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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第二話 「三つの力」

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シーン7 @さて屋上

 学校の屋上では、両腕を強化カスタムされた魔獣バクが歓喜の雄叫びを上げていた。


「バクバクバクーーー!! う、うまいバク! しかも、人間がたくさんいるバク!

 昨日の忌々しい変身人間を倒すエネルギーもすっかりたまったバク~!!」


 自慢の腕を振り回そうとしながら、見える範囲の人間一人一人を眠りに落として夢を喰らっていくバク。

 パワーは充分に蓄えているが、まだその食欲は止まらない。

 その姿を遠巻きに眺めながら、アラジンは大声でバクに呼びかけた。


「バクよ! その体に埋め込んだ新兵器! 見事つかいこなし! あの小娘どもを確実に仕留めるのだ!」

「バックバクバク~~~~!!」


 腕を振り回そうとしながらアラジンの指示に応えると、バクはさらに夢喰い光線を乱射した。

 満足気に見守るアラジンの横に悟空が現れ、面白そうに様子を眺める。


「へえ~~、おっさん、調子良さそーじゃん」

「……小僧か。今頃現れてどういうつもりだ?」


 アラジンの言葉に含まれる棘。だが悟空は全く気にする様子もなく、バクに視線を向けて言った。


「へへっ、おっさんの手腕ってのを勉強させてもらおうと思ってさ」

「ふっ……心にもないことを」


 悟空の殊勝な言葉に、アラジンの表情も緩む。


「あはは。まぁ、邪魔はしねーよ。

 ……にしても、ずいぶんごっついもん付けたなぁ」


 悟空は面白そうに、バクの両腕につけられた追加装備を眺めた。


「大口径超出力吸気圧縮砲管……。両腕に埋め込んだ。これでバクの戦闘能力は申し分ない」

「だろうなー」


 悟空はうんうんとうなづくと、頭の後ろで手を組んでアラジンを見上げ、ニヤニヤ笑いながら続ける。


「でもよ、両腕があんなになっちまって大丈夫かよ。

 あの管、7~8メートルはあんだろ。持ちあがんのか?」


 バクの両腕に一本ずつ埋め込まれた大口径超出力吸気圧縮砲管。それは口径350㎜、全長8mの巨大砲であった。

 アラジンがバクと距離を取っているのは、この大口径超出力吸気圧縮砲管が、バクの動きによって自分にぶつかってしまう事を警戒してのことだ。

 だがアラジンが懸念するまでもなく、バクの身長の倍以上に及ぶ長さの砲管は、持ち上げる事は出来ても、気軽に振り回す事は不可能だった。

 もちろんバクは、そんな事は微塵も気にしていない。


「大丈夫バク~~! ここでたくさん夢食って、元気100倍バク~~!

 あの変身人間どもがこの建物の中にいることはわかっているバク!

 あとはあいつらが出てくるのを待つだけバク~~~!」


 バクは、よいしょっと砲管の先を持ち上げ、ぐるりと振り向いた。砲管の先が大きく弧を描く。アラジンが確保していたバクとの距離は適正だった。

 悟空は面白そうにクスクスと笑いながら、まぜっかえす。


「そりゃあ待つしかねえだろ。

 そんだけなっげえ管が二つも両腕についてりゃ、建物の中に入っていけねえもんな」


 バクの表情が固まるのを見て、アラジンは一瞬ため息をつきかけるが、気を取り直した。

 まだ負けたわけではない。まぁ始まってもいないわけだが。


「む……むぅ……。

 こ、これだけ仲間が倒れているのだ。小娘どもも黙って隠れてはいまい!」

「おっさん、意外と抜けてんのな」


 面白くてたまらないといった顔でクスクス笑う悟空。アラジンは苛立ちを込めて叫んだ。


「む……! だまれ!

 バクよ、その大口径超出力吸気圧縮砲管で! この建物ごと小娘どもを破壊するのだ!」


「バ……バク!?

 バ……バクバクバク~~~~!!」


 一瞬、『え、マジですか!?』という表情を浮かべたバクだったが、アラジンの顔を見て、慌てて戦闘態勢……っぽいものを整えた。


 そこに。


「そこまでよ!」


 元気いっぱいの声が響いた。富士宮あかりである。

 屋上の出入り口から、あかり、智恵、美佳がバタバタと飛び出してくる。


「そこまでよ! えーと、か、怪物と、空を飛んでたおじさんたち!」


 もう一回言い直したが、相手の名前がわからず言いよどむあかり。


「こういう時は、敵の名前とか団体名とか、欲しいわね……」

「私は、那須野美佳です!」


 腕組みをして考え込む智恵の横で、美佳が元気よく手を上げた。


「み、美佳!? なに名乗ってるの!」

「だ、だって……」


 突然悪の組織に個人情報を晒す美佳に、あかりは驚いて声を上げる。

 言いよどむ美佳に、智恵が助け舟を出した。


「名前を聞くときは、まず自分から名乗るのが……って事でしょ」

「うんっ!」

「それって、相手に名前聞かれた時にヒーロー側が言う台詞でしょ!

