111 口論
「伝えること?」
「はい。まずは…今この世界において災いをもたらす者は…ミナトだけと言えるでしょう。…今…はですが」
なるほど他には居ないと。
実はどこかに大魔王がいるとかそういうことは無いって事だな。
「今はってどういう事だ?…ですか?」
ゼノンがルーナさんに質問する。
言い直してるな。そりゃ知らなかったとは言え精霊王だったもんな。って俺も同じか。
「ふふ。今まで通りでいいですよ?ゼノンさん?…今はと言うのはこの先また時が経てば、そう言った存在が現れるかもしれませんからね」
どうやら言葉遣いは今まで通りでいいようだ。
まぁ威厳を過去に置いてきたって本人が言ってるぐらいだしな。
「そうなると、ハルの役割はミナトを倒せば達成すると考えていいのか?」
「それはわかりません。その判断は…神が…いえ世界が決める事になりますので」
俺の質問にルーナさんが答える。
神…ノルアーか。しかし…
「世界が決めるってのは?」
「私にも全てわかりませんが、神ノルアーからそのように決めたと聞いています」
そうか。流石に精霊王ともなると神様と面識あるのか。
世界が決めるか…。
ミナトだけと見てくれるのか、俺を災いと認識するのか…。
「うーん…」
「どうしました?ハル様?」
「…達成した場合って勝手に元の世界に戻るのかな?」
ハルが何かを悩んでいるようだ。
元の世界へ戻り方?
「いえ、その時は創造神が現れ転移してもらえるはずですね。過去そうでしたので」
「あ!そうなんだ!じゃあその時お願いするしかないのかなぁ」
「ハル?どうしたんだ?お願いって?」
「うん…。私元の世界に戻らなくてもいいんじゃないかなって」
突然のハルの発言。
え?なんで?
戻りたくないってことか?
「ハル様?それはなぜですか?お戻りになられたくないのですか?」
ルーナさんがハルに聞く。
「…いや戻りたくないわけじゃないよー。でも私が戻ったら…ルーナさんまた女神様と離れちゃうから…」
「ハル様…。ありがとうございます。でもそれは違いますよ?先程もお伝えした通り、ハル様と女神ルーナは別の存在です」
ルーナさんがハルを諭すように話す。
しかし、まさかハルから帰れなくても良いって発言が出るとは…。
「…そう?んーーー。確かに私は私…だね。変なこと言ってごめんなさい」
「いえ。ハル様のそのお気持ちは嬉しいですよ?ですがハル様ご自身の事を考えてくださいね?」
ハルの謝罪にルーナさんが答える。
「私の気持ち…私は…ユウキと一緒に居たい。それが元の世界でもこの世界でもどちらでもいいから…。ユウキのいる世界に私は居たい」
「ふふ。それがハル様のお気持ちですね?…と言うことですよ?ユウキ様?」
…全て知っているんだよなこの人は。
俺と一緒に居たい…か。
それは俺も…同じだ。
「…俺もハルと一緒に居たいさ。でもそれは元の世界に戻っての話だ。それは譲れない」
「この世界のことユウキは嫌いなの?」
「そんな事はないよ。この世界で知り合った人達は皆いい人だ。俺自身は元の世界に未練は無い。でもハルは違う。いや違うってのも違うんだろうけど…」
俺と違ってハルは元の世界に残してるものが多過ぎる。
これで俺がハルと一緒に居ることだけを選んでこの世界に残ったら俺はハルの親に顔向けできない。
「むー。違う事はないのになぁ。ユウキ変な所頑固だよね?…わかったこの話はこれ以上しない。だけど…だけど私がそう思ってることは忘れないでね?」
「…わかった。心に留めておくよ」
頑固…か。そうかもな。ハルを帰らせることに拘るのは俺のエゴなのかも…いやそうなんだろう。
ハルと一緒にこの世界で暮らす…。それも良いと思ってる俺もいる…。
でも…。だけど…。
「さて。神器を使いこなせるようになる必要がありますね。御三方少し修練しましょうか。マリク皆様を案内して差し上げて下さい」
「かしこまりました。ではハルちゃん、ゼノン、ジュリア行こうかのぅ」
ルーナさんの指示でマリクさんが移動する。
その後を3人が続いていくが…
「ユウキは来ないの??」
「ユウキ様と少しお話する事がありまして…。終わり次第私と向かいますね」
ルーナさんが答える。
…話か。まぁ何となく予想はつくな。
「…わかったよー。ルーナさん、ユウキをお願いします」
「はい。承りました!」
…お願いしますって何をするつもりだよ?
マリクさんに連れられて3名が部屋から出ていく。
この場に残ったのは、
ルーナさんと4精霊と俺。
ん?あれ?これ俺封印されるヤツ?
「ユウキ様大丈夫ですよ。精霊王様は別に封印するつもり無いです。というかそれをしようとするなら私は何をするかわかりませんよ?」
「あらあら。アクアは本当に理から外れたのですね?私に1番近い存在の精霊はアクアなのかもしれませんね?」
アクアが少し物騒な事を言い、それに対して余裕のルーナさん。
「で、俺に話ってのは何なんだ?4精霊含めての話なのか?」
「…言うまでも無いと思いますが、このままこの世界でハル様と暮らすことを選びませんか?」
やはりそう来るか。
「世界を滅ぼすモノを受け入れると?それでこの世界が滅びることがあったとしたら、ルーナさんは女神になんて言うんだ?」
「…そうならないように致します。それにユウキ様だってハル様がいる世界を滅ぼすようなことはしないでしょう?」
俺の言葉にルーナさんが反論する。
お互い愛する者を引き合いに出すことになるか…。
「…それはハルがいる限りだ。もし…もしもハルに何かがあったら…約束はできないぞ」
「…なるほど。それはそうですね…。でもユウキ様はハル様を1人にする事を良しとするのですか?残される者の気持ちはどうなりますか?自身が倒される、消滅するから関係ないと言いますか?」
ルーナさんが珍しく厳しい口調になる。
いつもの軽い感じでもなく、精霊王としての威厳がある訳でもない。
初めて見るルーナさんだ。
「…残される者の気持ちか。ルーナさんが言いたいことはわかる。いやわかってるつもりだ。俺だってハルを悲しませるような、辛い思いをさせるようなことがしたい訳じゃない」
「それなら!」
「ダメだ!ハルが例えそれを望んでいようとも…俺の役割は…世界を滅ぼすモノなんだよ。俺はハルを滅ぼすようなことをしたくない…その可能性があるなら一緒に居続ける事はできない」
「ユウキ様のその力は私が責任を持って封じます!今だって封じていられてるではないですか?」
「それは俺にその気が無いからだ。さっきも言ったがもしハルに何かあれば…いや、何も無くてもハルが俺から離れるとなったら俺は…俺は…自信がない」
「それは…ユウキ様が恐れているだけではないですかっ!!恐怖から逃げようとしているだけでしょう!!」
ルーナさんが俺を怒鳴りつける。
あぁ。そうか…そうだ。
俺は怖いんだ…。
ハルを失うことが。
だから失ってしまうぐらいなら俺が倒された方がいいと…。
俺は……




