シーン5 その頃、ひょうたんの中では……
ひょうたんの中は、さらに劣悪な環境になっていた。詰め込まれる人数によって、この異空間は少しずつ広がっているようだが、それでも人口密度はさらに上昇していた。
圧迫も、温度湿度も我慢の限界をはるかに超えていたし、酸素の濃度も下がってきているようだ。
絶体絶命である。
「しかし……どんどん混んでくる……な……」
水上鮎は、完全に身動きを封じられた状態で、教え子二人に声をかけた。
教師であるからには、必ず生徒二人を無事に家に帰さなければならない、と決意を新たにしていた。
だが、どうすればこの状況を打開できるのか、皆目見当がつかない。
生徒たち二人の声も、少し弱ってきていた。
「人口密度的にも、不快指数的にも……殺人的……レベル……ね……。あたしの……計算に、よれば……」
「暑いし……苦しいし……ピンチ……だね……」
あかりの声はまだ元気を残していた。ピンチに対してテンションが上がっている事ももちろんだが、純粋に体力が取り柄だというのも大きいだろう。
それに引き換え、智恵の方はだいぶ参っている様子だ。
「さすがに……これだけ人がいて……殺気立ってる状態では……
お前らの話し聞くどころじゃないな……。
それより……大丈夫か? 特に、鷹城……?」
水上が背後に意識を向けると、背中に押し付けられている智恵の顔がわずかに動いた。
「だ……大丈夫じゃ……ないかも……です。あたしの……計算に……」
「計算はいいから。まずはここがどこなのか……脱出方法はあるのか……」
その時また人の波が起き、圧死しかねない凄まじい力が三人を襲った。
「ぐ……っ!!?」
「鷹城……大丈夫か……? しかし……また混んで来たな……」
文字通り手も足も出ない状況。あかりは天井を見上げたまま、祈るようにつぶやいた。
「弧次郎さん……あたし……どうしたら……?」




