前編
死んでいる――
次男からの着信。
当時――
札幌市郊外の北広島市にある実家で、次男・隼人と父・孝之は一緒に暮らしていた。
陰鬱な気分にさせるほどの灰色が垂れこめる空を窓から見ていると、母・博子のスマホが突然けたたましい音で鳴った。
隼人からの第一声は”父が死んでいる“と唐突に告げられた。
「な、何を言っているの?」
一瞬、冗談を言われたのかと博子はそのことを真面目に取り合わなかった。
だが、隼人の必死さと動揺が博子にも伝わると、孝之の死が現実だと認識した。その途端に全身の力が抜けてその場にへたり込んだ。
昼過ぎでも起きてこない父を起こす為に声をかけたが反応がなく、肩を揺すってみると既に冷たくて固まっていたというのだ。
だが、死後硬直が始まっているとか死んでいるとか伝えられても、実際に目にするまでは半信半疑である。
長男・淳は母と一緒に札幌市内から実家のある北広島市へ向かう。淳は移動中の車内で、整理できない不可解な出来事を夢の中にいるようなどこか他人事のような状態にあった。
淳たちが実家に辿り着くと、不穏な雰囲気が建物の外観にも満ちていた。
庭は荒れ果て、家はまるで廃屋のような印象を与えた。
父はアルコール依存で心身共に蝕まれており、暴言や奇行が手に終えなかった。
父の暴言などのDVから逃げるように、淳たち家族はは実家から離れて札幌市で暮らしていた。
父の職場や町内から父の様子がおかしいという知らせが入る。どこからかの通報でしょっちゅう警察が家へ来た。そんなこともあり、父とまだ相性が良い弟が実家へ戻って父と一緒に生活した。
隼人の話によると、父は実家を売却して自分一人だけ施設に入って老後を過すこと計画している。それと父の幼馴染の借金の保証人になるとかいろいろな話も孝之と幼馴染の電話の会話であがっていた。
孝之は酒に酔うとネットショップでは同じ商品を重複購入したり、健康食品等も購入していた。
それらは友人や親戚に無償で譲渡して、手元には何も残っていない。
孝之は昔から欲しいと思ったら子供の様に我慢できない性格であり、しかも欲求が満たされると途端に興味を失い他人に譲渡する性格で物を大切にしない。
なので、多量アルコールを常に摂取していることから、脳が萎縮しアルツハイマー型認知症を発症したのかとも疑った。
だが、仕事にも出かけて地方での仕事もこなしていることから認知症ではなく、底意地の悪い性格が歳を重ねた事により我が強く出ているだけだろうと安易に考えていた。
そんな、父が目の前で冷たい骸に変わり果ているのを淳が確認してから、消防と警察へ連絡した。
数分後には消防と警察が自宅へ到着。
消防の救急隊員から心肺停止状態と伝えられ、その後警察が現場検証することとなった。
孝之は前夜まで調理したり洗濯していたり飲酒もしていた。突然死ということで死因がはっきりとしないため検死することになった。
真夜中。
警察から連絡があり大学病院で詳しく検死することになったと連絡があった。
父の遺体を見たのもそれが最後となった。
検死の報告では、死因は心筋梗塞。心筋も石灰化していた。更に父はストーブを焚きながら高温の室内で電気敷布も高温で使用し、そのまま突然亡くなったので全身低温火傷を起こしていたということだった。
翌日。
昼に警察署で遺体引き渡しとなった。
手続きを終えて、淳は葬儀屋に連絡した。
父の両脚な皮膚が剥がれ落ち腐敗が激しく顔も半分腐敗していたため、後日の火葬の日も父の顔を最後まで見ることなく遺骨となった。
その日の夜。
ぽた。
ぽた。
湿った音――
それは廊下にあるトイレから聞こえる。
博子はなかなか寝つけずにいた。
そして、淳を慌てて起こしトイレの扉に鍵がかかっていて中に入れないと言うのだ。
確かに、トイレの扉は内側から鍵がかけられている。
内側には誰も居ないトイレの扉の鍵を淳は工具で解錠した。
その不可思議な出来事を境にいろいろな怪奇現象が始まったのだ。
納骨の日――
本州から父の兄が来て納骨を済ませたのだが、その日は淳の友人・幹人にも来てもらてっていた。
後日。
その友人と電話で話していると友人が思い詰めたように言った。
「怖い話、していい?」
「いいけど、どうしたの?」
「納骨した翌日、シャワー浴びていて気づいたんだけど、両足首を掴まれたような黒い手の跡がついてたんだ」
淳はその話を聞いてぞっとした。
よく、SNSや怪談話ではそんなことがあるのは知っていたが、実際に身近な人の身に起こるとは思いもよらなかったからだ。
幹人の話はそれだけでは終わらなかった。
―(つづく)―




