シーン1 @常世の国
神託の間。卑弥呼が主の言葉を聞き、そして配下の者に指令を下す、常世の国の中枢である。
悟空が前回の顛末を報告するその中で、ディスペアーにある凶報がもたらされた。
MSガールズの新しい技。
その技は、闇の力による支配を切り離し、支配下に置かれた者を解放する力を有していたのである。
それを聞いたアラジンの顔色が変わった。
「何!? あの小娘どもにそのような必殺技が……!?」
「あぁ。やばいことになって来たぜ、おっさん」
卑弥呼は少し考えて、ゆっくり目を閉じた。
「闇の力を切り離す技……。たしかに、我らの力を根本的に破壊するものになりかねぬな……」
「早急に対策を立てねば……!」
アラジンは焦燥感にかられて思考を巡らせた。ディスペアーにとって致命的な力を持つその技を、封じるか無力化するかしなければ、自分たちに勝ち目はないのだ。
だが卑弥呼は目を閉じたまま、むしろ優しげな声で言う。
「アラジン、そう焦るな」
「しかし……!」
アラジンはそう言って、何か違和感を感じた。
意外なほどに柔らかい表情の卑弥呼。前回は苛立ち、拗ねてもいた卑弥呼に起きたその変化が、アラジンには理解できなかった。水泳大会にも参加できていなかったはずなのだ。
目を閉じたまま、恍惚と言ってもいい表情を浮かべている卑弥呼は、ゆっくりとアラジンに問いかける。
「焦ったからと言って良い知恵が浮かぶわけでもあるまい?」
「そりゃそうだけどよ……」
言葉を失ったアラジンに代わって悟空が口を挟むが、やはり悟空も卑弥呼に違和感を感じ、アラジンを肘でつついた。
「なぁおっさん、なんか卑弥呼様、今日機嫌よくね?」
囁き声でそう言った悟空に、アラジンも顔を寄せて囁く。
「そうだな……。何かあったのだろうか……」
二人のひそひそ話を気にも留めず、卑弥呼は目を閉じたまま、言葉を続けた。
「もちろん、我らもただ手をこまねいてるわけではない。
現世界を闇に染める為に……主の御心に沿う為に……あらゆる手を尽くして、MSガールズを葬り去るのだ!
……ですよね? 主よ……っ」
目を閉じたままうっとりしている卑弥呼。
悟空とアラジンは納得してうなずきあった。二人のひそひそ話はさらに続く。
「なるほど……。そう言う事ね」
「主の声を、久方ぶりにキャッチされたか……」
うんうんとうなずいた悟空が、今度は意味ありげに笑って、もう一度アラジンを肘でつついた。
「ところでおっさーん?
なんかさ、チビ魔人使って、俺のペットたちの事調べてたんだってぇ~?」
アラジンの表情が凍り付く。
「こ、小僧っ! な、何故それを!」
「まぁしょうがねえよなー、おっさんとこ、女っ気ねーもんなぁ」
「こ、小僧、その事は、卑弥呼様には内密に!」
「さー、どーすっかなー?」
「……頼むから」
その時、卑弥呼が目を開いた。悟空とアラジンが顔を寄せているのを眺め、不思議そうに首を傾げる。
「悟空、アラジン。何を話している?」
「あぁいえ! 何でもございません!」
直立不動になるアラジン。悟空は少し慌てて逃げだした。
「さ、さーて、んじゃ俺はあのねーちゃん達の攻略法でも考えてくるわ!
それじゃーな!」
飛び去る悟空の背中を見送って、アラジンもいそいそと退散する。
「私の方も、次の作戦を立て直さねばなりませぬ故、これにて失礼致します」
二人の背中を卑弥呼は手を振って見送った。
「二人とも、しっかり頼むぞ!」
そして卑弥呼は再び目を閉じた。深淵からの声にその身を晒すように。闇の全てを、その身体に受け止めおしいただくように。
その至福の中で、卑弥呼は自分の力が満ちてくるのを感じていた。
「……主からのお声に伴って我の力も更に強くなっているのを感じる……。
MSガールズ! お前達を必ず! 我が闇に葬ってくれる……!」