 ……あ、今回はこっちが名前聞こうとしてるんだから、合ってるのか。

 あたしは! 富士宮あかり!」

「ふ、二人とも……。

 あたしは……えーと、あ、悪党に名乗る名などない!」

「あ、智恵、ずるい! それかっこいい!」


 三人の会話を聞きながら、悟空は呆れたような面白がっているような顔で、アラジンを見上げた。


「……相変わらずすごいね、あの姉ちゃん達。緊張感って言葉知ってるのかな」


 聞えよがしにそう言って声を出して笑う。その言葉に一番カチンと来たのは智恵だった。


「うっさいわね! そのくらい知ってるわよ!

 あたしは鷹城智恵! 天才科学者よ!」

「私たちも名乗ったんだから、今度はあなたたちが自己紹介する番だよ!」


 智恵と美佳の台詞に、悟空は心底面白そうに笑った。


「か~~~!! 気を失いそうなくらい脳天気だな!」


 興味津々のぎらつく目で三人を見回す悟空を押しのけて、アラジンが一歩前に踏み出す。


「ふっ、そこまで言うなら名乗ってやる。

 私はアラジン。この現世界を暗黒に染める、ディスペアーの……幹部!」

「同じくディスペアーの幹部、孫悟空!」


 二人が名乗りを決めると、バクも腕をぐっと持ち上げて、ふらつきながらポーズを決めた。


「バクはバクバク! 同じくディスペアーの、かん……」

「お前は幹部じゃねーだろ」

「あイタタタ……バク~」


 スッと近づいた悟空に頭を殴られ、頭を撫でようにも、バクの腕は管になっていて不可能だ。

 全員が自己紹介を終えたところで、美佳が指を追って確認する。


「ええと、ディスペアーの、アラジンさんと、悟空くんと……バクね」

「なんでバクだけ呼び捨てバク~~!」


 バクは抗議するが、全く誰も聞いていなかった。

 バクを完全にスルーして一歩前に出たあかりは、全てを仕切りなおすように叫んだ。


「そこまでよディスペアー! あんた達の悪だくみは、あたし達が許さない!」

「うわ、やり直してるし!」


 一周回って感心している悟空。

 アラジンはあかり達に向けて敵意のこもった笑みを漏らした。


「ふふふ……現世界の小娘どもが……。この強化バクを更に強化改造したバクに勝てるものか!」


 アラジンのいかにも悪役なセリフに、今度は智恵が前に進み出る。

 腕組みした右手をほどき、人差し指で眼鏡をくいっと上げ、得意顔で言い放った。


「それはどうかしら! あたしの計算によれば……あなたたちはあたし達に勝てないわ!」

「やった! 智恵ちゃんの計算なら、安心っ」


 はしゃぐ美佳とキメ顔の智恵に、あかりは携帯を取り出して、高らかに言い放った。


「智恵、美佳、変身よ!」

「OK!」


 二人が声を揃えて携帯を取り出す。ピッ、と音を立てて待ち受け画面を表示させると、三人はそれぞれのパートナーを呼び出した。


「弧次郎さん!」

「応!」

「ウォルフさん、お願い!」

「お嬢様、ですからさん付けは……」

「ホウキ!」

「あ? なんだとぉ!?」


 三者三様の応答からの変身……と思いきや。


「てめ、いーかげん、俺様に名前つけろ!」


 突然始まる智恵とホウキの喧嘩。


「うっさいわね! じゃあ……ホーキング、でいいわね!」

「あ? なんじゃそりゃ!!」

「宇宙物理学の天才にして今世紀最大の理論物理学者、スティーブン・W・ホーキング博士からとってるんだけど? なんか文句あんの!?」

「あ……い、いや……。お、おう」


 ちょっと照れながら文句を言えなくなるホウキを見て、あかりはうなずいた。変身の時が来たのだ。


「念写! MS! シンクロナイズっ!!」

「応!!」


 弧次郎が応じると、携帯からあふれた光が、あかりの身体を包み込んでいく。

 光が純白のアンダースーツに変化し、赤いレイヤードタンク、赤いスポーツスカート、赤の戦隊ヘルメットが生成された。

 ベルトが腰回りを引き締め、右腰に携帯ホルダーが下がる。

 赤い戦士の誕生だ。


 あかりの変身を見ながら、智恵も携帯を額に当て、叫んだ。


「あ、えっと……よしっ!

