シーン3 @美佳の部屋
その夜。
入浴を済ませた美佳は、机に携帯を置いてウォルフと話し合っていた。
「ねえウォルフさん、あかりちゃん大丈夫かなぁ……?」
あかりが思い詰めている。美佳の記憶の中に、そんなあかりは存在しなかった。美佳自身、いつになく戸惑っていた。
「そうですね……。
あかり様の気性からして、かなりのショックだったのではないでしょうか……」
「だよね……」
美佳はうつむいた。
「先日の智恵様もそうだったように、あかり様もきっと、自分を乗り越えて下さると、私は信じています。
お嬢様も、そうお思いでしょう?」
その言葉を聞いて、そう言えば、と美佳は思い出していた。
智恵ちゃんはホーキくんとケンカしてたけど、ちゃんと二人の必殺技を撃てた。
私だって……。
だから、あかりちゃんだって絶対に……!
美佳はそう考えて、元気にうなずいた。
「うん!
あかりちゃんがへこたれるわけないもん!
私たちも、私たちに出来ることを頑張ろうっ!」
「はい。ところで、イエローシャドウバインドが破られた件ですが……」
ウォルフは気になっていた件を切り出した。今度の敵は、三人全ての技が効かないのだ。かの敵を破るには、技が破られた原因の分析が必要だった。
美佳は少し考えて口を開く。
「うん。影をうまく捕らえ切れてなかったのかなぁ……?」
もしかしたら絵がはみ出したり欠けていたりしていたのかも知れない。
美佳は状況を思い出しながら考え込んだ。
「いえ、相手の影は確実に補足していたと思います。
ただ……相手の身体が光を透過するため……」
「あ、そうか! 薄い影だったから本体の影響も薄かった、って事だね!
確かにあの敵、影薄かったもんね!」
「お嬢様、それは、また、ニュアンスが……」
ウォルフが苦笑いする。だがウンディーネへの対応策に美佳の考えが向いた事は、ウォルフを安心させていた。
「と言うことは……。敵の身体に色を塗るとかして、影をはっきりさせれば良いって事か!
あ、それより、敵は水なんだから、絵の具を混ぜちゃえば……!!」
美佳の発案はウォルフにとって意外なものではなかったが、理にかなっているのは間違いない。
ウォルフは大きくうなずいた。
「そうですね……。そうすれば敵の影をはっきりさせる事は……」
「よぉし! 敵に着色する作戦を考えなくちゃ!
智恵ちゃんにばっかり頼っていたらだめだもんね!」
やる気の笑顔を見せる美佳に、ウォルフは今ひとつの課題を提示した。
「そうですね。お嬢様の音楽の力を活かす方法も考えなければ……」
「あ、そうか! さすがウォルフさん!」
美佳はぱっと顔を輝かせてウォルフを賞賛したが、そう言ったウォルフには二つの懸念があった。
ひとつは、音楽の力が水にどのような影響を与え得るのかという事。実際の戦いではイエローシャドウバインドを維持するためには演奏が必要になる。その間、水そのものに影響を与える音楽は演奏できないのだ。
そしてもうひとつは……。
「あの、お嬢様。何度も恐縮ですが……『さん』は不要ですと……」
だが美佳にはそれ以外に少し心に引っかかっているものがあった。
「ねえ、ウォルフさん、私、気になってたことがあって……」
また『さん』を付けられたウォルフだったが、彼は美佳の『気になってたこと』に気を取られてしまう。
「あ、はい、なんでしょうか……?」
「あのね、あかりちゃんの必殺技の事なんだけど……」




