102 手
翌朝俺達は魔王の遺物を探しに北の森へ来た。
「しかしそう都合よく見つかるか?ユウキ何か感じたりしないのか?」
ゼノンが先頭を歩きながら問いかけてくる。
「うーん。そうだなぁ。この森に来てから1週間とか経つけどこれまでも特に無かったからなぁ」
この森に来るのは初じゃないからな。何かを感じ取れるのであれば既に感じているだろう。
「んー。その世界樹が生えてた場所ってわからないのかな?そこに行けば何かある…とか?」
ハルが提案してくる。
確かにそれは可能性ありそうだけど…
「場所がわからないな。エルフにすら伝わってないんだろう?」
「あぁ。長にも聞いてきたが分からないとの事だ。すまない」
俺の言葉にジュリアさんが申し訳なさそうに答える。
「いや、ジュリアさん達は悪くないよ。でも、そうすると…アクアは知ってるか?」
「…」
反応がない。
あれ?どうした?
「アクア?」
「…っ!はっ!はい!何でしょうか?」
「なんか心ここに在らずって感じだな?大丈夫か?」
「すみません…ちょっと考え事を…。それでなんでしたっけ?」
アクアが考え事…?
後で念話で確認しておくか。
「この森に昔あった世界樹の場所知ってるか?って」
「あ、あぁそういうことですね。正確な場所は分かりませんが…恐らくここから西側に進んだ方ではないかと…。この森の精霊の幼体達が向こうへは近づこうとしないので…」
精霊の幼体?
しかもそれが近づかない?
どういう意味だ?
「ふーむ。もう突っ込むのも疲れたのぅ。ここだけの話にしてくれよ?精霊には幼体と言われる意志のない魔力だけの状態の者がいるのじゃよ。古代のエルフ達が精霊になる前の存在じゃの。そしてその幼体達は酷く魔族やそれに連なるものを嫌う」
マリクさんがヤレヤレと言った感じで答えてくれる。
「つまりあっちの方にその幼体達が嫌う何かがある…いるってことか?」
「その通りじゃ。精霊の幼体は魔族やそこから発生した悪霊の言わばエサみたいなものじゃからのぅ」
「つまり…ジュリアさん達のご先祖さまってこと?」
ハルが質問を投げかける。
「…まぁそう言っても間違いではないかのぅ」
「エルフでもそんなことは知らない話だな。本当に2人と出会ってから驚くことばかりだ。この200年間よりここ数週間の方が濃い感じがするぞ」
「同じくだ。俺は、正確にはミナト達と別れてからだけどな」
ジュリアさんとゼノンが続けて言う。
そんな事言われてもなぁ。
まぁ世界を救うハルと滅ぼす俺が揃ってるんだからそれ以上に濃い旅なんてなかなかないだろうけども。
「よし。じゃああっちの方へ進んでみよう。もしそうなら悪霊と遭遇する可能性も高いかもしれない。気をつけて進もう」
アクアに示された方角へ進んでいく。
〜〜
1時間ほど進んだ頃…
「やはり何かあるのかなぁ。悪霊の数多くなってきたよね」
ハルが女神の光で悪霊を浄化しながら声をかけてくる。
「そうだな。これで…はっ!今日だけで…ほっ!…20体か。…それ!21体だな」
俺も悪霊を黒い刃で切り捨てながら答える。
んー。この力だいぶ慣れたな。というより剣に闘気を纏わせると自動的にこうなるんだよな…。
…リクに今度聞いてみるか。
「お前らさぁ…」
ゼノンがジト目になっている
「…よし。近くにはもう悪霊は居ないみたいだな。ってどうしたゼノン?」
「これ俺達いるか?」
確かにほとんど悪霊は俺とハルで倒してるな。
「まぁ…俺達の攻撃が効果あるからなぁ。でも通常の魔物相手だとやっぱり2人の方が強いよ」
この森悪霊が出るが普通の魔物も出る。
その時はやはりこの2人の方が圧倒的に強い。
「それでもお前らだって普通に戦えてるじゃねーか。まぁ良いんだけどな。ちょっと前には闘気の使い方とか教えてたはずなんだけどなぁ」
「ふふふん!私は世界を救う者だしユウキは魔王だよ!その辺の一般人と一緒にしないでね?」
ハルが謎に威張っている。
間違ってないんだけどなんか違くないか?
「そうだな。お前らは普通じゃないもんな。そんでもってバカップルだもんな?」
「バカは余計だよー!」
ハルがゼノンの言葉に反応する。
そんなにバカップルかなぁ?
「…カップルは否定しないのな」
「えへへー」
「照れるんかい…」
何の会話なんだか…。
さて、そろそろアクアが言っていた地点に着きそうなんだよな。
「アクア。どうだ?この辺か?」
「はい…。あの木の裏側辺りだと思います」
アクアが示す方へ近づいていく。
「ユウキ…ちょっと重い感じするかも…」
ハルの魔力感知にも引っかかったようだな。
しかし重いって感じる時は…
「ミナトの時と同じか?」
「うーん。ちょっと違う感じがする…。なんて言うかもっと薄くて重いと言うか…」
「そこまで危険な感じでも無さそうかな?とりあえず悪霊は出てきそうな気がするから注意しよう」
そこでハルが近づいてきて手を握って来る。
「ハル?どうした手を繋いでたら…戦えないぞ?」
「…うん。そうなんだけどちょっと怖くて…。ユウキの言う通り危険な感じはそんなにしないんだけど…」
何か不安を感じてるのか…。
「まぁどーせ多少の悪霊が出てきた所でお前らの敵じゃねーんだ。イチャつきながら行くぐらいでいいんじゃねーか?」
ゼノンが笑いながら近づいて来る。
「そうだな。悪霊以外の的なら私達でどうにでもなる。ユウキはハルを守ってればいいさ」
ジュリアさんも続く。
まぁそれもそうか。
ハルが不安に感じてるなら…手を繋いでそれが和らぐなら。
「わかったよ。ハル。離れるなよ?」
「…うん!ずっと近くにいるよ!ユウキの手暖かいね!元気出てきたかも!」
満面の笑みでハルが答える。
いやずっと近くにって…。
そういう意味では無かったのだが…
「そうか?ハルの手は…小さいな。握りやすいよ」
「えへへーそう?ユウキならいつでもいいからね!」
いや…いつでもって…。
…いいのか。まぁ腕組んで歩いたり一緒に寝てるから今更か。
「イチャつきながらと言ったけどガチでイチャつくんだなお前ら…」
ゼノンの呆れてる声が聞こえる。
いや…だってなぁ。
「…行くぞ」
そうして全員で進む。
示された木の裏側へ行くと…
そこには悪霊が10体ほどいた。
「気をつけろ!とりあえず殲滅するぞ!」
流石に手を離し剣を抜く。
次の瞬間…
ハルの放った光が悪霊を貫いた。
…その場にいた全ての悪霊を。




