シーン7 @水上先生の自宅
その夜、水上は考え込んでいた。三人の技が通用しないという敵。だが情報が少なすぎて、対応を考えるには無理があった。水上の思考は自然、富士宮あかりに傾いていく。
技が通用しなかった。それは鷹城も那須野も同じだ。なのに様子がおかしいのは富士宮だけだ。
何が原因でそうなるのか――。
その時、水上の携帯が鳴った。
「ん? 誰だ……?」
携帯を取り上げる。画面を見て、水上は小さくうなずいた。
「……ふむ」
思っていた通りの名前が表示されている携帯。水上は通話ボタンを押した。
「はい、もしもし?」
電話の主は沈黙していた。だが微かに息づかいが聞こえている。
水上は重ねて、電話口の相手に声をかけた。
「もしもし? かけてきたんなら何か話せ?」
すると消え入るような声が、携帯から漏れる。
「長官……」
「どうした富士宮、お前らしくもない声を出して」
水上は敢えていつも通りの態度で言った。
電話を向こうであかりは驚いていた。
「え……どうしてあたしだってわかったんですか……?」
水上は軽くため息をついた。
「あのなぁ。私の事を長官って呼ぶのはお前だけだし、着信の時点で相手は表示されるんだぞ?」
「あ、そっか……」
やはり元気のないあかりの声。理由は想像がついているが、水上は敢えてそれを聞いた。
「どうしたんだ? 富士宮。何かあったのか……?」
「長官……あたし……弧次郎さんに……」
あかりは声を詰まらせた。思っていた以上に深刻そうだ。
「わかった。とりあえず家に来い。場所はわかるな?」
水上は、虚ろになったあかりの心に押し込むように言った。
「え……? あ、はい……」
「じゃあ、待ってるから、道がわからなくなったら連絡入れるんだぞ?」
魂の抜けたようなあかりに、水上は念を押して電話を切った。
「……ふう。やはり、尋常じゃないな、富士宮は。
お前達の言うとおり、か」
水上が視線を向けた先には智恵と美佳が、不安気に水上を見ていた。
水上はふっと息を吐いて顔を引き締めた。
「ここは、大人の出番だな……」




