シーン6 再び春川
後京ドームの熱気は、ドームを破裂させんばかりに膨らんでいた。姫咲ゆうきのライブコンサートに集まった七万人超の観客の歓声が渦巻き、津波のような力感をもってドーム内に充満していた。
一曲目を歌い終え、歓声が静まりかけたタイミングで、姫咲ゆうきの声が響いた。
「みんな~! ありがと~~~!!」
またひとしきり歓声のヴォリウムが上がる。
少し間をおいて、ゆうきのトークが始まった。
「とうとう念願の! 全国ツアー始まったよー!
一番最初にこの後京ドームでライブ出来るなんて、もうサイコーーーー!
来てくれたみんなもサイコーだよー!!
実はあたし、昨日はドッキドキして、眠れませんでしたー!
でー。朝、寝坊しそうになってー、マネージャーさんに起こされてー。
やっちゃったーちゃはー!……みたいな!!」
うおおおおお、という歓声が上がる。春川の隣でも、後輩女子が立ち上がって声援を送っていた。
「キャーーーー!! ゆうきーーーーーー!!」
もう悲鳴もしくは絶叫と言っていい声を上げている後輩女子をチラッと見て、春川はいつもの笑いを漏らした。
「ククク……。なんかみんなテンションすげ……ウケル。ククク……」
ステージ上のゆうきのトークはいよいよ盛り上がってきた。
「でも! ここに来てくれてるみんなはまだまだ元気いっぱいだよね!
……アリーナぁ!!」
地鳴りのような歓声がアリーナ席から巻き起こった。春川の横で、後輩女子もステージ上のゆうきに手を振って叫んでいる。
その時突然、春川の周囲から人の気配が消えた。だが鏡を見ながらイヤホンで音楽を聴いている春川は、その事態に気付かない。
「スタンドのみんな~~~!!!」
ゆうきの声に呼応して観客が総立ちで応える。
……と、場内が静まり返り、スピーカーからキーン……という音が空虚に響いた。
「え……あれ? み、みんな?」
一瞬にして観客が消え去ったドーム。ステージの上で一人、途方に暮れるゆうき。
「あ……あれ?」
観客席には春川が一人、あたりを見回していた。
その頃。静まり返った後京ドームを眼下に見ながら、狐仙は満足げに高笑いしていた。
「あ~~~~っはっはっはっは! さすがは悟空様だねェ!
呼ばれて返事をした者を吸い込むこのひょうたん、紫金紅葫蘆を、ここまで見事にお使いになるとは!
その能力をコピーした小ひょうたんを人間どもにばらまき、大量の人間を集め、絶望と恐怖を味わわせるこの作戦……必ずや成功させて見せますわ……。
そしてついでにMSガールズとやらも……ふふふ……」




