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第24話 西暦

 帰れない? 日本に?

 いよいよどういう意味だ?


『それは……どういう?』

『私も!帰りたかったんです……最初は』

『何故、帰れないと?』


 彼女は俯き、押し黙ってしまった。


 帰れない? 彼女本人も?

 経済的な問題だろうか。チケット代が高過ぎる?

 パスポートの問題か?

 いや、そんなもの大使館にさえコンタクトできれば、大した問題ではない。


 まさか、外交のない国なのだろうか。

 確かに日本が国家として承認していない国や地域はいくつかあったはずだ。

 だが北朝鮮や台湾なら国家として承認はしておらずとも、外交はある。

 他にはどこか?

 マルタ騎士団? いや、土地がない。

 アフリカには確か未承認政府があったはずだが。

 クソッ! 何か、何かで読んだはずなんだが。

 パレスチナか? それならどうにかしてイスラエルに向かえば何とかなりそうなものだが。


 彼女は黙ったまま、口を開こうとしない。


 『失礼ですが、いつからここに?というか、いつまで日本に?』


 質問を変え、様子を見てみる。


『はい、ええと……19歳の時なので、昭和59年にここへ』


 なんだと?

 俺はむせ込み、咳ついた。


――昭和59年? 30年以上前だと?


 ではこの自称月島ゆかりは、一体何歳だというつもりか。

 まかり間違えても50代なんかには見えない。

 どう見ても――20代前半だろう。


 やはり、俺を騙すつもりだろうか。

 それとも元号を理解していないだけか? 西暦で聞き直すか?

 もっと粗を探すべきだろうか。

 しかしただの勘違いであれば、あまり失礼は働きたくない。


『失礼ですが、今は何年かわかりますか?』

『もう……四年になりますから、昭和の63年?ただ、あの、何というか』彼女は口ごもった。



『西暦では……?』

『西暦……1988年になりますか?今年は』


 どうも嘘を言っている様には見えない。

 彼女の眼差しは、真剣だ。

 しかし女の嘘など男には見抜けないものだし、果たして。


 ――タイムスリップ。

 忘れかけたパラノイアを思い出す。

 俺も、彼女も、それぞれ遥かなる未来へ。

 または、彼女だけ?

 いや、馬鹿か俺は。


『ひょっとしたら、一年位ずれているかも知れません。今は何年ですか?』


 何故かは分からないが、何だか縋る様な目付きだ。

 ――これは、どう答えたものか。

 しかし、正直にいうよりは、あるまい。


『……平成31年。2019年です』


 俺の腕や脚のやつれ方から、数週間の記憶を無くしている可能性はあるが、それが年単位に及ぶ事は無いだろう――おそらく。


『ヘイセ……?』

『昭和の次の元号です。昭和天皇は64年に崩御されました』

『64年?』


 どこまで本気だ? 平成すら、終わるというのに。

 いや、そもそもこの30年のズレは。


『あ、いや。西暦でお話ししましょう。俺は、2019年から、来ました』

『そんなに……未来?から?……そう言って良いなら』


 クソッ!彼女の話す意味が分からない。

 何か騙すつもりにしても、その意図が分からない。


 本人の言通りで、実際には50歳を過ぎているのか?

 経過年数を盛大に勘違いして?

 ――それとも、シンプルに、彼女は狂人なのだろうか?

 または、俺か――。


 埒が明かない。

 話を、戻してみるか。


『あの、出来れば、帰りたいんです。日本に』


 彼女が狂人である可能性が出てきた以上、問い掛けは慎重にすべきだろう。


『ここは一体、どこの国なんでしょうか?』


 気の苛つきを出さない様に――だが、最悪路地で叫ぶ所からやり直しても構わない。

 狂人なら狂人で、確証が欲しい。


『そうですよね……わかりました。ごめんなさい』彼女は小さく、頭を下げる。


『どうか、私の頭がおかしくなったと思わずに聞いて欲しいのですが』と彼女は前置いた。


『ここは、私達のいた世界では無いのだと思います』

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