99 魔王
ジュリアさんの案内でエルフの資料館に来た。
神殿のように膨大な数の資料がある。当然のように管理してる精霊がいた。
「さてどこから手をつけるか…」
「悪霊についてだよねー。どこから出てきてるとかわかんないのかなー?」
発生源か…。
そもそも魔族が成る存在なんだよな。
「魔族が悪霊に成る条件から調べるか」
「私達は別の方向から調べよう。ゼノン付き合ってくれ」
「おう!」
精霊にお願いしてそれぞれ資料を手に取る。
「ユウキーなんて書いてあるのー?」
この世界の文字が読めないハルが聞いてくる。
そういえばなんで俺は読めるのかもまだわかんないんだよな。
「えっとな…。魔族が悪霊に成るには…」
資料に書いてあったのは…
深い憎しみを持った魔族が命を落とすとその残留思念が魔力と絡み合い悪霊となる。
命。落としてすぐに成る…ということはなく数年…下手すれば数百年後に成る事もある。
時が経てば経つほど生前の自我はなく、ただ生きるものを殺す事だけの行動になることが多い。
「って感じだな。んー。これだとだからどうする?って話だな」
「そうだねー。でもなんであの森に悪霊多いのかな?エルフもわざわざそんな所に住まなくても…」
確かに。わざわざ天敵が現れる場所の近くに住む必要も無い…か。
「それは私が説明しよう。あの北の森に昔世界樹の成木があったんだ。そしてエルフの森でもあった。そこへ魔族が攻め込んできてな。世界樹はその時に1度失われた。その後魔王を当時の英雄達が倒した訳だがあの森が戦場になった事で悪霊が発生しやすい森になったと言われている。もうはるか昔の話だがな」
「今この森にいるのは?」
「ユウキ達も見たように新しい世界樹があるからな。エルフは世界樹の元で暮らす種族なんだ」
なるほどな。天敵は多く発生するが世界樹の元は離れられないと…。
「そもそも魔族はなぜ北の森へ攻めてきたんだ?世界樹が目的か?」
「…それはわからないな。何か理由があったのか。世界樹は負の力を吸って育つ。魔族にとっては近づくだけでも力を奪われるはずなのだが…」
ふむ。わざわざ自分達にとって不利になる場所へ…か。当時の魔王が何か狙っていた…とかか。
今となっては…ん?いや待てよ。
もしかしたらその当時の事すら知ってる可能性があるヤツがいるな。
「ユウキ?どうしたの?」
「…ハル。もし俺に何かあったらハルの力で止めてくれるか?」
「何をするつもり…?」
ハルが不安そうな顔をする。
「ユウキ様!?まさか!?」
アクアは俺の考えに気づいたようだな。
「あぁ。ハル俺の中には俺じゃない存在がいるんだ。アイツならもしかしたら古代の出来事も知っているかもしれない」
「…それってルーナさんから貰ったその腕輪で封印している力の事?」
そう。この世界に来てすぐに暴走しかかったあの力。
あれ以来俺が自分で闘魔融合で同じような力を使うことはあってもアイツ自体の力ではないんだよな。
何度か会話はしてるから話すだけなら大丈夫じゃないかなと。
「あぁそうだ。大丈夫封印を解くわけじゃないよ。ちょっと話をしてくるだけだ」
「本当に大丈夫なの…?」
「腕輪の力で自分からは何も出来ないと前言ってたからな。大丈夫だろう。まぁ知っていても素直に教えてくれるかはわからないけどな」
さて。とは言え話せるものかな…。
とりあえず目を瞑り呼びかけてみる。
(話聞いてたろ?最近話しかけてこなくなったな?)
(貴様から我に声をかけるとはナ)
お。普通に返事してきたな。
後は素直に話してくれるといいんだけどな。
(さて。聞きたいことがあることはわかってるよな)
(古代魔族のことカ)
(そもそもお前はその時代からいたのか?って言うかお前は神霊なのか?)
アクアはその可能性が高いと言っていた。
まぁそうであったからどうなるかって話ではあるんだがな。
(神霊…カ。少し違うナ。我はこの世界で死んで行った人々の負の集合体ダ。アレスのような神霊ではなイ)
(1人ではない…ということか。お前の意思はその集合体の意思ということか?)
(我の意志が我のものなのカ、集まったモノの中のものなのかは知らんがナ)
いったい何人の負の感情が集まってできたのか…。
(お前はいつから存在しているんだ?)
(…さぁナ。少なくとも魔族がいた頃には存在はしていた。今の貴様のように器になる存在がいなかったので何ができた訳ではないがナ)
たまたま魔王の因子を持っている俺がイレギュラーで召喚された事役割を持たず、でコイツの器になったと。
(偶然と言うにはあまりにも出来すぎているな。しかも一緒に召喚されたのが世界を破滅から救う者だろ?)
(それはノルアーにでも聞くんだナ。…聞きたいことは他の事だろウ)
やけに協力的だなコイツ…。
(何か企んでるのか?俺に協力する義理は無いはずだろ?)
(以前も言っただろウ。貴様が死ねばせっかくの器が無くなってしまウ。それに貴様の考えていることはわかっていル。最後にはあの娘の敵となるのだろウ?)
(世界を滅ぼすつもりは無いぞ…。俺はラスボスとして倒されれば良いんだ。お前にチャンスがあると思うなよ?)
(ククク。そうであるかどうかその時が楽しみダ。それまでは協力してやるサ)
何かチャンスを狙っているって事なのか…。
危険な感じはするが、現状コイツがどうこうできる訳ではないし、俺もコイツをどうにかできる訳でもないか。
(まぁその話は置いておこう。で、魔族…魔王はあの森に何か目的があったのか?)
(それはあの森に以前世界樹があったことガ関係していル。先代の世界樹はあの地に更に過去の魔王の力を封印する為に植えられていタ)
(なっ!歴代の魔王が封印されている…と?)
(正確には魔王そのものではなく、武器であったリ、残留思念であったリ、魔力の結晶…魔石であったリだろうがナ)
つまりあの森は…
(魔族にとっての聖域のようなものか…)
(そうなるナ…世界樹が倒された後を、最後の魔王は倒され、魔族も全滅した事であの森に何が残っているかは知らン)
悪霊が発生する原因がもしあるとすれば…
(何かまだ、残ってるものが悪霊を発生しやすくさせている可能性はあるのか?)
(さぁナ…だが可能性はあル。そして貴様の力を高められる何かがある可能性もナ)
…俺の力を高める?
(どういう意味だ?)
(ククク貴様今代の魔王に成りうる可能性があるだろウ?あのミナトという男では魔王の器ではないからナ)




