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戦国最弱・小田家、外資コンサルがV字回復させます――九度落城でも倒産しない会社の作り方  作者: 筑紫隼人
第1章:倒産危機と「PMO(プロジェクト管理)」導入

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第2話:ダメ社長(氏治)と過労死専務(政貞)

1. 敗走のタクティクス


「ひぃッ、また音がした!

謙信じゃ、軍神が追いかけてきたのじゃ!

政貞、もうダメじゃ、わしを置いて逃げよ!」


——再建初日からこれか。


土浦への逃走経路。

泥に足を取られながら、小田氏治が本日何度目か分からない悲鳴を上げた。


(五回目だな。少なく見積もっても)


政貞は馬を並走させながら、冷ややかな視線を主君に送る。


「殿、落ち着きなさい。あれは風の音です」


「ほ、本当か!?」


「ええ。それに、謙信公本隊は今頃、我が軍が小田城に仕掛けた

『ハニートラップ(残置された酒と食糧)』の検品に忙しいはずですよ」


「お、置き土産……?」


政貞は淡々と続けた。


「加えて、偽の機密文書もばら撒いています。意思決定は確実に遅れる」


現代で言うところの「遅滞戦闘ディレイ・アクション」だ。


上杉謙信という競合他社は、圧倒的な「商品力(武力)」を誇るが、

兵站サプライチェーンに弱点がある。


略奪を禁じる義の軍勢であっても、

落城直後の混乱と補給確認は避けられない。


そこに“餌”と“ノイズ”を投げ込む。


それだけで、数時間は稼げる。


(この数時間が、生存率を決める)


「だ、だが、わしの城が……。

先祖代々の小田城が、あの不浄な連中に……」


「固定資産への執着は捨てなさいと言ったはずです」


即答だった。


「いいですか。不動産(土地)に価値があるのではない。

そこで生み出されるキャッシュフロー(税収)と、

それを支える人的資源にこそ価値があるんです」


氏治は、まるで呪文を聞かされたような顔をする。


だが、理解させる必要はない。


(理解は後でいい。まずは従わせる)


政貞の放つ圧倒的な「有能感」に押され、

氏治はかろうじて馬を進め続けた。



2. 土浦城、暫定本社の設営


逃げ延びた先は、霞ヶ浦に面した土浦城。


かつての本社(小田城)に比べれば、

規模も設備も劣る「支店」のような城だ。


だが今は、生き残ったこと自体が最大の成果だった。


滑り込んだ将兵はわずかに数百。

残りは散り散りになるか、敵に降伏した。


(人的資源は想定以上に毀損……だがゼロじゃない)


城内に入った瞬間、氏治は力なく床にへたり込んだ。


「……終わった。

オダ家三四〇年の歴史も、わしの代で倒産おわりじゃ」


脇差に手をかける。


「政貞、すまぬ。お主に苦労ばかりかけて……」


その刃が腹に向けられた、その瞬間——


「――ふざけるのもいい加減にしろ、このバカ社長!!」


政貞の怒号が、広間に雷鳴のように轟いた。


家臣たちが一斉に凍りつく。


氏治の手から、脇差が落ちた。



3. リーダーのメンタル管理(意識改革)


「政、政貞……? お主、今、わしをバカと……?」


「ええ、言いましたとも」


一歩も引かない。


「この状況で死を選ぶのは、責任を取ることではない。

単なる『経営責任の放棄』、つまり逃避です」


政貞は氏治の胸ぐらを掴み、無理やり立たせた。


「いいですか、殿。

メンタルが脆弱なリーダーは、組織を滅ぼす最大のバグです」


「だ、だが……!」


「あなたがここで死ねば、残された家臣はどうなる?」


言葉を重ねる。


「佐竹や上杉に吸収されるか、路頭に迷うかだ。

それがトップの取るべき行動ですか?」


氏治は言葉を失う。


政貞は畳みかけた。


「あなたの市場価値バリューは何です?」


「……な、何も……」


「違う」


即答だった。


「“死なないこと”と“人望”です」


沈黙。


「それ以外は、はっきり言えば未成熟、もしくはマイナスだ」


「ご、ゴミ……ではないのか……?」


「言い換えただけです。本質は同じです」


容赦がない。


「だが、その二つで戦える」


政貞は断言した。


「九度落ちても生きている。それ自体がブランドです。

その“しぶとさ”に人が集まる」


視線を合わせる。


「だから死ぬな。それがあなたの唯一にして最大の責務です」



4. 暫定予算案の提示


政貞は懐から、逃走中に書き殴った

小田家再建計画書ロードマップ」を取り出した。


「いいですか。

現在の我々のキャッシュ(軍資金)は底を突いています」


家臣たちの視線が集まる。


「まずは、霞ヶ浦の利権を担保にした

『短期債(強制献金)』の発行」


ざわめき。


「そして、佐竹・北条・上杉といった勢力に対する

緩衝材バッファ』としての価値提供」


家臣の一人が恐る恐る口を開く。


「それは……どのような……?」


「簡単です」


政貞は淡々と言った。


「小田家は弱い。だからこそ——」


一拍。


「潰すより、生かしておいた方が都合がいい存在になる」


場が静まる。


「佐竹と北条の壁にするもよし。

上杉の南下を遅らせるクッションにするもよし」


視線が鋭くなる。


「小田家は、“消えると面倒な部品”になる」


そして、微笑んだ。


「殿。あなたには、世界一の『最弱王』になっていただきます」



5. 再ログイン後の初仕事


氏治は、ゆっくりと顔を上げた。


先ほどまでの涙は、止まっていた。


「……わかった。わしは、死なぬ」


「よろしい」


「泥を啜ってでも、生き延びる」


「それでいい」


政貞は頷き、地図を広げる。


(前回のクライアントは放っておいても最適解を選ぶ超一流だったが……)


(今回は真逆だな)


だが——


(だからこそ、やりがいがある)


霞ヶ浦を中心とした「水上物流ネットワーク」の構想が、

すでに脳内で組み上がっていた。


土地を失ったなら、水上で稼げばいい。


九度落ちた城を、十度目に奪還する時、

そこは単なる城ではなく、

収益を生む「拠点」に変わっている。


「さあ、諸君」


顔を上げる。


「残業の時間だ」


口角が上がる。


「小田家再建プロジェクト——キックオフといこう」


---


第2話・ステータス報告


• ステータス:

本社(小田城)喪失。土浦城への暫定本社移転(オフィス移転)完了。


• 主要施策:

遅滞戦闘ディレイ・アクション」によるリソース回収。トップ(氏治)の意識改革および切腹(経営責任の放棄)の阻止。


• 経営課題:

キャッシュ(軍資金)の枯渇。主要アセット(土地)喪失に伴う収益モデルの崩壊。


• 政貞のメモ:

「ハニートラップで時間を稼いだのは正解だった。だが、この“最弱社長”の運用が最大の論点だ。次は残存資産の洗い出しと、土浦という拠点の収益化を急ぐ」


【次号:第3話:本社ビル(小田城)の損切り】


「燃える小田城は“負債”か“資産”か——答えは、もう出ている」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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また、歴史ものである本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も書いており、戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!


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