シーン4 @とあるビルの屋上
午後二時。あかりたちが下校する、数時間前。
とあるビルの屋上に、人影が二つ、突然何もない空間から現れた。
小さい方の人影は屋上の縁に立って、周囲をぐるりと見まわした。
「なぁ、おっさんよぉ、いくら大きい通路が空けられないからってよぉ、バクってのはさすがに弱すぎるんじゃねえか?
ちまちま夢食ってエネルギー増やすより、もっと恐怖や悪夢をどかーんとさ……」
小さい人影の正体は、孫悟空。初めて見る現世界の光景に、目を輝かせている。
「小僧、話を聞いていなかったのか? 強化バクこそ、我々の初陣にふさわしいのだ」
悟空とは打って変わって落ち着き払った言葉を吐いた大きい人影は、アラジンである。
ついに、現世界への第一撃が放たれるのだ。楽しみであるのは間違いないが、同時に必ず成功させなければならないという使命感も大きかった。大胆に、しかし慎重に、丁寧に事を運ばなければならない。
「強化ったって、夢を食うのに代わりはねえんだろ?」
「その通りだ。が、しかし……起きている人間から強制的に夢を喰らう能力を得たら……どうなる?」
アラジンは初めて、その口を歪めた。それは邪悪な笑みだ。悟空はハッと気づいた。
「起きている人間から……夢? ……まさか……!」
悟空の顔が期待に染まるのを見て、アラジンは満足げに頷き、右の耳からイヤリングを外した。
「では……始めるぞ。
次元連結装置……【魔法のランプ】」
アラジンがイヤリングを指でこすると、イヤリングは煙を出しながら、アラビアンスタイルのランプに変化した。その大きさは30センチ大。アラジンは両手でランプを支えて念を込めた。
そして、気合とともに蓋を外すと、ランプから大量の煙が噴き出し……、煙の中から異形の存在が姿を現した。
「バーーークバクバクバク!! 腹が減ったバクーーーー!!」
ずんぐりむっくりな体躯、短い手足、象のような鼻。見た目の恐怖感、緊張感はそれほどでもないが、これがディスペアーが現世界に放つ刺客第一号だ。その名もバク。
「バクよ……喰らうが良い! 人間を眠りに落とし、夢を喰らうのだ!」
「バクーーーー!!」
アラジンの命に従い、バクは夢を喰らい始めた。
悲鳴。衝突音。クラクション。サイレン。
街中が、不穏な音で埋め尽くされていく……。




