シーン7 その頃の悟空と狐仙
街を見下ろす上空で、狐仙は上機嫌だった。作戦は順調そのものだ。
ひょうたんの中に閉じ込めた人間の数は、確認するたびに増えていく。
「狐仙、調子はどうだ?」
鼻歌を歌いながらひょうたんを撫でている狐仙の横に、筋斗雲が飛来した。
様々なパンを積載した筋斗雲の真ん中で、カレーパンを頬張りながら声をかけて来た悟空に、狐仙はとろけそうな表情で、甘ったるい声を出した。
「あらぁン、悟空様ン。現在までに集めた人数は九万飛んで274人。もう少しで10万を突破しますわぁン」
「それはいいんだけどよ、MSガールズの三人目は?」
今度は焼きそばパンに手を伸ばしながら、悟空は狐仙の持つひょうたんに目を向ける。
狐仙は少し残念そうな顔でひょうたんの紐をつまみ上げた。
「うぅん、まだですわねぇ……。
やっぱり三人目を捕らえてから……ですの? 中の人間たち、溶かしてしまうのは……?」
「さーぁ、どうすっかな?」
悟空はニヤリと笑って、焼きそばパンを飲み下した。
MSガールズも、残るはあと一人だ。狐仙はすぐにでも、捕らえた人間ごとMSガールズの二人を溶かしてしまいたいようだが、今回の目的はそこではない。
悟空はジャムパンを食いちぎって、狐仙に発破をかけた。
「とにかく、お前はもっともっと人間つめこんどけよ」
もちろん狐仙は捕らえる数についても抜かりはなかったし、自負もあった。今この瞬間も、人数は着々と増えているのだ。
「かしこまりましたわぁン、悟空様ン。
10万突破は時間の問題……。
9万飛んで433人、9万飛んで451人、9万飛んで478人、
9万飛んで478人、9万飛んで478人……」
「ん……? なんか、増えてなくね?」
タルタルエビフライパンを二口で平らげたところで、悟空は違和感に気づいた。
無論カウントしている狐仙も気づかないわけがない。
「あら……そうですわね。フタは開けてありますのに……。
どうして急に……?」
もしひょうたんに不具合が起きているのだとしたら、そんな事を現世界の人間に起こせるはずがない。
だとするなら。
「MSガールズ……のせいか……っ!」
手にしたクリームパンがぐしゃりと潰れ、悟空の拳がクリームにまみれた。
思わず力が入って握りつぶしてしまったクリームパンを口に押し込み、べっとりとクリームが付いた手をぺろぺろと舐める。
「あらあら、悟空様ン、お手々が大変ですわン」
狐仙が慌てて手絹を取り出して、甲斐甲斐しく悟空の手を拭う。丁寧に指を一本一本拭いながら、狐仙は甘い声で、悟空の耳にささやいた。
「中にいる小娘二人に……何かした様子はございませんわ。何か仕組んだとすれば……」
悟空は狐仙から身体を離すと、今度はコロッケパンに手を伸ばした。
「残った一人で……何が出来るってんだ……?
狐仙、様子見に行くぞ!」
狐仙は少し拗ねたような顔で悟空を見ていたが、悟空が構わず飛び去ると、犬ならば全力で尻尾を振っている時のように、とろけた表情になった。
「はぁい、かしこまりましたわぁン、悟空様ぁン」




