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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第九話 「迷路」

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シーン2 既に部室と化している生徒指導室

 放課後。あかり達はいつものように生徒指導室に集まっていた。

 あかり達はもう既にこの生徒指導室を『部室』と呼んでいるが、実はそれはあながち間違いではない。

 MSガールズの活動のため三人の家に連絡を入れていた水上は、『部活動』をその理由としていたのだ。

 実際、水上は学校側にも話を通し、同好会という形ではあったが、『MS部』としてMSガールズの活動をある程度認めさせてもいた。

 まだ正式な部室がない事から、この生徒指導室を使う事にも了承を得ていたのである。

 今日は、三人の必殺技が揃った事を踏まえ、今後の方針をまとめなおす、というのが第一の議題だった。いつまた次の襲撃があるかわからない現在、早急に考えておかなければならない問題だ。


「さて……前回の戦いで、こちらの戦う準備も整ったと見て良いと思う。

 ならば、なんとかこちらから攻勢を……」


 水上がそう切り出すと、美佳は待ってましたとばかりに喋り出した。


「そうですね! あかりちゃんのすごい技も出来たし!」


「三人の技を連携させることで、更に強さが増す……。そこがさらに良いわね」


 智恵はクールに言ったが、やはりその目は高揚している。

 あかりはうずうずしている表情で、勢い込んで言った。


「うん! で、あたし考えたんだけど……!」


「え? なになに?」


 美佳が興味津々で聞く。話がどんどん逸れていく気配だ。


「おい、お前達……?」


「三人の連携技の名前!」


 水上の声はもう届かず、あかりの言葉に智恵が食いついた。


「名前! なになに?」


 あかりは立ち上がって、その名を叫んだ。


「MS・トリプルエンド! どう?」


「へえ~、かっこいい!」


 美佳が嬉しそうに声を上げる。水上は髪をかき揚げ、ため息をついた。


「一通り終わるまでは聞いているしかないか……」


「ねぇあかりちゃん、エンド、って?」


 水上が諦めたそのまま、三人の話は盛り上がっていく。

 美佳の疑問に、あかりは胸を張って答えた。


「戦いを終わらせる技! ってこと!

 あたし達は、敵を倒すんじゃなくて、敵を闇から解放して、戦いを終わらせるわけだから……!」


「そうだね! うんうん! いいと思う!」


「それにさ、みんなの技、名前長いでしょ?

 トリプルエンドの時は、もっとスピーディに叫べるように、略称も考えたんだよね!」


 あかりが元気よく脱線の度を増していく。


「あたしのXV=DaMは……」


「最初の一文字で『X』!」


「イエローシャドウバインドは……もしかして、イニシャルで『Y』?」


「そうそう! で、あたしの絶対奥義・究極万斬刀は、最初と最後の一文字を取って……」


絶刀ゼット!」


 三人の声が揃った。顔を見合わせて笑い転げる三人。


「なるほど、XYZで、エンド、ね!」


 眼鏡をずらし、指で笑い涙をぬぐいながら智恵が言った。


「そうそう! いいでしょ!」


「いい! すっごくいいよ!」


 智恵が大きくうなずくのにつられ、美佳も何度もうなずいていた。


「こんな感じで連携技使うから、弧次郎さん達も把握しておいてね!」


 あかりがそう締めくくると、沈黙が流れた。


「あれ? 弧次郎さん?」


 あかりはポケットから携帯を取り出して、弧次郎を呼んだ。

 だが、返事はない。


「あ! あかり、それスマホ?」


「うん! 昨日機種変したんだ!

 雷に撃たれたり水に濡れたりしたから!」


 あかり達の武器は、携帯を変形させたものだ。鵺との戦いで雷を受け止め、ウンディーネに水を浴びせられ、普通なら完全に壊れているはずのダメージを受け続けている。

 美佳も同様に考えたのだろう。嬉しそうに声を上げた。


「あかりちゃんも? あたしも機種変したよ!」


「うそー! 美佳もスマホじゃん!」


 盛り上がる二人。智恵はおすまし顔で、彼女の携帯を見せた。


「えへへー。じゃーん!」


 差し出された智恵のスマホにあかりは驚いて歓声を上げる。


「智恵もだ! しかもすごい高性能なやつ!」


「ちょうど替え時だったしね!」


 智恵が得意げに眼鏡をくいっと上げた時、水上はついに口を挟んだ。


「てゆうかお前たち……機種変はいいが、弧次郎達とは連絡とれているのか?」


「そういえば昨日から弧次郎さんと話していないような気が……」


 智恵も美佳も思い出していた。

 昨日から、ホーキングの声が聞こえず、静かだった事。

 昨日から、スマホに夢中でウォルフに何も相談していなかった事。


「ああああああ~~~~~~っ!」


 三人の、絶望の声が重なった。


「お前たち……。機種変する前に、なぜ大丈夫か確認しない?」


 水上は額を抑えてため息をつく。


「どうしよう……ウォルフさん……!」

「弧次郎さん……! 弧次郎さん!」


 スマホに向かって呼び続ける美佳とあかり。智恵は冷静に状況を整理しようと二人に声をかけた。


「落ちついて二人とも。前の携帯はどうしたの?」


「データ移したから大丈夫だと思って、ショップに返しちゃった!」

「私も……!」


 あかりと美佳は絶望の顔で智恵の顔を見た。

 完全に終わった、という心持ちなのだろう。

 智恵は小さくため息をついた。


「あたしは何か部品とかを流用出来ないかって取っておいたんだけど……」


 水上に嫌な予感が走る。


「まさか、もう分解してしまった……のか?」


 智恵は申し訳なさそうにうなずいた。


「はい……。良い子のみんなは決してマネをしちゃダメですけど……!」


「はぁ……お前達は……!」


 水上はまた大きなため息をついた。だが呆れてばかりもいられない。原因の下らなさに比して、結果の重大さは、まさに冗談にならないレベルなのだ。


「どうしよう……。これじゃあ変身も出来ないし……戦えないよ!」


 事の重大性をようやく認識するあかり。彼女の顔は蒼白になっていた。あかりにとって、変身能力を失う事は、自分自身を失うようなものだったのだ。

 狼狽する三人。水上は、心を決めた。


「……こうなったら、これから検討しようと思っていた案を、ぶっつけで実行してみる他はなさそうだな」


「案……何か策があるんですか? 長官!」


 すがるように水上を見つめる三人に、水上はきっぱりと言い放った。


「そうだ。

 お前達……妄想界へ行ってこい!」


 三人は一瞬顔を見合わせて、同時に声を上げた。


「え、えええええええ~~~っ!?」

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