121 サンキュー
ルーナさんの部屋を出て次へ向かおうとする。
すると後ろから声がかかる。
「ユウキ様!」
「アクアか。どうした?」
先程ルーナさんと話をしている間も居たが特に何も話さないままだった。
ずっと何かを言いたそうにしているのは気づいていたが聞いても特に反応がなかったんだよな。
「…私はユウキ様がどのような選択を選んだとてご一緒する気持ちに嘘はありません」
「ありがとうアクア。でももう世界を滅ぼす側に回るつもりは無いから。だから一緒に滅ぶ必要は無いよ」
アクアは俺の考えを全て知っていた。
最後にラスボスとして倒されるつもりだったことも。
そして最後まで俺に付き合って共に滅びるつもりだった。理から外れた精霊。ルーナさん曰く精霊王の存在に一番近くなっているとか。
「それはそうなのですが……そうではなく、ユウキ様がハル様をお選びになりましたが、それでも私はユウキ様のお供をさせて頂きたいのです」
「アクア...」
自分を振った相手…
振られることになった理由の相手…
それがわかっていても共に居てくれると…。
「アクア。この戦いに力を貸してもらえるのは本当に助かる。でも無理をして欲しくはないよ?」
「本当にユウキ様は優しい方ですね。私はこの気持ち…今の精霊達は知らない気持ち…私はこの気持ちを大事にしたいのです。辛さも含めて…。ですからお二人と共に…」
「俺が言うのもアレだけど、一緒に居て辛くならないのか?」
俺がハルに振られていたとしたら…
一緒に居れるだろうか。
「辛くないとは言えません。でも…それでも一緒に居たいと思います。例え私が一番になれなくても…せめてお傍で仕えさせて欲しいと!」
「わかった。まぁ契約もしてもらってるしな。今後ともよろしくな!ただ1つだけ…」
「なんでしょうか?」
俺の言葉にアクアの表情が一瞬固まる。
「仕えるって言うけどアクアは部下じゃない。だから俺のやる事に力を貸してくれ。……仲間としてな」
「…はい!……でも私は2番目でも大丈夫ですからね?」
笑顔で爆弾をぶち込んでくる。
「ゴホッ!…アクアお前ルーナさんに似てきたか?」
「ふふふ。この世界は何人妻が居てもいいんですよ?」
「……一応覚えておくよ」
まぁ確かに元の世界とはルールも違うか。
ってそんな事言われてもなぁ。
俺にはハルがいるからなぁ。
~~
アクアとも話し終え次の部屋へ改めて向かう。
「ここは…ゼノンだな」
着いたのは修練場。
この世界に来た時ゼノンに闘気の使い方を教わった所だな。
扉を開けて中に入る。
「来たか」
「ゼノン…」
ゼノンは修練場の中央で精神統一していた。
全身から立ち上る闘気。
遠目に見ても分かるほど力強く、それでいて穏やかな流れを感じる。
フィングを手にした結果なのか、凄みが増した気がするな。
「…ふぅ。さてユウキ。俺からお前に言いたいことは…」
闘気を収めたものの、
ゼノンから何かプレッシャーのようなものを感じる。
「なんだ?」
「まず…自身を犠牲にしないこと、抱えていたものを俺達に話してくれたこと、よく決断してくれた」
「あぁ。これまで言えなくてすまなかった」
「まぁ仕方ねーだろ。お前が背負っていたものは俺が考えてたより重いもんだった。なんだよ世界を滅ぼすモノってな」
そう言ってゼノンは少し笑うが次の瞬間には真面目な顔に戻る。
「ユウキ。お前はこの世界を選んだ。俺達と共に生きることを選んだ。ハルと共にな」
「あぁ」
「頼みがあるんだ。…1つ約束してくれ。俺も1つ約束するから」
ゼノンが自身の剣フィングを俺に向けてくる。
「約束…なんだ?」
「必ず…必ずハルを守れ」
「言われるまでも無いさ。当初とは違う道を選んだけどそれだけは最初から何も変わってないものだ」
そう。俺はハルの為に。それだけが願い。
今更だよゼノン。
「…ふ。そうだな。聞くまでも無かったか」
「そうだよ。それでゼノンの約束ってのは?」
「もし、もしもお前が自身の力を制御できない日が来た時…俺はこの命に変えてもお前を止めてみせる。間違ってたら謝るが、まだ不安があるんじゃねーか?」
「…不安はある。この世界に居ていいのかとも考えちゃうよな。世界を滅ぼす可能性はあるのだから…」
「だろ?だから俺が止めると約束してやる。…本来ならミナトがこうなる前に…あの時マナカを失った時にそうするべきだったんだ。そういう意味じゃ俺の為でもあるんだがな」
悔しそうに言う。
ゼノンも後悔があるって事か。
「ミナトの件は同情はするが、ゼノンのせいじゃないだろ?」
「いや、元を正せば俺がこの力を手に入れる為だった…。だから俺には責任があるんだ」
本当に良い奴で責任感も強い奴だよなゼノンは。
そんなゼノンに俺がしてあげられることは…
俺は魔剣ルインをゼノンに向ける。
「ゼノン……俺から言えることは一つだ」
「ユウキ?」
「お前のその後悔…俺も一緒に背負ってやる」
「...!」
以前ゼノンに言われた事だな。
あの時俺はまだ話せなかった。
ゼノンは一緒に背負ってくれると言ってくれたのに。
だから…
「一人で抱え込むな。仲間がいるだろ」
「…てめえが言うか。散々一人で抱え込んでたくせに」
「だからこそだ。俺が一人じゃないって教えてくれたのは皆だ。だからこそ俺も一緒に背負う。いや…背負わせてくれ」
最高の仲間達だから…
「はっ!わかったよ。……いや違うな…ユウキ」
「なんだゼノン?」
ゼノンは最高の笑顔になり……
「サンキューな」




