第12話『勧誘』
「新政代表、あなた方艦隊の当面の停泊地が決まりました」
四月十八日。天自艦隊が地球Bに転移してから一週間が過ぎた。
SF顔負けの別世界からの来訪者が訪れ、その存在を世間に公表してから四日が過ぎ、ようやく日本A政府は当面の対応を閣議決定した。
現在留まっている四国沖海域ではアクセスに難がある。いかに五百メートル級の空母がいても、通常の滑走路とは着地概念がことなるため日本本土から直接〝かが〟に降りることは出来ない。
スムーズな交流をするには陸地に近づいてもらう必要があり、地政学的に考えて最適となる島として硫黄島が挙がった。
「共通する歴史を持つので説明は不要と思いますが、自衛隊が常駐している硫黄島となりました」
佐々木総理は現在唯一天自艦隊と繋がっている通信ラインで、新政代表に閣議決定した内容を告げる。
『承知しました。やはり硫黄島となりましたか』
そういうあたり、やはり天自艦隊も同じ認識のようだ。五十年の隔たりはあっても同国ゆえに齟齬が少ない。助かる反面先入観から不気味さも同時に覚える。
『もちろん、勝手に向かえ、というわけではありませんよね?』
柔和に笑う新政代表。明らかに見透かされており、支援をする側なのに圧を感じてしまう。日本Aの決定に異論はないという意思表示であるが、察しが良すぎるのも時には困る。
「ええ。先日と同じで〝てるづき〟を向かわせ、先導する形で硫黄島へと向かってもらいます」
これは内外的に日本Aが天自艦隊に対して主導権を握っていることを知らしめるためだ。
天自艦隊が許可を得たとはいえ移動すると、どうしても主導権を握っているのはどちらなのかが不透明になる。だが、護衛艦が先導して天自艦隊を誘導すればその誤解は解け、明確に主導権を握っていると伝わるのだ。
『分かりました。〝てるづき〟の到着をもって移動を開始します。硫黄島への上陸は構いませんか?』
「法的には皆さんは国籍不明の入国者となりますが、法務大臣による一時庇護のための上陸許可として特例で出しました。小笠原村を管轄する東京都とも調整済みです」
『配慮に感謝します。精神衛生上、陸地に上陸出来る確約だけは隊員たちに伝えたかったので』
いかに巨大な護衛艦に乗っているとはいえ、人工の地面と自然の地面では受け取り方が違う。
日本Bの生活は国内に限ってはそう違いないことは資料から分かっている。レヴィロン機関で揺れを消しても艦は艦だ。人はやはり、大地に立ってこそ実感を得る。
船を職場にする人でも変わらず、定期的には上陸をさせた方がいい。
そうしたことから佐々木政権は発表後から、国内外からの執拗な質疑応答に対応しながら出入国在留管理庁と東京都と協議をして上陸する段取りを整えたのだ。
「硫黄島に到着しましたら、天自艦隊全員の名簿を作らせていただきます。そしてこれは公にはしませんが、この世界に存在している同一人物の有無を確認します」
この事案で問題の一つが同一人物の存在だ。
時差的にに存在しているとなれば〇歳から十歳で、何人が該当してそのうちの何人が歴史がことなっても生まれていることを確認しなければ、後々大きなトラブルになる。
この世界に生きる同一人物は全くの無関係でも、別世界から来た天自自衛官と同一であると取材やら事件やらに巻き込まれる可能性が高い。
公にすればその可能性が上がるから個人情報として防ぐが、護衛をする意味では前もって把握する必要がある。
『分かりました。そちらの判断に従います』
「〝てるづき〟は本日、現地担当対策班を乗せて出港します。到着は明日で、到着後に移動を開始してください」
『分かりました。今後、我々との交渉はその現地担当対策班とするということでよろしいですか?』
「はい。メンバーは皆さんと接触した波川海将補率いる五名です。てっきり調べていると思いましたが、存じていなかったのですか?」
