98 信頼
3体の悪霊を倒してエルフの里へ戻ってきた俺達は、
アメリアさんの元へ行き状況を説明した。
「とりあえず3体は討伐してきました。が、後どれだけいるかがわからないですね」
「ひとまずありがとうございます。正直そんな簡単に倒してくるとも思ってなかったので驚きが強いですが…」
アメリアさんが正直な感想を伝えてくる。
まぁ散々エルフが苦戦した相手だもんな。
それを今日の今日で倒してきましたって言われてもな…
しかし討伐を信じてもらえるんだろうか。
「他の魔物のように魔石が出ないから本当に倒してきたのか証拠が無いんですが…」
「そこはジュリアが同行してるのです。元々貴方達の仲間だとしても嘘をつくことは無いと信じておりますので」
同族の存在が保証になると言うことか。
ふとジュリアさんを見ると安堵の微笑みを浮かべていた。
あ、信じてもらえてさては喜んでるやつかな?
まぁ里を飛び出した訳だしな。
「何体残ってるのか定かではないので、しばらく北の森を巡回しようと思ってます。よろしければ里に滞在することを許可頂けませんでしょうか」
船をつけた所まで戻れば拠点はあるが…毎回時間をかけてここまで来るのもちょっと無駄だからな。
「わかりました。仮に里へ悪霊が現れた際に対応して頂けますでしょうか」
「それは勿論。…今まで里に現れることもあったんですか?」
「2度程…。その時はエルフにだいぶ犠牲が出ました。……ジュリア。貴女の家に泊めて差し上げなさい。家はそのままにしてありますし、手入れもしてありますから問題ないでしょう」
「わかりました。では皆を案内致しますね」
ジュリアさんがこちらへ来る。
「皆着いてきてくれ。こっちだ」
アメリアさんに一礼してジュリアさんに着いていく。
「しかし、飛び出したって言うのに家残してあって手入れしてあるとかエルフって凄いな」
道中ジュリアさんに声をかける。
「あぁ。流石に娘の家は残してくれていたようだ」
「娘?」
「ん?言ってなかったか。わたしは長の娘だぞ」
…聞いてないんだなぁ。
つまりアメリアさんが母親ということか。
そりゃ家も残してもらえるか。
あ、悪霊討伐したのを信じてもらえたのも関係してるのかもな。
「ジュリアさんエルフのお姫様ってこと?」
ハルがジュリアさんに質問をする。
「ハハハ。ここが国ならそうだな。エルフは国を持たないからな。お姫様なんて高貴なものではないよ。」
ジュリアさんが笑って返す。
しかし、エルフの里では族長の娘。人の街ではギルド長で数少ないSSランク。
「ジュリアさんってめちゃくちゃ凄い人なんだな」
「そうだぞ。ジュリアの奴を英雄扱いする人達もいるぐらいだしな」
「やめてくれゼノン。私は好き勝手に生きてるだけさ」
お。ジュリアさん照れてるな。
美人が照れてる姿は…アリだな。
「むー。ユウキまた変なこと考えてない?」
…どうしてバレる?俺顔に出てるのか?
「そんな事ないぞ。さてこの後はどうする?しばらく北の森を見回るとしてどれくらいの期間にするか…」
総数がわからないからな。何体倒せば終わるのかがわからないんだよな。
「…そこは長次第になるだろうな。まぁそこまで長い時間はかからないと思うぞ。さて着いたぞ入ってくれ」
ジュリアさんの家は木造の二階建ての建物だった。
普通にでかいな…。
「特に何もないがゆっくりしてくれ。部屋は4部屋あるが…」
「私とユウキは…」
「わかってるよ。2階の角の部屋使ってくれ。ゼノンはその隣を」
んー。ハルと同室なのは完全にデフォルトなんだな。
まぁ今更別の部屋って言われても…ん?いや別の部屋でもいいんだけどな?
「ユウキー部屋行こうー!」
「子供か…。じゃあまた後で」
ジュリアさんとゼノンに声をかけてハルの後を追う。
ジュリアさんか言われていた角の部屋へ入る…が。
「…おかしいだろ?」
「なにがー?」
必要な家具はあるのだが…
「ベッドないじゃん」
「そうだねー。でも私達持ってるじゃん?」
「あのエルフ謀ったな…」
わざとベッドの無い部屋に案内したと。
確かにベッド持ってますけどね。…ハート型の。
仕方なく収納からベッドを取り出す。
「わーい!またこれで寝れるね!」
「…まぁ貰った相手の家だし使わないのも勿体ない…いや別にそんな事も無い…はずだけどな」
まぁ意外と広いからいいか。
〜〜〜
それから1週間ほどエルフの里に滞在しながら北の森を巡回した。
倒した悪霊の数は13体となった。
「これ後何体いるんだろうな?」
「いつまでもここで戦い続ける訳にはいかないよねー。アクアちゃん何かわかったりしない?」
ハルがアクアに聞くも…
「申し訳ありません。流石にわからないです」
「まぁそうだよな。今日は1度アメリアさんに会いに行く日だったか?」
とりあえず1週間巡回するとアメリアさんに約束していた俺達は報告に向かう。
「ご苦労さまです。報告は受けています。13体も退治していただけるとは正直思っていませんでしたよ」
アメリアさんから労いの言葉をもらう。
エルフにとっては天敵だと言っていたもんな。
遭遇さえ出来れば俺とハルの力で簡単に倒せる。
「だけど終わりが見えないもので…。根本的な解決ができていないんですよね」
俺の言葉にアメリアさんが難しい顔になる。
「それは…なかなか難しいですね。悪霊は過去の魔族の数だけいてもおかしくありませんから。もう皆さんの事は信頼していますよ?ノーム様にお伝え頂いても大丈夫です」
どうやら信頼はもらえたようだ。
だけど根本的な解決ができていないから、ここではいさようならってのはなぁ…。
「ありがとうございます。でもここで終わるのは中途半端な気がします。皆さんが安心して過ごせるように何とかしたいと思っていまして」
ハルの役割的にもな。
エルフにとっては悪霊が近くにいる限り滅びが近いと言っても過言じゃないはずだ。
「なぜ?そこまでして頂けるのでしょうか?貴方達はノーム様と契約するためにエルフの信頼を得に来たのですよね?もう十分信頼させてもらってます。…ジュリアが私の娘だからですか?」
そう言われると…まぁそうなんだけど。
「ユウキは良い人だからだよ!なんだかんだ困ってる人見捨てられないし、優しいの!」
ハルが何か褒めてくれる。
嬉しいけどむず痒いな…。
「…良い人…ですか。正直人という存在自体に関しては私は良く思えません。過去の事をいつまでも…と娘は言いますが」
チラッとジュリアさんの方を見ながらアメリアさんが続ける。
「とは言え全ての人がそうではないということはわかりました。すぐにとは難しいかもしれませんが、この先の世代には話をしていこうと思います」
「そう言っていただけると嬉しいですね。悪霊の件もう少しやらせて下さい。何ができるかわかりませんが…」
「わかりました。こちらとしてもお断りする意味はありません。何か協力出来ることがあれば言ってください」
エルフの信頼は得られたな。
後は悪霊をどうにかできる方法か…。
「ユウキよ。1度エルフの資料を調べてみるか?何かヒントあるかもしれん。長よ。よろしいでしょうか?」
「構いません。協力すると言ったのはこちらです。ジュリア任せますので皆さんを案内して差し上げなさい」
エルフの資料か…。
何か見つかるといいんだけどな…。




