106 膝枕
船室に戻るとハルがジュリアさんと話をしていた。
「あ!ユウキ!」
「ハル。ジュリアさんと何の話を?」
「あぁ。無属性魔法についてな。ハルはマリクさんと契約しただろ?あの女神の光?も同じような力だと思うんだ。この先ミナトと戦うには私の魔法では足りないと思ってな。無属性魔法の錬度を上げようと思ってな」
「私が色々教えてました!」
ハルが胸を張ってドヤる。
ハルが…ジュリアさんに…教える…だと?
「それは…何か掴めたのか?」
「それがな…」
ハァと。ジュリアさんが溜息をつく。
「ハルは…感覚派というか…天才肌と言うか…な」
どうやら何も掴めなかったようだな。
まぁ予想通りだけども。
ハルが何かを教えるとか…ねぇ?
「むー。なんか失礼なこと考えてるね?無属性も女神の力も身体の中にある力を…こう流して…手から…えいっ!て放つんだよ?」
んー。感覚派。それが理解できれば誰でも使えるんだよなきっと。
しかし無属性魔法か…。
「ジュリアさんもマリクさんに契約してもらえばいいんじゃないか?」
「んー。私は精霊石を貰ったことが無いからな…。大精霊の条件を満たして無いだろう…」
そうか。マリクさんが大精霊として応えてくれるのは…精霊石を手にした者のみか。
でもそれも今更じゃね?と思うのはダメだろうか?
「んー。私からマリクさんにお願いしたみようか?」
と、ハルが提案する。
「それは…どうなんだ?アリなのか?」
大精霊と契約し、精霊石までもらってるハル。
ハルからお願いされたとして…どうなんだ?
「まぁ無しじゃが、お主らであればアリかもしれんのぅ」
「うぉっ!びっくりした!」
突然俺の後ろからマリクさんの声がする。
…めっちゃビビったぞ。
「ホッホッホ。ユウキ殿を驚かせるのは何か勝った気になるのぅ」
「あ!それわかる気がする!」
「確かにな」
マリクさんの言葉にハル、ジュリアさんが頷く。
…なんだよそれ。
別に俺驚かないわけでも無いぞ?
「で、俺達であればアリってのは?」
「ふむ。本来はその流れは無しではある。じゃがこの先の事を考えると教えるべきと考える」
マリクさんが語尾が普通だ…
ってことは真面目な話か。
「今のままミナトと…魔王と戦いになれば、ゼノンとジュリアはなかなか厳しいだろうな」
「私も正直足手まといになると思っているよ」
マリクさんの言葉にジュリアさんが続く。
「そんな事はないだろ?ジュリアさんの魔力は強いし…」
「いや実際悪霊にも私は何も出来なかったからな。ゼノンはこの先神殿に戻れば話は違うが…」
「ゼノン?神殿に何かあるのか?」
「まぁそれは戻ればわかるじゃろ。それよりジュリアじゃ。本来は無しじゃがジュリアは自力で魔力を放つところまで到達しておる。正直そこまで来れる者は今まで居なかった訳じゃ」
「ジュリアさん凄いんだね!」
「流石はSSランクで、ギルド長で、エルフを治める一族…ってジュリアさんめちゃくちゃエリートだよな」
「…やめてくれ。そんな大したものじゃない」
あ、耳まで赤くなってら。
照れてるジュリアさん…アリなんだよなぁ。
「むー?ユウキ?」
「…コホン。つまりジュリアさんは契約するに値すると?」
横でハルがむくれ始めたので慌てて話を戻す。
ヤキモチ…いやそれはそれで嬉しいんだけどな。
「うむ。ジュリアならワシの力を悪用する事もないじゃろ。ほれ。ジュリアよ。こちらへ」
マリクさんに呼ばれジュリアさんが近づき、差し出された手に手を合わせる。
合わせた手から光が発せられ…
「これでジュリアもワシと契約じゃ。無属性魔法について練度が上がっているはずじゃよ」
「…ありがたい。これで私も足手まといにならずにすむ」
ジュリアさんが俺とハルの方へ向き直る。
「ユウキ、ハル。ミナトとの戦いにおいてどうしても2人に頼ってしまう部分が大きいと思う。それでも2人だけに押し付けるつもりはない。一緒に戦わせてくれ」
「もちろんだよ。さっきのゼノンと言いジュリアさんと言いどうしたんだ?俺は2人とも頼りにしてるぞ?なぁ?ハル」
「うん!この世界で出会った人達皆そうだよ!」
「フフフ。ありがとう。なんだろうな。2人に出会ってから私の人生の中で最も濃い期間になったからかな。ミナトとの戦いが何か大きな転換になりそうな気がしてるんだ」
皆ミナトがラスボスだと思ってるんだろうな。
表のボスはミナトで間違いなさそうだけども。
「ミナト以外に…滅びをもたらすものはいないのか?なんて言うか…魔竜とか邪神とかそういう存在は?」
「はるか昔は居たのかもしれないな。伝承とかはある。だけど最後にそういった世界の危機があったのは前回の魔王ぐらいだろう。…伝承に残らないようなものはあったかもしれないが…」
ふむ。そうなるとやはりミナトを倒して終わるか、俺かってところだな。
「この後神殿で神器を手にすることができたらその後はどうする?ミナトが襲ってくるのを待つのか?」
それだといつ来るかわからない状態で生活しなきゃいけないんだよなぁ。
それは精神衛生上良くない。
「それについてじゃが…1つアテがある。まずは神器からじゃ」
「わかった。神殿近くの船着場には…明日ぐらいにはつくんだったか。とりあえずそれまでは少しゆっくり過ごそうか」
そう言って皆それぞれの船室へ戻っていく。
もちろん俺はハルと同じ部屋だ。
「ふぁぁ。眠くなっちゃった…」
部屋に戻るとハルがアクビをしながらベッドに転がる。
「少し寝てもいいぞ。俺も部屋にちゃんといるから」
「んー。じゃあユウキもこっち来てー」
呼ばれるがままにベッドへ近づく。
あーこれはあれだな。
「へへへー。わかってるじゃん!…ユウキの膝枕ー!」
ですよね。
まぁいいか。
「ハル。足が痺れない程度で起きてくれな?」
「はーい!おやすみユウキ…」
「あぁおやすみハル」
そのまま数分で寝息を立て始める。
ミナトを倒したらこの旅も終わるんだろう。
後少しだけになるのかな…。
ハルの寝顔を眺めていると覚悟が揺らぐ…。
…俺は。
…俺の選択は…正しいんだろうか。




