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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第五話 「確執、そして恐るべき凶魔獣」

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シーン3 @現世界某所

 アラジンは上機嫌だった。作戦の第一段階は滞りなく進行している。

 MSガールズとやらを亡き者にする力を持つ凶魔獣。それを現世界に呼び寄せるための準備も、残るは最終確認を残すのみだ。

 部下の姿は見えない。まだ作業が終わっていないのだろうか。

 アラジンは大声で呼びかけた。


「……準備は整ったか?」


 しばらく待つ。だが返事はない。


「……準備はできたのか?」


 さらに待つ。だがやっぱり返事はない。

 アラジンは苛立って怒鳴った。


「……準備出来ているのか!?

 コードネーム・ジン!!」


 アラジンの怒声を食い気味に、野太い男の声が響き渡った。


「ハイハァ~イ♪

 天知る地知るお味噌汁♪

 豚汁ブラジルアルゼンチン♪

 皆様おー待ちかねの~!

 コードネーム・ジン!

 満を持して! 今! 参上!!」


 この無駄にテンション高く無駄に長い口上の間に、アラジンの周囲に風が巻き起こり、その風が集まって一人の男に変化した。

 ムキムキの肉体を持つ、おっさんである。

 彼の名前は、ジン。ランプの精霊である。

 アラジンの配下である彼は、凶魔獣を呼び寄せる準備を任されていた。


「……満を持さんでいいから、早く返事をしろ。

 準備は整っているのだろうな?」


 アラジンは少しイラッとしながら確認した。さっきまでの上機嫌が台無しだ。


「もっちろ~ん♪ で、ございますですハイ。

 もう不必要なまでに完全に!

 過剰なほど完璧に!

 これでもかと言わんばかりに整いまくっておりますです、多分」


 アラジンはさらにイラッとする。


「多分とはなんだ、多分とは。

 ……まぁ良い、材料を早く出せ」


「ハイハァ~イ♪

 かーしこまりまくりでございーます♪

 少々々々々々、お待ち下さいませー!?」


 相変わらず鬱陶しい喋りで恭しくお辞儀をするが、そのまま動こうとはしない。


「……で?」


 アラジンが促す。もしかしたら準備をサボっていたのか……。


「ハイハァ~イ♪

 もぅ、少々々々々々、お待ち下さいませー!?」


 全く同じ動きで頭を下げて、また同じように突っ立っている。


「……で?」

「ハイハァ~イ♪

 もぅ、少々々々々々、お待ち下さいませー!?」


 そして、沈黙。


「……で?」

「ハイハァ~イ♪

 もぅ、少々々々……」


 ジンが何度目かのお辞儀をしようとした時。


「ばかぁ~~~~~!!!」


 幼い女子の声と共に、ゲンコツが降ってきた。

 ゲンコツが頭にヒットし、ぐらつくジン。


「ぐはっ……!」


 ジンの頭を殴り飛ばしたのはアラビア風の派手な衣装を着た少女、いや幼女だ。人間年齢にして6歳くらいだろうか。

 アラジンはその子の両肩を掴み、感極まった声を上げた。


「おぉジニー、ジニーじゃないか~!

 OH! こんなに可愛い子が私の娘なのかい?

 さぁよーく顔を見せておくれー?」


 ジンの娘、ジニーは、もう一度拳を固めて父親の頭に叩きつける。


「ぐはっ!」


「……殴りますよ?」


 ジニーは冷たく言い放った。


「もう殴ってるのだよジニー。

 父を2発も殴るなんてひどいのだよジニー」


 父の弱々しい抗議などものともせず、すぅ〜っと息を吸った。


「なぁにが『不必要なまでに完全に』ですか!

 なぁにが『過剰なまでに完璧に』ですか!

 なぁ~にが『これでもかと言わんばかりに整いまくってます』ですかっ!

 ぜーんぶあたしにやらせて、おとたまはなんにもしてないくせにっ!!」


 とんでもない暴露である。

 だが、流石に自分の仕事を幼い娘に全て押し付けるなど……。


「OH愛娘のジニー、そう言うことばらすなんて父は悲しいぞ?」


 ジンが悲しげに言った。娘に全て押し付けていたのは本当だったのか。


「だってー。有能な愛娘に任せた方が全てにおいて安心、完全、パーフェクト!

 ……そんな冷静な作戦と、娘に対する絶対的な信頼! 愛!

 そんな父の想いからの行動を、『なんにもしてないくせに』とは……。

 父は泣けてくるよ……。

 よよよよよ……」


 明らかな嘘泣きである。


「あーもうウザい。どーせめんどくさいからでしょ」

「どギク!!」


 オーバーリアクションで胸を押さえるジン。こいつ、全方位をバカにしているのか。

 アラジンは疲れた顔で、親娘喧嘩に口を挟んだ。


「……そろそろいいか?」


「ごめんなさい!

 うちのおとたまがいつもいつもご迷惑おかけしてしまって!

 準備はできましたっ!」


 ジニーが慌てて頭をぴょこんと下げた。


「いつもいつもって……。

 私たち今回が初登場だよ? ジニー……」


 訳のわからない事を口走るジン。少し黙っていろ。

 アラジンはジンを完全にスルーして、ジニーに指示を出した。

 妥当な判断だろう。


「……ふむ。ではジニー、魔獣の依り代をここへ!」


「はいっ! アラジン様!」


 ジニーの元気なお返事の後に、動物達の声が微かに聞こえてくる。

 その声がだんだん大きくなって――。


「……愛娘ジニー、こんなに立派になって……。父、ちょっと嫉妬……」

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