シーン5 @校庭の片隅
その頃、あかりは校庭の片隅で木刀を振っていた。
「……イチ! ……ニ! ……イチ! ……ニ!」
規則正しく、寸分の狂いもなく、完璧なフォームで繰り返される素振り。
だが裏腹に、あかりの心は乱れていた。
――剣を振るう理由……。あたしの答え……。
なんなの……? それは一体……なんなの……?――
『お前は何故剣を振るう?』
何度も脳裏に浮かぶ弧次郎の問い。
『理由もなく剣を振るう者には、何も斬ることは出来ない』
弧次郎の追求は容赦がない。あかりの心は悲鳴を上げた。
――わかってる。わかってるんだ。でも……!――
『それは……! 敵を倒して……みんなを……守るために……』
『……話にならん』
――みんなを守りたい、それじゃダメなの……?――
苦悩しながら、木刀を振り続けるあかり。
――あたしの……答え……――
美佳が必殺技を放った瞬間が鮮明によみがえる。
『ウォルフさん……! 私に、力を貸して! 今までみたいじゃなくて、本当の、全部の全力で!!』
『お嬢様……。かしこまりました!!』
『イエロー・シャドウ・バインド!!』
――美佳にも……――
そして脳裏によみがえる、智恵の必殺技。
『魔法ってのはなぁ、科学なんだよ!!』
『……あああもう!! わかったわよ!
えぇいっ! XV=DaM! シューーーートっ!』
――智恵にも……。
答えは見つかっているんだ……。
あたしの答えは……!――
心の動揺のままに、木刀を振るい続けるあかり。と、そこに。
「太刀筋が乱れているぞ、あかり」
心の動揺を見抜いたかのような弧次郎の声。
「こ、弧次郎さん!?」
あかりが素振りを止めて振り向くと、美佳があかりの携帯を持って歩いてきていた。もちろん智恵もいる。
「あかりちゃん、お疲れ様。疲れてない?」
「ふふん、こんな事もあろうかと、疲労回復効果の高い、スーパースポーツドリンク智恵スペシャルを用意してきたわ!」
智恵が水筒を差し出した。
「美佳、智恵、ありがとう……」
美佳はにっこり笑って、あかりに携帯を握らせる。
「はい、携帯!」
「うん……」
やはり今ひとつ元気のないあかり。智恵は敢えてその質問を投げかけた。
「で……答えは見つかった?」
「ごめん、まだ……」
あかりはうつむいて、首を横に振る。
「難しいよね、剣を振るう理由……かぁ……」
美佳はふうん、と考え込んだ。
「智恵や美佳にはわかっているんでしょ? 答え……」
二人は自分の技を持っている。なら、自分にはわからないその答えを出しているんだ……。
あかりは羨望をおぼえながら言った。だが。
「ううん、わかんないよ?」
美佳は呆気ないほどあっさり答えた。
「え……?」
「あたしも、銃を撃つ理由って言われても、ピンと来ないわね……」
智恵も右の人差し指で顎に触れながら少し首を傾げる。
あかりにはわからなかった。
なぜ自分だけ答えを見つけねばならないのか。答えを見つける事は大事なんだろうとはわかる。でも、何故自分だけが……。
あかりは納得できなかった。
「でも! だったらどうして……!」
思わず声がたかぶってしまう。だが美佳は気にせず、不思議そうに呟いていた。
「どうしてだろう……?
私は、相手にいつも、これ以上悪い事して欲しくないって思ってるけど……。
ひょうタンみたいに、本当はいい人で、悪い事したくないかも知れないもん」
「ふふ、美佳らしいわね」
智恵は美佳を見て微笑んだ。そしてもう一度考えながら、あかりに言った。
「あたしは……そうね。知りたい、かな……?」
「知りたい……?」
あかりはおうむ返しに聞き返した。
「そう。敵の能力も、強みも、弱点も。そして、敵が悪事を行う理由も……。
全てが知りたいわね。
全てを知れば、倒す方法も、救う方法だってわかるはずでしょ?
って、答えになってないわね、あたしも美佳も」
そう言って智恵は苦笑した。
美佳は申し訳なさそうに謝って、考え込む。
「ごめんね、あかりちゃん。
筆……弦……うぉりゅちゅちゅ、ちゅかう理由……うーん……」
盛大に噛む美佳にすかさず智恵が突っ込んだ。
「美佳ー? また言えてないわよー?」
「えーー、ちゃんと言えてなかった?」
笑い合う二人を見て、あかりは少し心が軽くなるのを感じていた。
「それが二人の答え、なんだね。ありがとう!
あたしも、もう少し頑張ってみる! よぉーーーし……」
あかりが気合を入れて木刀を構えた時。
キーンコーンカーンコーン……。
「あ、あかりちゃん、もう授業始まるよ?」
「あ……」




