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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第七話 「どきっ☆女だらけの水泳大会♪・前編」

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シーン8 @妄想界某所

 妄想界の片隅、廃墟のような城跡。

 以前ホーキングが自らの魔力を取り戻そうとしていた場所で、弧次郎は剣を構えていた。


「……むんっ……!

 ……奥義……! 万斬刀っ! はぁぁっ!」


 弧次郎の振るった剣が、残されていた巨大な石垣が真っ二つに切断された。滑らかな切断面がずれて、地面に倒れ込む。


「……ふぅ……っ……!」


 溜めていた息を吐き出し剣を鞘に収めると、拍手が響いた。


「さすが……お見事ですね、弧次郎」


 見ていたウォルフの賛辞。弧次郎は目を閉じ、言った。


「見せ物のつもりはないんだがな」


 その声に非難の感情はない。

 ウォルフの傍らで、ホーキングが笑った。


「相変わらずツレないねえ。

 ……しっかし、優等生のお前さんが、パートナーを突き放すとは思わなかったぜ」


「あかりにとって、必要な事だと判断しただけだ」


 弧次郎は静かに、だがきっぱりと答えた。


「それはわかりますが……。しかし、言葉が少なすぎたのでは……?」


「……不器用なタチでな」


 弧次郎はボソッとそれだけ言うと口をつぐむ。

 ホーキングはふっと苦笑した。


「んでもまぁ、いんじゃね? 本人が、自分で気付かなきゃならない事だってあらーな」


 助け舟を出すようにホーキングが言うと、ウォルフは納得したようにうなずいた。


「自分で気付かなければならない事……。そうですね……」


「レッドの技が、お互いの全力がぴったり一致しねえと成立しねえって事は……。

 むしろあかりの方がメインにならねーとダメだろ」


 ホーキングの分析は正しかった。弧次郎はうなずく。彼にはわかり切っていたのだ。


「その通りだ……。あかりが俺の動きをコピーしようとしている限り……」


「それによ、お前なら気付いてんだろ?

 あの技は、ただの技だ。必殺技にはならねーって」


 ホーキングは弧次郎を遮って言った。

 現状認識はもういい。これからどう進んで行くのか。ホーキングは弧次郎にそれを求めていたのだ。


「そうです。お嬢様や智恵様の必殺技と違って……」

「わかっている……!」


 無論それは弧次郎にもわかっていた。ブルーのXV=DaMも、イエローのイエローシャドウバインドも、智恵と美佳が主体となって放つ技だ。

 変身者が主体となり、パートナーが全ての力を注ぎ込む事で、必殺技が完成するのだ。

 レッドが使う奥義・万斬刀は、明らかにそれとは違う。


「そらそーだろな。

 第一、あの技はマスクドガイ雷牙? だっけ?

 お前の元ネタの必殺技だろ?

 だからとーぜん、単に技をコピーしてるだけだってわかってんだろ。

 あかりがアレを自分の必殺技にしちまうくらいの気力がねーと何にもならんだろうな。

 だがあいつにはそれが出来ねえ。あいつはお前になろうとしてるからな。

 単にコピーしようとすっから自分の物にならねーんだぜ?」


「確かに……」


 ウォルフは納得して呟いた。

 あかりの出発点、それがマスクドガイ雷牙であり、目指すヒーロー像そのものでもあるのだ。

 あかりの戦闘スタイルも、思考も、全てが『自分がマスクドガイ雷牙になるには』に帰結してしまうのは無理もなかった。


「とにかくだ。作戦立てようにも、お前らの戦力がアテになるかどうかで全然変わってくっからな。

 とっととケリつけてくれよな」


 喋るだけ喋って、ホーキングは消えた。

 弧次郎は無言で剣を握った。頭の中にあるもやもやを振り切るためには、まだまだ身体を動かしたりなかったのだ。

 その様子を見て、ウォルフは微笑んだ。


「……あてにしていますよ、弧次郎。私も、もちろんホーキングも。

 ……と、わざわざ言うのは野暮というものでしたね。

 では」


 ウォルフが消え去ると、弧次郎は剣を抜いて構えた。

 全く隙のない、文句のつけようがない構え。

 だが、やはりそれは、飽くまでマスクドガイ雷牙の構えでしかなかった。


「わかっているのだ……。

 あの技だけじゃない。まだ俺達が本当のMSレッドになれていない事も……。

 だが……っ!」


 瞬間、弧次郎の近くに転がっていた岩塊が両断される。

 こんな時でも弧次郎の太刀筋には一片の乱れもなかった。

 完璧な、マスクドガイ雷牙の太刀筋。

 弧次郎は目を閉じ、無意識に、絞り出すように呟いていた。


「あかり……!」

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