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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第九話 「迷路」

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シーン4 MS部合宿in長官宅

 その夜。

 あかり、智恵、美佳は、水上の家に集まっていた。

 既にパジャマに着替え、部屋に敷き詰められた布団の上に座っている。

 水上はお気に入りのパジャマに身を包み、三人の前に立った。


「さてこれより、MS部の妄想界突入合宿を行う!」


「はい!」


 三人は声を揃えて返事をした。


「あ、先生!」


 水色に青ドット柄のパジャマを着た智恵が手を上げた。


「ん? なんだ? 鷹城」


 被ろうとしていたフードを下ろし、水上は智恵に顔を向けた。


「鵺の時も今回も、MS部の活動って事で家も許可出してくれましたけど、MS部はどんな活動をしてる事になってるんですか?

 急に夜活動する部活って、ちょっと思いつかないんですけど……」


 智恵の疑問ももっともである。水上はうなずいて、説明を始めた。


「なるほどな。確かにこれからも、家で何か説明する事があるかも知れない。MS部の表向きの活動内容はお前達に言っておかなければいけないな。

 MS部は、メディア・ソサエティ。要するに、新聞部だ」


 新聞部。三人は全くピンと来ず、顔を見合わせる。


「新聞部……ですか? 既にありますよ? 長官」


「それになんか、イメージ違うような……?」


「いや、新聞部は校内での普通のニュースなどを扱っているが、メディア・ソサエティは『最近多発している不思議な事件』を独自に取材する、という活動内容にしてある」


 水上の説明をうなずきながら聞いていた智恵は、納得して口を開いた。


「なるほど……。

 ディスペアーの事件が起きたら、取材名目でいつでもかけつけられるというわけですね」


 智恵の補足であかり達も納得の表情を浮かべる。


「そっかぁ、なるほどっ」

「さすが長官! 頭良い!!」


 素直な賞賛に水上は苦笑した。


「私も、一応教師なんだがな……」


「MS部については了解しました!」


 あかりが、ピンク地に赤いハート柄のパジャマ姿で敬礼する。

 そしてちょっと不思議そうに、質問した。


「でも長官、今回の合宿……妄想界に行くのに、なんで長官の家集合なんですか?」


「なんか修学旅行とかみたいだね!」


 黄色地に細かい花柄のパジャマ姿ではしゃぐ美佳。


「妄想界に修学旅行? 面白そうだけど、あんまり嬉しくはないわね」


 また話が逸れていくのを、水上は咳払いで止めた。


「コホン……。弧次郎達も言っていただろう?

 現世界の人間がそのまま妄想界に行くのはとても難しいと」


「はい……」


 智恵が神妙な顔でうなずいた。妄想界へ行く方法など皆目見当がつかなかったのだ。水上に何か方策があるのか――。


「はっ! もしかして……! 長官の家に、妄想界への隠し通路が……!?」


「富士宮……。そんなわけないだろう」


 即座に否定されてしまうあかり。

 だが、それならどうしてここに集められたのか。ここから妄想界に行く方法とは……?


「じゃあ、どうやって……?」


 全くわからないあかりに、水上は逆に質問をした。


「富士宮、お前は良く弧次郎と特訓しているんだよな?」


「あ、はい。夢の中で毎日欠かさず……あっ!」


「そっか……夢!」


「なるほどぉ!」


 水上の質問がヒントになって、三人は納得してテンションが上がる。


「うまくいくかはわからないが……夢の中でそれぞれのパートナーと会えるのであれば、そこで事情を説明して、新しい携帯に宿りなおしてもらうしかないだろう」


 水上の提案は荒唐無稽としか言えないものだったが、他に方法はなさそうだった。

 妄想界が夢の世界とつながっているのなら、唯一実行可能な作戦とも言える。


「そっか。でも、あたしは夢でホーキと会ったことは……」


 智恵は、夢でホーキングと会っているなんて思われたくなかったし、実際会ってもいなかったが、妄想界に行くとなった今、それはそれで不安でもあった。

 

「しかし、ホーキングはお前のパートナーだ。

 富士宮や那須野と同じように、夢の中でなら会えるはずだと思うがな」


 美佳は水上の言葉に大きくうなずいて、智恵に笑顔で言った。


「寝る時に、ホーキ君の事いっぱい考えて寝れば、きっと会えるよ!」


「あのバカの事考えて……?

 ……キモっ」


 つい本音をポロリしてしまう智恵。

 水上は少し苦笑を漏らしたが、すぐに表情を引き締めて、注意事項を伝達した。


「それから、ただ夢で会うと言っても、きちんと夢の中で意識は保っておくんだ。

 夢というのも妄想界の一部だろうから、敵が妨害してくるかもしれない。

 だからできるだけ、夢の中でも三人で行動しろ。

 そのための合宿だからな」


 智恵は目を丸くした。夢の中で一緒に行動なんてできるはずがない。

 それを教師である水上が言うなんて……。


「せ、先生、そんな非科学的な……夢の中で一緒って……!」


「もしはぐれたら、携帯で連絡取れば大丈夫だよね!」


 あかりが普通に待ち合わせをする時のテンションでそう言うと、美佳も笑顔でうなずいた。


「うんうんっ」

「そ、そうね……」


 智恵もなんとなくつられてうなずいてしまう。


「よし、では……作戦開始だ! 三人とも、寝間着には着替えたな!」


 水上はペンギンの頭を模したフードをかぶり、三人に檄を飛ばした。


「はい!」


「では、消灯っ!」


 ペンギンの着ぐるみパジャマを着た水上は、勢いよく電気の紐を引く。

 次の瞬間、あかりがイビキに近い寝息を立て始めた。


「寝るの早っ!」


 驚いて声を上げてしまう智恵。その声が少し羨ましそうなのは、智恵の寝付きが悪いからだろう。


「うん……あかりちゃんふごいほ……すー……」


 美佳も何を言っているかわからない発言の最中に寝入ってしまった。


「美佳も……。

 ふたりとも、このテンションで寝られるのって……才能だわ……」


 安らかな寝顔の二人を眺め、智恵は感心して呟いた。その時。


「こら鷹城!」


 鋭く響く水上の声。思わず智恵は気をつけの姿勢になる。


「は、はい!?」


「理科数学だけじゃなくて、少しは国語も勉強しろ!」


「はいっ!

 ……って、寝言……?

 あたし……寝られるかなぁ……」


 智恵の長い夜が、始まった。

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