アバンタイトル いきなり……?
戦闘は山場を迎えていた。というシーンから今回の物語は始まる。
敵は10メートルはあろうかという巨大な人型の水。
そして空中に浮かぶ二人の女だ。
そのうちの一人、すらりと細身の高身長に巨大なバストを誇る女が、MSガールズの三人を見下ろして高笑いした。
その名は黄仙。イタチの妖怪で、狐仙の妹分だ。
「おーっほっほっほ!
ほらほら、小娘ども! 大人しく観念するんだねェ!
ウンディーネ! とっととやっちまいな!」
「そうそう、やっちゃいなー!」
黄仙の言葉を舌っ足らずに繰り返したのは、仙狸。低身長幼児体型の彼女は、その名に反して山猫の妖怪だ。狐仙、黄仙の妹分である。
人型の身体をゆっくり動かしながら、水の精霊ウンディーネは喋らない。フーン……フーン……と規則的に高音が響いてくるだけだ。
フーーーーーーー……ン……!
突然強く、長くなる高音のノイズ。同時にウンディーネから高圧の水流が撃ちだされ、レッドたち三人にヒットした。
押し流されるように地面に叩きつけられ、咳き込みながら身体を起こす三人。
「くぅ……っ! いきなりピンチ……?」
ずぶぬれで泥だらけになったスーツ。レッドはワクワクしてウンディーネを見上げた。
「こんなパターンの始まりは、初めてね……」
ブルーはキングガンのセレクターを指先でいじりながら考えた。火と風の属性を組み合わせれば、スーツを乾かせるかも知れない。だがまたすぐに濡らされてしまうなら、意味は薄いだろう。
「そうだね……。また新キャラ登場だし。
絵を描く人、大変……」
「お嬢様、それをおっしゃっては……!」
あわててウォルフがイエローを止めた。
「新しい強敵が増えるのは燃えポイントだよ!
くぁぁぁ~~~!! 燃えてきたぁ~~~~!!」
「その意気だ! あかり!」
レッドはジラードを構え気合を込める。
が、ブルーは少し拍子抜けしていた。
「それにしては……そんなに敵強くなくない?」
確かに敵からの攻撃は、水をかけられる程度だ。これまでの敵に比べると、違和感を禁じ得ない。
ホーキングもその違和感には同感だった。
「敵の幹部らしき奴が二人もついてる割にゃあな。
がしかし、ウンディーネか……。
今のうちにぶっちめとかねーと、後がやばいかもな、俺様の計算によれば?」
「あたしのマネしないでよ、バカホーキ!」
その時ウンディーネの発する音が高まって、水流が三人を襲った。
レッドはまたずぶ濡れにされて、苛立ちを爆発させた。
「ぷは……っ!!
もう、うっとうしいわね!
弧次郎さん! 決めるわよ!!」
「応っ!!」
レッドはウンディーネに向けて助走し、高く飛び上がった。
「とう!!
ひっ……さつ! 奥義! 万斬刀!!」
剣が水を叩く。ぱしゃあん、と音を立てて飛沫が飛んだ。
が。
「……えっ!?」
飛んだはずの飛沫、そして斬られたはずの本体は、また一つに集まり人型を形作った。
「おーーーーっほほほほ! 無駄よ無駄無駄!
ウンディーネは水! 剣で斬れるわけなーいじゃなーい?」
「そうそう、なーいじゃなーい?
うーっふっふっふっふ……!」
勝ち誇る黄仙と仙狸。だがブルーはまだ諦めてはいない。
「あかり! 弱点を突けば倒せるはず!
いくわよホーキ!」
「おうよ!」
ブルーはキングガンを構え、ウンディーネの中心を狙い撃った。
「XV=DaM!! シューーーート!」
照射された光は水のゆらめきに歪められ、刻印のありかはよくわからない。
だがその光によって、ウンディーネの影が、うっすらと地面に映る。
ウンディーネはその光に気付いたようだが、何も喋らず何もしない。
規則的な高音ノイズが、少し揺らいだだけだ。
「美佳!」
「うん! 智恵ちゃんの光で影が見える!
ウォルフさん!」
「かしこまりました!」
ウォルツールを振るって、薄くおぼろなウンディーネの影を塗りつぶすと、イエローはくるりとウォルツールをひっくり返した。
「え~い! イエローシャドウバインド!」
弦をかき鳴らし、ウンディーネの動きを封じる。が、やはりノイズが揺らぐだけで、ウンディーネの動きは止まらない。
影が薄すぎて、本体との繋がりが弱いのだろう。
だが、わずかだが動きは鈍っている。刻印は明確には見えないが、それなら広範囲を一気に斬り裂くのみだ。
レッドはジラードを握り直し、再び空高く跳んだ。
「とぉう!!