 念写! MS! インストール!!」

「ぃよっしゃあ!」


 ホーキングが応じると、携帯からあふれた光が、智恵の身体を包み込む。

 純白のアンダースーツの上に装備されるのは、青のベストとリボンタイ、青いプリーツスカート、そして青の戦隊ヘルメットだ。

 ベルトが腰に巻きつき、右腰には携帯ホルダー。

 青い戦士の誕生であった。


 そして最後は美佳。二人の変身を見届け、自分のデザインに満足そうに微笑むと、携帯を額に当てた。


「私は……そうだ!

 念写! MS! コラボレート!!」

「かしこまりました、お嬢様!」


 ウォルフが応じ、携帯から光があふれた。

 美佳の身体を包む光が純白のアンダースーツに変化し、腰から胸を黄色いコルセットが包み込む。黄色のティアードスカートがふわりとはためき、黄色の戦隊ヘルメットがキラリと光った。

 三人お揃いのベルト。右腰には携帯ホルダー。

 黄色い戦士の誕生であった。


 変身を終えた三人が、あかりを中央にして並び立つ。

 あかりはノリノリで名乗りを上げた。


「真っ向勝負! MSレッド!!」


 そして右手にいる智恵を促すように視線を向けた。

 智恵は慌てて口上を考える。


「え、ええと……見事に勝利! MSブルー!!」


 美佳はあかりが促すまでもなく名乗りをあげた。


「無敵のショータイム! MSイエロー!」


 あかりは拳を天に突き上げ、凜とした声を放つ。


「夢が生み出す無限の力っ! 夢幻戦隊!」

「MSガールズ!!」


 声を揃えてポーズを決める三人。背後に爆発のエフェクトでも欲しいところだが、あかりの脳内では当たり前のように爆発エフェクトが追加されているのだろう。


「……っく~~~! 決まったぁぁ!!」


 握った拳をぷるぷると震わせ、感動に浸っているレッド。

 三人の変身をしっかりと見届け、アラジンは敵意を燃え上がらせた。


「ぬぅ……。MS……ガールズ……だと?」

「あはは!姉ちゃん達、かっこいいねー!」


 一方悟空はわくわく顔で三人に声援を送る。


「昨日とデザインが変わっているバクね……飽きっぽいバクか?」


 バクが不思議そうにつぶやいたのを聞き逃さず、イエローは大喜びで声を上げた。


「わぁ、ちゃんと気づいてもらえた!」


 しかしレッドは油断することなくバクを見据え、警戒を緩めない。


「ちゃんと気づいたところはえらいけど、だからって、許さないからね!」


 だがバクも負けてはいなかった。あのMSガールズのデザインが変わっているからと言って、恐れる事はない。自分も、戦闘用に強化されているではないか。

 バクは砲管を三人に向けた。


「バクも変わっているバク! お前達には負けないバク!」


「……あ! あの腕!」


 声を上げるブルー。


「何なの……? あの長い……筒!?」


 身構えるレッド。


「き、気づいてなかったバクか……」


 がっくりうなだれるバク。だが、すぐに気を取り直し、渾身の力で砲管の先を持ち上げた。


「くそー、いくバクよ!! 大口径超出力吸気圧縮砲管! 吸い込みモード!!」


 急激な空気の流れが巻き起こった。バクが持ち上げた両腕の砲管へ、恐ろしい勢いで空気が吸い込まれていく。

 だがバクの動きは終わらない。


「……からの! 象鼻大回転竜巻~~! バクバクバク~~~!」


 暴風が彼女たちに襲い掛かる。不規則に渦巻く風が無数のかまいたちを発生させていた。

 かまいたちとともに、耐え難い風圧が彼女たちを責めさいなむ。

 必死に耐える三人の悲鳴も風がかき消してしまい、轟音だけが脳をかき回していた。


「すごい風だ! 耐えろあかり!」


 ヘルメットの中で弧次郎の声が響く。その声はブルーとイエローにも共有されていた。


「あの腕の管から吸い込んだ大量の空気を圧縮して、鼻から吹き出してるっつーわけか!」


 ホーキングの声に続いて、ウォルフの切迫した声が三人に要請した。


「お嬢様方、武器を!!」


 その言葉は三人の心に火をつけた。

 まだ負けたわけじゃない。手も足も出ないわけじゃない。まだ、逆転する手はあるはずだ。


「そうだ、武器!」

「武器!」

「うん!!」


 まずイエローが携帯を取り出した。


「ビュー・ブラッシュストリング!」

「……かしこまりました」


