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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第九話 「迷路」

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シーン12 美佳と天才。

 美佳は螺旋階段を駆け上っていた。もうずいぶんと登っているはずなのに、まだまだ最上階にたどり着く気配はない。


「はぁ~、急がないと!

 塔の一番上ってまだまだ先かなぁ……?

 舞踏会が終わるまでに間に合わせないと……」


 登りながら、ふと仙狸の言葉を思い出して、美佳は立ち止まった。


「でも狼なんて出るのかな……? お城の中なのに……。

 ねえウォルフさん。

 ……あ、ウォルフさん探さなきゃいけないんだった!」


 そこでハッと気がつく。


「あ!! 狼が出るって……ウォルフさんの事かも!

 ね? ウォルフさん!

 ……あ、ウォルフさん探さなきゃいけないんだった!」


 美佳が何度目になるかわからないその言葉を口にした時、階段の上から笑い声と共に一人の男が駆け降りてきた。


「あはははははははー!

 ねえお嬢さん、ゲームしよう!

 これから喋る言葉は全部反対にするんだ!」


 突然駆け下りてきて意味不明なお誘いをしてきたその男は、音楽室に貼ってある中世の音楽家のような恰好をしている。

 美佳はきょとんとして聞き返した。


「え、どなたですか?」


「ばてっだめだゃきなわいてしえかりくっひぶんぜーらかだ!

 あはははははー!」


 全く何を言っているかわからない謎の言葉をまくしたて、男は大笑いする。


「え? え……?」


 混乱しきっている美佳に、男はさらに畳みかけた。


「いなかいにびそあとくぼ? うど、で?

 あはははははー!」


 頭の中で言葉を逆から考えていくが、男が早口すぎて覚えきれていない。だが、聞き返そうとしても、その言葉を逆さにしなければならなかった。

 美佳は必死で頭を働かせる。


「え、えーと……。

 すでい……なら……かわんぜんぜ……かのるてっ……いにな……」


 一瞬にして美佳の言葉を理解して、男はうんうんとうなずいた。


「えー、そんじゃあ、少しずつひっくり返すようにしよう!」


「す、少しずつ……?」


 聞き返す美佳に、男は手本を示すように言った。


「そ。あはははははー!

 でー、うーどー? くーぼーと、そびあーにこーいー?」


 もう一度美佳の頭がフル回転を始めた。


「ええと、ぼくとあそびに……あ、そういうことかっ!

 あっ、もーでー、たしわー、ふーがくをりーとーにー……」


「へー、うーそー。あ、みーきーの、まえなーは?」


「みーきーのまえなー……あ、そっか!

 たしわーの、まえなーは、那須野美佳ですー。

 なたあーの、まえなーは……?」


 美佳も男に聞き返す。だんだんと、美佳もこの会話に慣れ始めていた。


「くーぼーの、まえなー?

 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト。

 しきせいなー、まえなーはー、

 ヨハンネス・クリュソストムス・ウォルフガングス・テオフィールス・モーツァルト。

 ちょっと神に選ばれた、天才音楽家さ!」


 男が名乗ったその名前に、美佳の目が丸くなる。


「ええええ!! ほ、本物のモーツァルトさん!?

 あ、でも、ひっくり返すの忘れてますよ?」


「あはははははー! 君もね!」


 美佳は最も憧れた音楽家を目の前にして感激していた。


「私、モーツァルトさんの曲、大好きです!

 色々お話聞きたいです! けど……」


「けど……?」


「これから急いでこの塔のてっぺんに行って、楽譜を取ってこないと……」


 美佳は少しそわそわした顔で上を見上げる。


「そうなんだ。じゃあ追いかけていこうかなー、あはははははー!」


 モーツァルトは笑いながら階段を駆け上がって行った。


「え……?

 追いかけるって……先に行っちゃった……。

 なんか、変わった人だったなぁ~」


 美佳はぽかんと階段を見上げていたが、気を取り直して階段を登り始める。だが流石に疲れてきていた。


「はぁ、私も急がなきゃ……。

 でも、疲れたぁ……」


 その時、どこからともなく少年の声が聞こえてきた。


「音をたてない魔法の靴はいかがですかー?

 しかも、いくら走っても疲れません!

 今ならお安くしときますよー!」


 その声は、美佳が初めて聞く声だった。


「え……? 今度は誰……?」


 少し階段を登った所に、美佳は声の主を見つけた。


「え、靴……?」

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