115 プロポーズ?
ハルと部屋へ戻ってきた。
戻ってくる最中の会話は特に普通で何も無く部屋へ到着。
「しかし、ハルは聖剣の力を完全に引き出せたのかな?凄い光だったよな」
「聖剣セイブがね、全てを救う力を貸してくれるって。私の事を支えてくれるって言ってた」
ルーナさんが女神より力を引き出しているように見えると言ってたな。
「じゃあハルは女神だな。でもこっちの世界に来てからずっとハルは凄かったもんな」
「えへへ。…でもそれはユウキが隣に居てくれたからだよ?そうじゃなきゃ私は不安で押しつぶされてたと思う」
俺のおかげか…。そう言ってくれるのは素直に嬉しいな。けどここまで強くなったハルだ。これ以上俺の支えは無くても大丈夫だろうな。
と思っていたら…
「これからは私がユウキの傍に居てあげるからね?ユウキの事を支えてあげるから。だからこの先も一緒に…ずっと一緒にいよう?」
離れるな…と。
やはり何か勘づいているのかな…。
「ハル…それはもはやプロポーズなんだけど?」
「えっ!あー。んー。……そうだよ!プロポーズだよ!」
俺のツッコミにハルが顔を真っ赤にして答える。
おー。開き直ったな。
「元の世界に戻るまでダメだって言ったじゃないかー」
「むー。プロポーズがダメとは言われてないもん…」
まぁ確かに?好きって言葉はやめよう的な話だったか。しかしゴリゴリ来るな…。
「プロポーズか…。そしたらまた指輪買いに行かないといけないな」
「…ユウキ!…そうだね!そうだよ!またラキアのあのお店行くのもアリだよね!」
ラキアのお店確か…エストだったか。
あのなんか凄い店員さんが居たところだな。
でもそれはつまり…
「元の世界じゃなくてこっちの世界なのか?」
「それね。もうその話はしないって言ったけど私は本当にユウキと一緒ならこっちの世界だっていいんだよ?…あ!何も言わないで。それを知ってて欲しいだけだから」
俺と一緒なら…か。
「わかった。それについては何も言わないよ。俺もその気持ちが無いわけじゃないからな」
「うん。それも何となくわかってる。それでも何かユウキが考えてる事も。でも何も聞かないって決めたの。聞かなくても私のする事は変わらないから…」
ハルが何か決意を固めたような顔をしている。
ハルのする事…?世界を救うこと以外にあるのか?
「こっちの世界に来て色々行ったけど、まだ行ってないところいっぱいあるんだよね?」
「そうだな。前に見た地図だとゾロンって街か。治安良くないって言ってたけど」
「でも私達は魔王と女神だよ?多少の治安の悪さとか関係ないよ!」
確かに。魔王と女神がどうにもならないような事があるのだろうか…。
「そうだな。後は…ゼノンの住んでる竜人族の里にも行ってみたいよな。他にもきっと色々な所があるんだろうな」
「そうだよー!でも1度行ったところも行きたいよね!タリスのペガサス亭も行かなきゃ!トオルさんのご飯食べたい!」
「あー。それな。本当にめちゃくちゃ美味しいんだよな。確かにあの味だけでもこの世界にいる価値はあるよな」
この世界にいる価値か…。
わかってる俺はこの世界の事を気に入ってる。
元の世界でただ惰性で仕事をしていた俺にとってこの世界で過ごすことに何も不満はない。
…大好きなハルも一緒なら尚更…な。
「ナツキちゃんにも会いたいし。もうこっちにも友達いるんだからね?…ナツキちゃんに色々報告しなきゃなぁ」
「またガールズトークか?女の子は好きだよなそういうの」
「へへー。そーだよ!次にナツキちゃんに会う時は良い報告になっちゃうかな?」
ハルが頬を赤く染めながら笑いかけてくる。
あーめっちゃ可愛いな。
…もう今すぐ告白して俺のものにしたい。
しかしさっきから話してる内容は…
「もうこっちの世界にいることを決めたみたいな話だな?」
「だから私はそれでもいいのー。後はユウキ次第なんだから。もちろん一緒に戻れるなら、元の世界だっていいよ?ユウキと一緒ならね?」
やけに一緒を強調するな。
何かセイブと繋がって察したのか…?
「こっちの世界でなら指輪買ったらラキアの塔に行かなきゃだな。…待てよ。元の世界だとしたら俺仕事どうなってるんだろう?無断欠勤数ヶ月か…。アウトだな」
「ユウキ無職だー!って私の大学は…ってそもそも行方不明になってるのかな?」
「時間軸がどうなってるかだよな。…まぁそれは今すぐ考えても仕方ないからな。無職になってたらまた仕事探してからだから指輪はしばらく先かなぁ」
いやそもそもハルの誘拐犯とかになってないか俺?
未成年ではないけども…。
「こっちの世界ならいっぱいお金あるのにー!あの棚の金貨全部だよー!」
そう。以前ジュリアさんがギルドがからの報酬として出してくれた金貨。全然減ってません。
しかも魔石もガンガン貯まってるからな。
正直こっちの世界なら多分働く必要もないぐらい。
「まぁそうだな。それに色んな人への繋がりも出来てるもんな。この神殿を中心に暮らすならエルフも竜人族も精霊もコネがあるもんな」
「そうだねー!みんな良い人ばかりだし、世界を救ったらこの神殿に住まわせてもらうのもありだよね!ルーナさん暇だって寂しがってたし」
精霊王のくせになぁ。いや精霊王だからこそ…か。
「そうだな。その時はルーナさんに相談だな。…さてハルそろそろ寝るだろ?お風呂入らないとな」
「そうだねー。…一緒に入る?」
「馬鹿なこと言ってないで早くしろって。ハル風呂長いんだから」
「はーい!ユウキも早くねー」
そう言ってハルが風呂へ向かう。
部屋に残ったのは俺1人。
わかってる。
俺もこの世界の人々が好きだ。
ハルとこの世界で暮らすことを望んでる気持ちはある。
けど
だけど
だからこそ。
この世界を滅ぼすモノが居てはいけないんだよ。
みんな良い人だ。
俺の力を知ってる精霊王が協力してくれるって言ってる。
女神を超えた力を持つハルも居る。
神器を持てばこの世界で敵がいないであろう、ゼノンとジュリアさんもいる。精霊達もだ。
どうにかなるのかもしれない。
だけどどうにもならなかったら?
俺の力でその大好きな人達を傷つけて…殺してしまったら?
ルーナさんに恐怖から逃げてるだけだと怒られた。
その通りだ。俺は怖い。
傷つけるのが怖い。失うのが怖い。
その力を持っている俺が怖い。
きっとミナトと何も変わらないんだ。
マナカを失ったミナト。
ハルを失ったら俺もきっと同じ選択をする。
ハルを守る。ハルの役割を果たすための障害を滅ぼす。そう自分で決めた。
でもそれも…
ハルを言い訳に逃げてるだけ…なんだろう。
ハル…
俺は弱い情けない奴なんだよ…




