シーン4 ついに激突
境界の穴の前で、ジニーはうつむいていた。
今度こそ負けられない。負けるわけにはいかない。なぜなら……。
「……そろそろ時間だな」
アラジンの大きな手がジニーの肩を優しく叩いた。
「……はい。今度こそあのMSガールズを葬ってご覧にいれます。
……おとたまの仇を討つためにも……!」
アラジンとジニーは境界の穴を通り、現世界に向かった。
今度こそ、MSガールズにとどめを刺すために。
あかり達は、ディスペアーを迎え撃つべく学校の屋上で待ち構えていた。
黄昏時、空はオレンジ色に染まっている。
「陽が沈んだら……来るよ!」
あかりは空を見上げて言った。屋上には、不審なものは、ない。
「……うん」
美佳は少し不安気に頷いた。これからの戦いのことはもちろん、智恵とホーキングの事が、美佳は気になっていた。
「今度こそ……!!」
その言葉は、ぐらついていた。
智恵は、自分がどうしたら良いのか、自分に何ができるのか、皆目見当がつかなかった。
結局新しい必殺技はアイデアのカケラすら見つからなかったのだ。
「負けられない……! 真っ向勝負!!」
あかりの声が、オレンジから濃紺へ移り変わっていく空に響いた。
「お嬢様方、来ます!」
ウォルフの声に緊張がみなぎる。上空に、アラジンとジニーを乗せた魔法の絨毯が見えたのだ。
同時に、屋上の端にぼんやりと、鵺の姿が浮かび上がってきた。
アラジン達は屋上に降り立つと、あかり達を見回し、重々しく口を開いた。
「よく来たな、M Sガールズ。今日という日を、お前達の命日にしてくれる」
「アラジン様、鵺の結界は解きました。戦闘準備、完了です」
ジニーの口調は、何かを堪えているかのように低く重かった。
秘めるものは、明確な、殺意。
アラジンはジニーの殺意を鼓舞するように、その小さな肩に手を置いて言った。
「うむ、任せる。今のお前なら、必ず奴らを葬る事が出来るだろうからな」
「……承知しました。必ず」
魔法の絨毯で妄想界へ帰還するアラジンに目を向けることなく、ジニーはあかり達を見据えながら言った。
水上はジニーの殺意を秘めた表情に、また一つ違和感を感じていた。
昨夜はこちらが一方的に敗北したというのに、あの恨みの目は何なのだ。
水上は危険な空気を感じ、即教え子達に声をかけた。
もう二度と、あんな目に合わせまいと強く誓って。
「お前達、無茶だけはするな!
敵を討ち倒しても、自分の身を守れていなかったら意味がない。
よく言うだろ? 『家に帰るまでが、戦闘だ』って!」
水上の心が、あかり達の心を打った。
「わかりました!
いや、了解ですっ! 長官!」
「確か……遠足の時に習いました!」
美佳が右手を上げて水上に答えた時、鵺は結界の残滓を乗り越え、咆哮した。
「ぎゃあああああああ~す!
今度こそ息の根止めたるさかいな! 覚悟しいや!」
完全にブチ切れている。
あかりはむしろ笑顔になって、鵺に言い返した。
「出たわね、鵺! 今日は負けないよ!」
「それはこちらの台詞です!」
あかりに言い返したのはジニーだ。その目は殺意に燃え、あかり達を睨みつけていた。
堪えていた感情が爆発したように、ジニーは泣き叫ぶ。
「今度こそ……おとたまの仇……!
あんた達を倒すんだからぁぁ~~~っ!!」
あかり達は驚愕の声を上げた。一体何のことなのか、全くわからない。
「仇……?」
あかりがぽつりとつぶやく。仇討ちは燃えるシチュエーションだが、自分が仇の側になる事など想像した事もなかったのだ。しかも、全く身に覚えがない。
水上は少し考えながら、ジニーに問いかけた。
「どういう事だ?
あの時は、こちらが完全に負けていた……。
むしろ、何故お前達はとどめを刺さなかったんだ?」
ジニーはキッと鋭い視線を水上に向けて叫ぶ。
「とぼけないで! あんなホウキ使って不意打ちした癖に!」
「え……っ!?」
智恵の顔色が変わった。
「何!? ホウキ……?」
弧次郎の声に戸惑いが混じる。
鵺はブチ切れ声をぶちまけた。
「せや。あの卑怯なホーキ、はよ出せや!」
「なるほど……。何故とどめを刺されずにすんだのかわかった」
水上は納得して智恵の方を向いた。
「鷹城、我々を守ったのは、ホーキングだという事だ」
息を呑む智恵。そしてジニーが目に涙を溜めて叫んだ。
「守ったんじゃない!
あのホウキは! 卑怯な手を使って、おとたまに酷いことしたんだから!」




