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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第八話 「どきっ☆女だらけの水泳大会♪・後編」

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シーン7 あかりの苦悩

 フーン……フーン……フーン……。

 高く規則的な音が響き渡っていた。ウンディーネとの再戦だ。

 MSガールズは攻め手を欠いて、苦戦していた。ウンディーネ側の攻撃に殺傷力が薄く、その為どうにか互角に戦えているという状況だ。


「はぁ……はぁ……っ……」


 レッドは荒く息を吐きながら、ウンディーネへ視線を向けていた。


 フーン……フーン……フーン……。

 フーーーーーーー……ン……!


 ウンディーネの音が強く高く響き、大量の水が発射される。

 その水流に押し流されるレッド。


「くぅっ!」


 がくりと片膝をついて、肩で息をする。レッドはそのまま動きを止めた。


「どうしたあかり!」


 ヘルメットの中で弧次郎の声が叱咤する。


「あかり!」

「あかりちゃん!」


 ブルーとイエローの声が、レッドの心に火をともした。

 ぐっ、と力を入れて立ち上がる。


「よぉぉし! いくよ!

 ひぃっさつ!! 奥義! 万斬刀!」


 だが、レッドの剣は、水を叩くこともなく、ウンディーネの身体をすり抜けていく。


「……あれ?」


 握った剣を見つめるレッドに、ウンディーネの音が近づいてきていた。


 フーン……フーン……フーン……。


 レッドはもう一度剣を構えなおす。


「奥義! 万斬刀!」


 だが、やはりその剣はウンディーネの身体をすり抜けていった。


「……ど、どうして……!?」


 フーン……フーン……フーン……。

 フーーーーーーー……ン……!


「きゃああああっ!」


 ウンディーネの水がレッドを襲う。

 押し流され、倒れたレッドに、黄仙の高笑いが浴びせられた。


「おーっほっほっほっほ!

 無駄だって言ってるのにわからないかねえ!

 技だって、効果ないじゃないか!」

「じゃないかぁ!」


 レッドはゆっくりと、渾身の力を込めて身体を起こした。

 奥義・万斬刀は全ての物を斬り裂く技のはずだ。小さい頃から一生懸命練習してきたのに――。


「な、なんで……っ!?」


 地面を殴ってつぶやく。これではみんなを守る事なんて――。


「当たり前だ! その技はお前の技ではない!」


 弧次郎の言葉に、レッドはビクッと震えた。


「そうよ、あかりの技じゃないのに、使えるわけないわ! あたしの計算によれば!」


 ブルーが容赦なく畳みかけてくる。


「でもあかりちゃんだもん。ちゃんと必殺技、あるよねっ!」


「え……?」


 イエローの無垢な信頼も、今はレッドにとってプレッシャーでしかなかった。


「さぁあかり! 今こそその技で決めちゃって!」

「あかりちゃん!」


 レッドは力なくウンディーネを見上げる。自分の技が通用するはずもない敵が、迫ってきていた。


「で、でも……」


 フーン……フーン……フーン……。

 フーーーーーーー……ン……!


「きゃああっ」


 成す術もなくウンディーネの攻撃を受け続けるレッド。


 息が苦しい。何もできない。またあの水か来る……。


 立ち上がろうとするレッドの膝が震える。


「どうしたあかり! もう答えは出ているのだろう?」

「もちろんだよね! あかりちゃんだもん!」

「あかり、はやく必殺技を!」


 フーン……フーン……フーン……。


 弧次郎達に追い詰められるレッド。さらにウンディーネも容赦なく迫ってくる。


「あかり、お前が剣を振るう理由……それはなんだ!」


――剣を振るう……理由……――


 レッドは頭を抱えて膝を付いた。


「わからない……。わからない……わからない……!!」


 天を仰ぐように顔を上げたあかり。


「富士宮ー、アウトー!」


 黒板の前で社会担当の男性教師がのんびりと言った。

 クラスメイト達の笑い声があかりを包んだ。


「は……っ、夢……?」


 あかりは少しぼぅっとした顔で教室を見回す。

 智恵と美佳が心配そうにあかりを見ていた。


「わからないってカミングアウトは潔い! が、眠っていてもわかるほど天才じゃぁないよなぁ?

 それならちゃんと起きとけ~!」


 あかりはようやく状況を把握した。


「ああああ、ごめんなさい!」


 慌てて謝るあかりに、男性教師はおすまし顔で指示する。


「はいとりあえず富士宮は廊下にGO!

 そのまま廊下に立っとけー!」


「はーい……」


 ひとつため息をついて立ち上がり、廊下に出る。少しひんやりした空気があかりを包んだ。


「夢で良かった……」


 胸に手を当て、安堵するあかり。

 と、その時教室の扉が開いた。


「富士宮ー」


「あ、先生……」


 扉から顔を出した男性教師は、少し心配そうな顔であかりに声をかけた。


「お前……何があったかわからんが、ちょっと顔色悪いぞ?

 保健室で寝てこい」


「はい、すみません……」


 確かに身体の不調は感じていた。無理もない。昨夜からほとんど寝ずに素振りをしていたのだ。

 まだ答えも見つからないという焦りは今もあかりを責め立てている。だが身体がいう事を聞かなかった。


「おう、あんまり無理すんなよ?」


 ゆっくりと保健室に向かうあかりの背中を、男性教師の声と、ドアの閉まる音が、優しく押していった。


「あたしの答え……見つけなきゃ……」


 心と身体の疲労は溜まっている。保健室で休む必要があると感じてはいたが、あかりの焦燥感は高まっていた。


――このままじゃダメだ。このままじゃ、今敵が現れたら同じことに……――

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