『佐々木総理、アメリカは核兵器を安易に使いますか?』
画面越しに伝わる威圧感。佐々木総理はこの一言で、例の情報収集能力の立ち位置を理解した。
安易に踏み込んではならない領域で、同時に文字通り天自艦隊にとって最終手段なのだろう。
ならば同一人物の存在も調べていないか、知っても任せているかだろう。
「失礼しました。話を戻しますが、まだ天自艦隊の支援については定まっていません。表面上は分かっても、まだそれだけですので。どれだけの情報や技術をあなた方は渡し、こちらはどう受け取るのか、慎重に議論をしていかないとなりません」
『承知しています。我々も簡単に支援を受けられるとは思っていませんので』
「理解していただいて感謝します」
『……佐々木総理、この場でのテレビ会談でなんですが、一つ纏めておきたい議論があります』
「何でしょうか」
『呼称についての再定義をしたいと思います』
「というと、天自艦隊や日本A、Bですか?」
『はい。区分は必要ですが、AやBでは印象的に上下のイメージがついていて、隊員の中には不満を漏らす言葉を耳にしています。天自艦隊はいいのですが、それでも私たちもまた唯一無二の日本から来ました。Bと表現されるのは今後のことを考えると改善したいと考えます』
「そうですね。便宜上AとBとしましたが、見方によっては上下関係があると思います」
この世界の日本も、向こうの世界の日本も、それぞれが独立した唯一無二の日本だ。それをAやB、1や2と順番のある記号で分けられるのは侮辱ともいえる。
「しかし、だとすればどう区分するか……」
『一つ案があります』
「伺いましょう」
『私たち日本は、時として『転後日本』と表現します。国土転移した後の日本として転後日本と呼び、同じ区分となる戦後はもう語られていません。そしてこの世界では戦後日本が続いている。ある意味過去を忘れない、または忘れられないとなりますが、区分をするならそこではないかと思います』
「戦後日本、転後日本……確かに今の関係から区分をするならそれが一番ですね」
個人的には八十年以上前の戦争を再び前面に引き出す形となるから避けたいが、現代日本と別世界の日本を似て非なる形で区分するならそれが妥当だと理解できる。
ここは個人より政治的な判断だ。
「分かりました。談話として別世界の日本を『転後日本』。この世界の日本を『戦後日本』とこの事態が解決するまでそう区分すると発表しましょう」
『ありがとうございます』
「ですが、あくまで混同を防ぐためなので、日本単体は我が国の方で使わせてもらいます」
単体日本表記は譲らない。ここまで戦後日本で固定してしまうと以後の公文書にはすべて戦後日本としてしまい、国内外でトラブルを起こしかねなくなる。
あくまで転後日本について語るときに使用すると、日本の価値を守る。
『もちろんそれで構いません。我儘を聞いていただいて感謝します。今後、私たちは転後日本、あなた方の方を戦後日本で共有させていただきます』
佐々木総理自身、いちいち転後日本について「別世界の日本」や「別世界で異星に転移して五十年が過ぎた日本から来た」と説明的なことをするのは煩わしく、略式で呼べる名称ができたのは、正直助かった。
「では話の続きは硫黄島についてからで」
『分かりました。それでは失礼します』
短いビデオ通話を終え、佐々木総理はイスに体重をかけた。
天自艦隊がこの世界に来て一週間。公表して四日。ほとんど寝ずに働いた。
関係閣僚と官僚も同じだ。天自艦隊を領海内に入れるだけでも調整する箇所が多すぎる上に、国内外から様々な言葉が入ってきて対応に追われる。
しかも通常の執務もあるから猶更だ。
ただ、総理が大変ということは周囲も大変ということ。トップであるがゆえに弱音を吐いてはならない。
この苦労の先に転後日本の技術が手に入るとなれば、中長期でみれば日本のためになる。
