108 精霊王
「軽いんだよなぁ…」
「そうですか?でも重たくやるのも私らしく無いので…」
…まぁこの人は本当の初めましての時以来そんな感じだったけどさ。
「良くぞここまで…とか。我が精霊を束ねる者…とか。なんて言うかさぁ。1000年以上名乗ってないんだろ?あれ?でも前任の大神官の話とかあの辺はどうなるんだ?」
「それはですねー」
ルーナさんの話はこうだった。
精霊王として存在するのはあくまで大精霊と4精霊が揃って連れて来た者に対してだけ。
それを集めるということはつまり、魔王と対峙することになっているということ。
大神官として存在してる間はあくまで人として。
力が尽きると次の人に転生し大神官として存在し続ける。
「つまり…精霊王ってのは人の身体を持った精霊ってことか?」
「そうですねぇ。精霊王という役割を持つものが近いですかね?」
なるほど。精霊を束ねるのは精霊では無いってことか。
「んー。ユウキ?つまりルーナさんは…凄い人?」
偉い人って言うか凄い人って言うか…
その感想はどうなんだ?
「そうですよー!ハル様!私こう見えて創造神の次に偉い人なんです!」
フンス!と鼻息荒く胸を張るルーナさん…いや精霊王か。
「なんか…なんて言うか…これでいいのか?マリクさん?」
「精霊王は昔からこうだからのぅ。それでもこの世界が出来てから1人で世界を守り続けてきてるお方じゃ。」
一人で…それこそ何千年、何万年か。
「私が精霊王として動かなくては行けない時はつまりこの世界の危機なんです。ハル様がこの世界に来た時…その時が来たかと思ってましたけどね」
世界を破滅から救う者が現れたってことは世界が破滅する可能性があるってことか…。
しかし、それでいくと…
何故俺をそのまま自由にした?
「ユウキ様。あの日お伝えした通りです」
俺の考えを読んだのかルーナさんが応える。
あの日…俺の役割がわかった時。
~~
「ユウキ様のハル様に対しての愛と、役割の可能性を信じてみようかと。
~~
「私は創造神ではありません。全てを視ることが出来るわけではありませんし、間違えることもあります。それでも…」
俺のことを信じてくれると言うことか…。
「何の話なの?」
「ユウキ様がハル様の事を大切に想っているという話ですよ」
「え。そーなの?…えへへ」
まぁ間違ってないし。そうなんだけどな。
…なんかすごい嬉しそうだし何も言わないでおこう。
「ルーナさんが精霊王だってことは理解したんだが、分からないこともあるんだよな」
「何でしょう?お答えできることはお答えしますよ?」
「まず、この神殿に神器がある事をゼノンとジュリアさんは知っていた。だけどルーナさんが精霊王ってことは知らなかったんだよな?」
「あぁ。その通りだ」
「私達は知らなかったな」
俺の疑問にゼノンとルーナさんが頷く。
「俺達は神器を手に入れるために神殿に戻ってきた訳だ。ルーナさんは神器の前に話さなきゃならないことがあるってなったけど、神器だけなら精霊王である事を明かす必要は無かったんじゃないのか?」
「そうですね。仰る通りです。私が明かしたのは神器の為では無く、ハル様の為です」
ルーナさんが答えてくれる。
しかし、ハルの為?
「私?何かあるの?」
「はい。ハル様の女神の光です。それを説明するのに精霊王と明かしました」
女神の光か…。
「どういうことだ?」
「まずは少し昔の話を…。精霊がエルフから成るものと言うのはもう知ってますね?」
アクアが教えてくれたことか。
「あぁ。知ってよかったのかはわからんが」
「では…最初のエルフは精霊から産まれたとしたら?」
どういう意味だ?
精霊はエルフから成る。けどエルフは精霊から産まれた?
「正確にはある特別な力を持った人と原初の精霊からエルフが産まれました。そして、そのエルフ達が成ったものが今の精霊達という事です」
「人と精霊の子…?」
「はい。まぁその原初の精霊って他でもない私なんですけどね」
またサラッとこの人は…
「じゃあその特別な力を持った人って言うのは?」
「それが女神の力を持つ…つまり女神と呼ばれる存在ですね」
「え?ルーナさん女性でしょ?女神様って言うぐらいだから女性じゃないの?」
ハルが疑問を口にする。
まぁそうだよな。そうだけど…
「今は女性ですが、私は転生するので…。性別はその都度変えることもできますので…」
当時は男だったと…。まぁそれはいいか。
「話が見えてこないんだけども…それでハルの力は?」
「はい。エルフには魔力が強く受け継がれました。ですので長い年月はかかりますが最終的に精霊に成る。そして女神の力はエルフには受け継がれなかった」
「人に受け継がられたと?しかし何故?」
ここでルーナさんが少し寂しそうな表情になる。
「女神が人を愛おしく思ったからですね…。女神の力は浄化や癒しの力です。人はエルフや、竜人族のような亜人と違い力を持たなかった。それを哀れに思った女神は自身の力を人に受け継ぐようにしたのです」
ルーナさんが目を瞑り少し沈黙した後…
「己の全てを人に与えたのです。…文字通り全てを」




