101 月夜
〜ハルサイド〜
翌日北の森へ向かうことを決めた夜。
ユウキと一緒にベッドで寝てたけど寝つけなかった私は散歩に出た。
最近ユウキがふとした時に難しい顔をしてる。
アクアちゃんと念話で話すことも増えた。
そしてユウキの中にはリクって存在がいることも知った。
私はユウキのことどこまで知ってるんだろうな…。
村の中を歩いていると…
「ハル様?こんな遅くにどうしました?」
「あ、アクアちゃん!んーなんか眠れなくて…。少し散歩しようかなって」
アクアちゃん…
ユウキの事を慕っている精霊。
私のライバル。
でも嫌いじゃない。いい子なんだよね。
「ユウキ様と一緒に寝なくていいのですか?私が行っちゃいますよ?」
「それはダメー!」
「ふふふ。冗談です。ユウキ様と一緒に寝るのはハル様の特権ですからね。…正直羨ましいですよ?」
アクアちゃんが少し寂しそうな顔をしてる。
「羨ましい?私だって羨ましいよ?ヤキモチ妬いてる」
「私にですか!?なぜ?」
「アクアちゃんは念話でユウキと話せるでしょ?それに私が知らない事も知ってる。…ユウキが私に話さないことは何か意味があるんだとは思うけど…」
うん。きっとそう。ユウキは優しい。
私の事を大事にしてくれてるのは感じる。
でもそれは私が隣に立ててないってことなのかな。
「…ハル様。仰る通りハル様の知らないことを私は知っています。お話できないことは申し訳ないと思います」
「ううん。アクアちゃんは悪くないよ。ユウキも悪いわけじゃない…と思う。私がまだ子供だから話してもらえないんだよね」
「それは違います!」
私の言葉にアクアちゃんの声が強くなる。
「えっ!?アクアちゃん?」
「すみません…。でも違うんです。ユウキ様は…ユウキ様の心の中はハル様の事しか考えていません…。それこそ私が入り込む余地などないぐらい」
アクアちゃんが悲しそうな顔をしてる。
「あの方はハル様の為に…元の世界に戻すこと。それがハル様の幸せだと。そのためなら何でもするつもりです」
「私の幸せのため…」
「はい。…詳しい事は言えません。ですがハル様にお願いしたい事があります」
アクアちゃんが真剣な眼差しで私を見る。
お願い?なんだろう?
「ユウキ様を信じてあげてください。そしてハル様が一緒にいることが何よりも1番幸せだとあの方に思わせてください」
「どういう意味?私はユウキのこと誰よりも信じてるよ?それに幸せに思わせるって…」
「…すみません。これ以上は話してはいけないことも話してしまいそうで…。でもきっとそれがお二人の為になると…思っています」
アクアちゃんが泣きそうな顔になってお願いしてくる。
私と一緒にいることが1番幸せだと思わせる…。それが私たちのためになる…。
それってつまり…。
「…うん。わかったよアクアちゃん。これ以上は何も聞かない。ありがとうね」
「いえ…きっとユウキ様がここにいたら余計な事を言うなと怒られてしまいますね」
「アクアちゃん…それは無いよ。ユウキは優しいから。アクアちゃんはユウキの事を思って言ってくれたんでしょ?そういう気持ちを怒るような人じゃないよ」
そう。ユウキは優しいんだ。
自分の事より他の人の事を考える。
悪霊の件だってエルフの里を見捨てられないから今もどうにかしようとしてる。
その為に自分の中の…リクに話をしに行く…ぐらい…。
あ…。そっか。そうだよ。
ユウキは自分のリスクなんか他の人のためなら何とも思わないんだ…
だから…つまり…
私の幸せの為になら何を犠牲にしてもいいって思ってる。
それこそ…
ユウキ自身さえも…。
「アクアちゃん…。わかった。私はユウキから絶対離れない。ユウキが幸せにならないと私も幸せになれないんだってわからせる!」
「ハル様…」
「アクアちゃんから何か聞いたなんて言わないから大丈夫!さてちょっとスッキリしたし戻るね。ユウキが目を覚まして私居なかったら心配させちゃうから」
「はい。…ハル様…よろしくお願い致します」
「うん!また明日ね!」
そう言い私はユウキの元へ向かう。
はっきりとアクアちゃんは言ってくれなかったけど最後のあのお願いしますは…そういう事なんだと思う。
私のモヤモヤはもう無い。
ユウキが私に全てを話してくれないのは、
きっと自分を犠牲にするつもりだからだ。
私を帰すって言い方するのは、
自分が一緒に帰れないって決めてるからだ。
私はユウキと共にいるんだ。
ユウキの事も救ってみせるんだ。
それにはどうすればいいのか…わかんないけど…
でも…でも!私はユウキが居なきゃダメなんだ!
うん。頑張ろう!
〜〜〜
村の片隅でアクアが1人佇んでいる。
「私がハル様に話したこと、正しかったのでしょうか…。ユウキ様はもう覚悟を決めていますよね…」
村の中にある泉の方へ進んでいく。
「私は…どうするべきなのでしょうか…。この気持ち…どうするべきなのでしょう…」
水面の上まで進んで行く。
「人を好きになるというのは…こんなに苦しいものなのですね。それでもあの二人が笑ってるところを見るのは嬉しく感じる…」
水中に身体を沈めていく
「二人がが幸せになるならそれでも…いい…。あの方が修羅の道へ進むのなら私は共に進もう…。例えこの世界を全て敵に回したとしても…」
アクアの姿は水に溶けていくのだった。