今は歯を食いしばって事を運ぶほかないのだ。
*
「見事に取り囲んでるな」
〝てるづき〟CIC(戦闘指揮所)にて、秋庭はモニターを見ながらつぶやいた。
艦長職を一時的に解かれたとはいえ、元艦長ゆえにCICへの立ち入りは現艦長の許可を経てだが自由に入れ、天自艦隊を取り巻く状況を俯瞰する形で確認した。
天自艦隊の上空には周辺海域を監視するため早期警戒機が巡回しており、高高度からのレーダーで護衛艦からでは見えない水平線の彼方の様子を見ることができた。
多国間でやり取りでもしたのか、天自艦隊を半円を描くように韓国、フィリピン、インドネシア、オーストラリアの軍艦が遊弋している。
さすがに日本側の海域には近寄る国はない。
「各国は天自艦隊とは常に五十キロの距離を保っています。視認は出来なくても即応できる距離ですね」
「あわよくばコンタクトってところだが、天自艦隊が日本所属だから出しずらいってところだろう。EEZ(排他的経済水域)にいるのもそれだな」
排他的経済水域は公海だが、資源や経済的権利は沿岸国に属する。天自艦隊はその中に降り、他国が天自艦隊に接触を図るのは軍事、外交、経済が関係していると解釈できる。
転後日本の技術入手は経済にも関わるから、日本から文句を言われるのを避けるためにも手出しはせずに監視に徹しているのだろう。
単なる異星人ではなく日本から来たのもブレーキがかかっている。
「あくまで監視してるぞというアピールだ」
中露なら構わず踏み込むだろうし、同盟国の米はまた別だろうが、その他の国々は声は大きくともそれだけだ。
「まあ、監視は天自艦隊よりかは我々のほうだろうがな」
各国が懸念しているのは、天自艦隊の持つ技術を日本が手にすることだ。特にシールド発生装置のコクーンは脅威以外何ものでもなく、なんとしても享受を阻止したいところだろう。
専守防衛の自衛隊にとってこれ以上噛みあう装備品ではないが、翻すと難攻不落の要塞と化す。単に身を守るのに優れているだけでなく、攻撃する側に立っても防衛側は対抗手段を持たなくなるのだ。
自衛隊である以上他国に侵略することはありえないが、歴史事実を歪曲していまだに過去の亡霊に囚われている国々からすれば恐怖以外にない。
「天自艦隊まであと三十分」
「早期警戒機より連絡。方位〇、距離一万ヤード、航空機来る。旅客機の航路と逸脱。軍用機と思われる」
CICに異変を伝える報告が上がる。
「中国本土より防衛識別圏を迂回する形で飛来と思われる。機数四。一機を囲むように三機が随伴」
「……空警‐500か」
一機を中心に護衛機が随伴する。中国の早期警戒機を主軸とした編隊だ。
「日本のEEZまで出張ってきたのか」
防空識別圏に接近すれば空自がスクランブル発進をして警告するが、天自艦隊がいるのはギリギリ防空識別圏外だ。中国軍が活動しても日本はまだ動けない。
秋庭はつい指揮官として指揮を出しかけて口を閉じた。現在秋庭に〝てるづき〟の指揮権はない。艦長となった久坂二佐に助言をすることは出来ても直接指示は出せない。
そもそも航空識別圏外を飛行している以上、日本はただ見ているしかできないのだ。
久坂艦長も報告を受けているだろうが、現状では監視に努める以外出来ないことに歯がゆい思いをしていることだろう。
護衛艦と言う強固なユニットを齎されても出来ることは限られる。
さすがに中国軍となれば私語は誰も発さずに職務に集中する。緊張感がCICに満ち、秋庭も私語はやめた。
指揮権のない秋庭の発言は今のCICにとってただの邪魔だ。同時に何もしなくても元艦長がいては隊員たちの目障りにもなるためCICを後にした。
中国編隊の動き次第で〝てるづき〟は大きく動くが、現段階では通常のままだ。対空戦闘の指示もなければ目に見えて大きくは動かない。
秋庭は現地接触班となる波川海将補らのいる士官室へと戻った。
