シーン13 ホウキ捜索中
その頃、智恵はアキラ・ユーマに手伝わせてホーキングを探していた。その間に智恵がこれまでの経緯をアキラに打ち明けたのは、アキラに対する警戒心が薄らいでいた証拠だろう。
ディスペアーと戦っている事や、変身するには自分の妄想の産物であるホーキングが必要な事、携帯の機種変でホーキングとのつながりが切れた事――。
アキラはそれを興味深そうに聞いていた。
「ふーん、そんでわざわざこっちまで来て、そのホウキを探してんだ?
科学者だなんだ言う割には結構抜けてんのな」
アキラはくすくすと笑いながら智恵の顔を見つめた。智恵はその視線に気づいてそっぽを向く。
「うっさいわね。しょうがないでしょ!
全く、あんなの探さなきゃいけないとか、ほんっとイライラする!」
「つーか……ほんとにいんのかね、そのホウキっての」
智恵の苛立ちには応えず、アキラはボソッと言った。
智恵はその言葉がやけに気になって、アキラの顔を見る。
「……どういう意味よ?」
「なーんかさ、そのホウキって奴の魔力みてーなの、全然感じらんねえんだよな。
どうやらここは妄想界の中でも、あんたの妄想を中心にしたエリアらしい。
その妄想領域が自我を獲得した存在があんたの言うホウキなら、ここまで気配が感じられないわけねーんだけどなぁ」
アキラは事も無げに言った。
「ちょ、ちょっと待ってよ、それじゃあ……」
智恵はその可能性には気付いていた。ホーキングを探し始めてから、その予感は強くなっていた。
だが智恵はその予感を、可能性を認めたくなかったのだ。
しかしアキラは、その核心をズバリと言ってのける。
「消えちまったんじゃねーの? その、機種変? した時にさ」
「え……っ?」
智恵の反応は、疑問や異議の発露ではない。
予想していた事、そして自分も薄々感じていた事を、言葉として明確にされてしまい、頭が空白になった瞬間にただ口から出ただけの声だった。
アキラはちらっと笑った。
「んまぁ? 魔法使いのホウキがパートナーって事に不満があったみてーだし?
良かったっちゃあ良かったんじゃねーの?」
確かにアキラの言う通りだった。さっきホーキングに対する不満をぶちまけたのは智恵自身なのだ。
心の奥底に納得がいかない気持ちもあったが、アキラに反論する事もできなかった。
「それは……そう、だけど……。
でも、あいつがいないと変身出来ないし……」
「なら、今度は思い通りの奴を妄想すればいんじゃね?
イケメンで、万能の天才科学者かなんかをさ」
イケメンの天才科学者。
生意気な役立たずのホウキ。
アキラの言う通り、新しいパートナーを妄想した方が良いに決まっていた。考えるまでもなかった。
それでも智恵は、何か釈然としないものを感じていた。
智恵は自分の迷いを消し去ろうと、言葉にして言う。
「そ……それもそうね!
その方が絶対いいし!」
「だろ?
今度はしっかりどんな奴をパートナーにしたいか、しっかり妄想するんだぜ?」
アキラは柔らかく微笑んだ。
智恵は少し驚いてアキラの顔を見つめる。
アキラはふっと笑って窓から空を見上げた。
「んじゃ、俺様はちょっと出てくるわ。妄想の邪魔しちゃわりーからな」
「あ……うん」
智恵の声に、少し心細さが混じっているのを感じ、アキラはニヤッと笑った。
「ははー、俺様がいなくて寂しいかー?
っつーか、ここはおめーの妄想が中心のエリアだ。
滅多なことじゃ危険はねーと思うぜ」
アキラは開いた窓枠に腰かけ、人差し指と中指を揃えて振って見せる。
「んじゃ、行ってくる!」
そのまま窓の外へ身体を傾け、ゆっくりと外に落ちた。
「え……っ!?」
智恵が驚いて立ち上がりかけた時、外からアキラの呪文が響いてきた。
「高速飛翔!」
窓の外でアキラの身体が急速に上昇し、飛び去って行く。
智恵は窓辺に寄って、アキラが消えた空を見上げた。
「そっか、アキラは魔法使えるんだ……。
魔法……ホーキ……」




