表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第五話 「確執、そして恐るべき凶魔獣」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/86

シーン8 @妄想界

 妄想界の片隅、廃墟のような城跡。誰の城だったのかもわからない、誰かの心の片隅に打ち捨てられた、きらびやかだった頃を忘れられた、虚栄の骸。

 ホーキングは所々に残る壁の一つに、立てかけられるようにして身を預けていた。


 彼は一人だった。妄想主から拒絶された彼は、どうしようもなく独りだった。

 だからこそ彼はここに来たのだ。自分を取り戻すために。


「集え……光の矢……フォトンアロー!!」


 ホーキングが呪文を唱えるが、何も起こらない。

 この数日、何千、何万回と繰り返した絶望が、ホーキングを襲う。


「……ダメか……っ!」


 心の内にある無力感を全て吐き出すような呟き。

 彼が最も得意としていた光粒子(フォトン)系の呪文。その中でも最も基本的な呪文すら発動できない自分に、虚無感すら湧いてくる。

 だが、諦めるわけにはいかなかった。彼の誇りがそれを許さなかった。


「ちきしょう、どうしたら力を取り戻せるんだ……っ!

 フォトンアロー……。

 フォトンアロー……!

 フォトンアローーっ!!

 ……くそうっ……!!」


 ホーキングが、もう嫌というほど味わった挫折感に、ダメ押しのように打ちのめされていると……。


「ここにいたのですね」


 ウォルフの声に目を上げると、弧次郎とウォルフが壁の後ろから姿を現した。


「……おまえらか。何の用だ?」


 不貞腐れた顔でホーキングは二人を睨みつけた。


「……何をしている」


 弧次郎は低い声で短く言った。それは質問ではなく断罪だ。


「なんだって良いだろ」


 少し掠れた声でボソッと返す。


「良くはない。お前も今どんな状況かわかっているだろう?」


 少しむきになって問い詰める弧次郎に、ホーキングは気のない返事をした。


「あー、わかってるよ」


「本当にわかっていますか!?」


 ウォルフは我慢できずに口を出した。

 

「ディスペアーが現世界に鵺を送り込んで来たのですよ?

 それに、智恵様も体調を崩されて……」

「わーってるつってんだろが!

 それに! あのチビガキも自業自得だろ!」


 ホーキングがわめいたその言葉に、弧次郎の奥歯がギリッと鳴った。


「自業自得……だと……?」


「あーそうだ。てめぇで妄想した俺様を、てめぇで拒否してるんだからな。

 てめぇの妄想すら受け入れられねえ自分がどんだけちっぽけか、ちったぁ思い知れば良いんだよ!」


 その言い草は、二人には信じ難いものだった。そして同時に、決して許すことの出来ない暴言だった。


「何だと……!」


「本気で言っているのですか! ホーキング! 智恵様は……」

「本気に決まってんだろ!」


 ホーキングは二人を上回る大声で怒鳴った。


「つうかてめえ、怒ってるときくらい敬語使ってんじゃねえ!」


 ウォルフに向かって吐き捨てるホーキングに、弧次郎は激高した。


「貴様……!」


 だがホーキングは弧次郎たちの怒りに頓着することなく、うっとうしそうにまくしたてる。


「おめーらもう帰れよ! そろそろ子守の時間だろ?

 こっちもおめえらと時間つぶしてる暇ねーんだよ、俺様は忙しいんだ!」


「ホーキング……!」


 怒りに身体を震わせるウォルフ。弧次郎はその肩をぽん、と叩いた。


「……行くぞ、ウォルフ」


「弧次郎……」


 ウォルフは気を落ち着け、姿勢を正す。弧次郎はホーキングに背を向けた。


「無駄足だった。一刻も早く鵺を倒すほかはなさそうだ」


「そのようですね……」


 そのまま何も言わず、弧次郎は姿を消した。自分の為すべき事のため、自分の領域に戻ったのだろう。

 ウォルフは弧次郎が消えるのを見届けると、もう一度ホーキングに向き直った。


「……妄想主を守りきる事は、私たちの義務、いや存在意義そのもののはず……。

 それだけは、忘れないで下さい……」


 それだけ言って、ウォルフも消えた。

 後にはホーキングだけが残った。


「へっ、おめえらにはわかんねーよ。

 妄想主になんの不思議もなく受け入れられてるおめえらにはな」


 ホーキングは小さくそう呟くと、少しだけ、笑い声を出した。何も面白くはなかった。


「……さて、どうやって俺様の力を取り戻すか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