「秋庭二佐、中国の早期警戒機編隊が向かっているようだな」
艦内電話で知ったのだろう。戻るや波川海将補が訪ねてきた。
「はい。攻撃はないと思いますが、接近することで天自艦隊がどう動くのかを見るのが目的かと」
「転後日本が警告をすれば国際法に準じたとして不満を募らせ、近づければ外見上だが情報を確認できる。レーダー照射はしないだろうが、敢えてしてどう動くかを把握できる。文句を言ってきても適当な理由をでっちあげて逃げる。向こうのよくある手口だ」
さんざん戦後日本が受けてきた中国の軍事的行動だ。
「転後日本が戦後日本と同一か、または別かを把握したいのでしょうね」
出港までに防衛省から、別世界から来た日本を転後日本。自分たちの日本を戦後日本か日本単独表記に統一する連絡が来た。
戦後を強調するのは個人的に気になるが区別を公式にしやすくなったのはありがたい。
「早いところ硫黄島に移動して正式に交流と行きたいものだ」
現場組からすれば、わざわざ〝てるづき〟が先導せずに天自艦隊の移動を願い、秋庭たちは航空機で向かえば時短になっていた。
日本が転後日本の主導権を握っているという政治的に見せたい意図は理解しているが、現場からすれば時間が重要なため不満を抱いてしまう。
士官室の内線に着信が入った。
秋庭が受話器を取る。
「秋庭だ」
『久坂です。今、オープンチャンネルで中国機より天自艦隊に無線がありました。流すのでスピーカーにしてください』
「分かった」
秋庭はすぐさまスピーカーボタンを押して受話器を戻す。
「皆さん、中国が天自艦隊に無線を発したようです」
士官室にいる波川海将補をはじめ、初めて天自艦隊に乗艦したメンバーの視線が内線に向けられた。
「我々が到着をする前に手を出したか」
スピーカーから英語が流れた。
『未知の艦隊代表、および転後日本の同胞諸君。聞こえるか。 我々は中華人民共和国、東部戦区所属の空中警戒管制機である。
貴方方がこの海域に出現してから一週間。我々はその推移を注視してきた。 しかし、極めて遺憾ながら、貴方方の血を分けた同胞であるはずの戦後日本政府の対応は、あまりに不誠実と言わざるを得ない。
見よ。彼らは貴方方を領海の外に留め置き、補給も、安息の地も、正式な外交的地位も与えていない。 今、貴方方に近づいている日本の駆逐艦も、貴方方を歓迎するためではなく、単に監視し、その高度な技術が他国へ流れるのを防ぐための檻に過ぎないのではないか。
戦後日本は、かつての誇りを失い、法と官僚主義の泥沼に沈んだ国家だ。 彼らは貴方方の存在を恐れ、持て余している。このままでは、貴方方の誇り高き艦隊は、この広大な海の上で補給を断たれ、政治的な駆け引きの道具として使い潰されるだろう。
提案がある。 我々、中華人民共和国は、貴方方の技術と歴史を正当に評価する。 もし貴方方が望むなら、我が国の不凍港を一つ、貴方方の新たな母港として完全に開放する用意がある。 そこは、戦後日本のような不自由な法に縛られた隔離施設ではない。 貴方方が必要とするあらゆる物資、エネルギー、そして国家としての尊厳ある待遇を、我が国は即座に保証しよう。
未知の艦隊代表。 沈みゆく戦後日本と心中する必要はない。 真に未来を切り拓く力を持つ我々と共に、新たな歴史を築こうではないか。 我々は、貴方方の賢明な判断を、北京にて待ち望んでいる』
聞いて吐き気がしそうな内容を聞き、秋庭は歯をかみしめた。
「露骨な勧誘だな」
「向こうの定番な文言とはいえ、オープンチャンネルであからさまな我々は無能、自分たちは有能と訴えるとは腹が立ちますね」
「だがここで感情的になれば向こうの思うつぼだ。それに、いくらあれこれを言っても、相手のことを理解してなければ意味はない」
波川海将補はさすが長年国防に携わってきただけあって手岸法務官や坂井技術官と違い冷静だ。
「いくら別世界であっても、その相手が日本なら、な」