ひっ……さつ……っ!! 奥義ッ! 万斬刀~~~っ!!」
だが、一撃目と同様、分散と集合を経て、ウンディーネは元の身体に戻る。ブルーの刻印も、イエローの影支配も完全に消えていた。
「え……っ!?」
「ぱしゃーんって、イエローシャドウバインドからも抜け出した……?」
ブルーとイエローの声には信じられないという感情がにじむ。
黄仙と仙狸は顔を見合わせて爆笑した。
「おーーーっほっほっほっ!
だから言ってるじゃなーい? 無駄無駄無駄だって~!」
「うんうん! 無駄無駄無駄だって~!
うーっふっふふっふっふふ……」
ちょっと失敗しながら不器用に高笑いする仙狸。
あかりはジラードを見つめながら、自分に問いかけていた。
「なんで……? 奥義・万斬刀は全てのものを切り裂く必殺技……。
マスクドガイ雷牙では、滝だって、海だって切り裂いていたのに……!」
「あかりちゃん……」
珍しく弱気なつぶやきを漏らすレッドが、イエローは気にかかっていた。
と、その時。
「ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ~」
仙狸が突然身体を左右に揺らしながら奇声を上げた。
「タチ姐、キツ姐から帰還命令~」
仙狸が報告すると、黄仙は少し残念そうな顔をした。
「あらそうなの?」
「うん、ちゃーんとお片付けしてこいってー!」
仙狸は右手をピンと上げて狐仙の命令を伝える。
仙狸の耳には狐仙から預かった耳飾りがぶら下がっていた。この耳飾りを通じて、狐仙は仙狸の様子を見て、指示を出すことが出来る。
黄仙はうん、とうなずいて、MSガールズ達を見下ろした。
「まぁ、小手調べは充分済んだし、小娘ちゃん達の力もわかったし?
今日のところはこの辺で勘弁してやろうじゃな~い?」
「うんうん、やろうじゃな~い?」
黄仙は懐から水筒を取り出すと、にっ、と笑った。
「と言うわけで~? ウンディーネ、もどっといでー!」
「そうそう、もどっといで~!」
黄仙が水筒の蓋を開けると、ウンディーネから水の一部が千切れ飛んで、黄仙の水筒に飛び込んだ。
同時に残った大量の水が結合力を失って、ざばーっと地面に流れ落ちた。
その水が三人に降りかかり、押し流すのを見て、黄仙は満足気に水筒の蓋を閉めた。
「ごほっ……あ、待ちなさい!!」
黄仙達が飛び去ろうとするところに、ブルーは咳き込みながら制止する声が響く。
だがもちろんそんな事で二人が止まるわけもなく。
「待てと言われて~、待つバカは~いない~~」
「いない~~」
二人は歌うように、いや明らかに歌いながら高度を上げ、レッド達三人に振り向いた。
「おーっほっほほほほ! じゃあね~小娘達~!」
「うんうん、じゃあね~小娘達~! うーっふっふふふっふ……」
先行して飛び去る黄仙を、仙狸は慌てて追いかける。
「タ~チ~姐~! やっぱり『うふふ』で高笑いは難しいよう~」
撤退する二人の背中を見送りながら、ブルーは呆気に取られていた。
「……なんなの……? あれ……」
その横で、レッドは……。
「うそ……。万斬刀で斬れないなんて……うそ……!」
妄想、夢、虚構……人類の想像の世界は、実は全てつながっている。
妄想界……その世界の闇の力が増大し、現実へと侵攻を開始したとき、
三人の戦士が、その妄想の力を駆使して立ち向かう!
あかり「夢幻戦隊!」
三人 「MSガールズ!」
OPテーマ「夢幻戦隊MSガールズ」
(あかり)もしも夢が消えたなら
(智恵) 人の心の灯が消える
(美佳) 光を奪い闇に落とす
(三人) 悪のディスペアー許せない
(あかり)
夢に舞え!希望に走れ!
心にあふれる無限のパワー
夢想の力を体に宿し
今こそ戦え!「念写!!MSシンクロナイズっ!!」
切り裂けジラード!「……はぁぁぁっ!」
必殺キーック!「もっと踏み込め!」
一秒三万発の光速パンチ!「それは……無理だ」
(三人)
そうさ無限!夢幻!不滅の心
無限 夢幻 無限 夢幻戦隊MSガールズ!




