ。
「ユウキよ。お前たちには返せていない借りがある。魔力のダンジョンの件、エルフの里の件。ギルド長としても、エルフの長の娘としても」
「気にするなって。両方とも俺達が勝手にやったような事だし、俺達の為でもあるんだ」
「それでもだ。この戦いはもちろんだがこの先二人が困ることがあれば必ず手を貸すと誓おう」
ギルド長でエルフの次期長のジュリアさんが味方になってくれる。
この世界で生きていく上でこれ以上無いコネか。
「正直助かるよ。ありがとう」
「人とエルフの今後にもいい影響がありそうだしな。魔王と女神が一緒にいるんだ。人とエルフなんて些細な事になるだろう」
そう言ってジュリアさんが微笑む。
そりゃそうだな。これ以上無い両極端だ。
「だけど俺は世界を滅ぼす力を持っているんだぞ?」
「そんな事…とは言えないな。…でも私はユウキを信じるよ。いやユウキとハルの二人をか」
俺の言葉にジュリアさんは優しく微笑み答えてくれる。
「皆俺達のことをなんでそんなに信じてくれるんだ?この世界に来てそこまでの時間が経ってるわけでもない」
「何でだろうな。二人を見ていると暖かい気持ちになれるから…かもな。ハルはあの感じでフワフワしてるくせにここぞって時にはしっかりする。ユウキは…結果論だがそれだけのものを抱えておきながら、常に前を向いて進んでいるように見える。そして二人でいる時はこっちが恥ずかしくなるぐらい仲良しだろう?」
改めて考察されると恥ずかしいぞ。
前を見て進んでいる…か。
本当にそうなのかな…。
「大丈夫だ。二人ならきっと上手くいく。私達も力を貸す」
「…ありがとう。ジュリアさん。この戦いが終わってもよろしくな」
「あぁ。さてハルが待ってるだろ?もう行くといい」
そう言ってジュリアさんが扉を開けてくれる。
「じゃあジュリアさんゆっくり休んでくれ」
「ユウキもな」
そして俺が部屋を出て扉を閉める。
「ふぅ。やはり本当の事は言えないものだな。…ちょっと頑張ってみたが…」
ジュリアは部屋の中へ戻りソファーに腰掛ける。
「まさか…私が本気で人を好きになるなんて…な」
そう寂しそうに呟くのだった。