中国の放送から数分が経ち、今度は天自艦隊がオープンチャンネルで音声を発信した。
『音声を発信した者に返答する。日本語で話されたし。以上』
長々とした勧誘に反して日本語による一言の返信。
そのギャップに士官室はしばし静かになった。
「ふっ……さすが別世界の日本の自衛隊だな」
「自分たちの立ち位置と経緯をちゃんと理解したうえでの嫌味でもありますね」
少なくとも転後日本は英語が通じないわけではない。もし五十年の異星生活で英語が廃れたのなら、そもそも返信せずに無視すればいい。なのに自分たちのこととして返信するということはちゃんとリスニングができている証拠だ。
なにより別世界でのアメリカに行こうとしていたのに英語ができないはずがない。
分かったうえで、そっちの土俵には立たない意思表示を兼ねているのだ。
この世界の日本ではない日本だからこそ、国際社会の空気を読まない返答ができる。
秋庭はこの返答で転後日本の評価を一段階内心上げた。
「中国は日本語を話せる人を用意してるかな」
国際海域であれば共通語である英語でのやり取りが常識だ。日本だろうと中国だろうと、やり取りは英語だがそれを否定するなら日本語でやり取りをしないといけない。
さすがに国際標準語の英語を拒否するとは思わなかっただろう。
中国側から反応があったのは三分後。再び英語での発信だった。
『未知の艦隊代表に告げる。承知であろうが、国際海域では英語が標準である。別世界を経ても地球由来であるならば国際常識に従ってもらおう』
搭乗していた空警‐500に日本語を操れる乗員は乗せていないようだ。英語が標準とはいえ、転後日本を相手にしようものなら出来る人を乗せるべきだった。
天自艦隊はすぐに日本語で返した。
『我々が交流するべきはこの世界の日本である。同国に母国語以外を使う道理はない。日本語でない限り、我々は応対しない。以上だ』
明確な拒否。しかも中国だからではなく、日本語で話しかけないところが政治的な判断と言える。
『未知の艦隊代表に告げる。貴艦らの態度は極めて非建設的である。
国際海域において英語が共通語であることは自明であり、これを拒否することは国際秩序そのものへの挑戦に等しい。
貴艦らは同胞を名乗りながら、その実、この世界の日本の保護下にある艦艇ではないのか。我々は誠意をもって未来を提案した。にもかかわらず、言語を理由に対話を拒絶するとは遺憾である。
最後に警告する。現実の国際社会は理念では動かない。孤立は貴艦らにとって利益にならぬ』
翻訳機でも使って理解したのか、それとも日本語を聞き取ることは出来たのか、中国側も日本語を理解したうえで文句を言ってきた。
『日本語で話せ。終わる』
この文言で士官室に小さな笑いが漏れた。
あまりにも単純明快な文句に我慢ができなくなったのだ。
「新政代表、すごいですね。さすがにこれは日本は言えない」
「確かにそうですね。転後日本は地球社会とは完全に分離していますから国際社会を無視できる。しかも地球社会との信頼関係がないからこそ言える手ですね」
「あと自分たちの強みも理解してるのもあるな。普通なら紛糾ものだが飲み込むしかない」
天自艦隊の持つ技術は名称と内容は公表されている。どれもが魅力的だから感情的に突っぱねることもできない。過度には出来ないが悪くない返しと言える。
「文字通り取り付く島がなければ引き返しますかね」
手岸法務官が訪ねる。
「しないだろうな。あれだけオープンチャンネルで醜態をさらしたら、現場もだが上が許さない。なにか強硬策を取るはずだ」
「まさか攻撃を?」
「……いや、その手前だろう」
中国機編隊は天自艦隊まで暫定で七十キロほど。〝てるづき〟が接近する頃に向こうもことを起こす距離になるだろう。
ただ、天自艦隊の性能を目の当たりにしている秋庭は、特に心配はしなかった。




