シーン9 現世界のあちこちで。
日はとうに暮れ、月が照り映える夜。
水上鮎は愛用のバイクを駆り、夜の街を疾走していた。
鵺の声が頭を駆け巡り、水上の集中を妨げる。
だが誰もが同じ災厄に見舞われているせいで、道路に車が一台も見えないのが救いだった。
「夕方眠ったとは言っても……睡眠不足にこの音……。
バイクに乗るには最悪のコンディションだな……」
水上がヘルメットの中でため息をついた時、あれほど頭の中を掻き回し、どうやっても消す事のできなかった鵺の声が、消えた。
水上はバイクを止め、地図を開く。
「なるほど、ここまでは声も届かないわけか」
現在位置を確認し地図に印を付けると、水上は再びバイクを走らせた。
「声の聞こえる範囲を特定すれば、その中心に……!」
その頃、智恵は自室で机に向かっていた。ただ一枚のルーズリーフに、びっしりと文字が詰まっている。
それまでに書いた十数枚は、思い切って捨て去った。
一度頭をリセットして、ゼロからもう一度始めたのだ。
智恵は一旦ペンを止めて一息付いた。
「これで異なる種類の光線を同時に撃つ事はできる……。あとは……!」
智恵はルーズリーフを睨むように見つめながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「科学は万能なんだから……! 必ず完成させてみせる……!
あたしの必殺技、XVサーチャー……!」
水上がその場所に着いた時、鵺の声は耐えきれないレベルになっていた。
水上は地図を確認した。間違いない。地図上にいくつか印した、声が消える境界地点。それらを円周とした円の中心が、ここだった。
「ここが……声の範囲の中心……まさか……。
よし、富士宮たちに……!」