 ウォルフの声とともに、携帯が光の球となって伸び、一本の大きな筆になった。その筆には四本の弦が張ってあり楽器としての機能も持たされていた。

 イエローの手に握られた、ウォルフの力を宿したアイテム。

 これがイエローの武器、ビュー・ブラッシュストリングだ。


「ワイズ・オールマイティガン!」

「へーんけーい!! とぉ!」


 ホウキの掛け声とともにブルーの携帯が光の球と化し、一丁のサブマシンガン型変形銃となる。複雑な機構を備え、ホーキングの力を宿した万能銃だ。

 ブルーの武器、ワイズ・オールマイティーガンであった。


 そして最後に、気合の乗ったレッドの声が響く。


「パウ・サイブレーーーーーーードっ!!」

「はぁぁぁっ!!」


 弧次郎の気合一閃、レッドの携帯は瞬時に光を放つ剣となった。

 レッドの武器、パウ・サイブレード。

 弧次郎の力を宿した無敵の剣がレッドの手に収まっていた。


「できたぁ!」


 無邪気にはしゃぐイエローに引き換え、三人のパートナーたちは一仕事やり終えたように、息を切らしていた。


「な、何とか……」

「結構……しんどいな……」

「よし、あかり、やつを倒すぞ!」


 唯一弧次郎だけは、平静を装う余裕をもって、レッドに檄を飛ばす。


「はい!」


 レッドが返事をした時、武器召喚の際に発動していた結界が消え、ふたたび暴風が三人を襲った。

 同時に吸気しながら吹き出すバクの暴風は止まない。


「くぅ! これじゃあ吹き飛ばされないようにするだけで……!」


 二人の前に立ち、できるだけ風を防ごうとするレッド。反転攻勢のチャンスは全く見当たらない。

 その時。


「お嬢様!!」

「うん!」


 ウォルフの声にうなずくと、イエローはビュー・ブラッシュストリングを構えた。


「え~~~~~い!!」


 そのままビュー・ブラッシュストリングを振り回すと、その動きに従って、空中に線が引かれ、絵が描かれていく。


「く、空中に……盾の絵?」


 レッドの目の前に大きな盾の絵が出来上がった。

 そして。


「できたっ! えーい!」


 イエローは絵を完成させると、ビュー・ブラッシュストリングをギターのように抱え、その弦をかき鳴らした。

 イエローの演奏を浴びて、盾の絵が本物の盾となった。


「美佳の武器は筆と弦……。空中に描いた絵を、音楽の力で実体化させる!」

「そっか!! 盾の絵が、風を防いでくれてる! よぉぉし!」


 レッドは気合を込めて剣を握りなおすが、バクは全く意に介さず、次の攻撃にとりかかる。


「バクバク~! 生意気バクね!! そんな盾、打ち砕くバク~!!

 大口径超出力吸気圧縮砲管! 吸い込みモード!! からの……!」


 右腕の砲管が金属音を立てて変形し、砲口が厚みを増した。右の砲管からの吸気が止まり、その分左の吸気が激しくなる。


「大口径超出力吸気圧縮砲管! 高圧圧縮空気砲! バク! バク!!」


 掛け声とともに圧縮された空気弾が発射され、盾に直撃した。一撃二撃で破壊されるものではなかったが、音楽で盾を支えているイエローにも衝撃が響く。このまま撃ち続けられたら、遅かれ早かれ、盾かイエローのどちらかが限界を迎えてしまうだろう。


「くぅ……っ!」

「防いでいるだけじゃ……! どうすれば……!」


 耐えるイエロー。焦るレッド。圧縮空気の弾丸は間断なく発射され、反撃の隙は見えなかった。


「あのなっがい管……あれがくせ者ね……。あたしの計算によれば、あの管をなんとかできれば……」


 ブルーが人差し指を顎にちょんと当てて考え込むと、ホーキングがしびれを切らして声を出した。


「おいチビ! 銃のセレクターを「地」に合わせろ! 土の弾丸で、あの管を詰まらせる!」

「チビとは何よ!!」


 ホーキングに噛みつきながら、ブルーは銃のスイッチを切り替えた。


「でも! 片方で空気吸いながらもう片方で撃ってきてる!」


 レッドの言う通り、切れ目ない砲撃に、ブルーは盾の陰から飛び出すタイミングを計りあぐねている。


「盾、もう……保ちそうもないよ……」


 必死で盾を維持しているイエローを見て、ブルーは意を決してうなずいた。


「ふん! 切れ目なく撃ってくるなら、避けながら当てれば良いだけよ!」

「はは! 的が小せえからな!」

「うっさい!! いくよ!」


 盾の陰からブルーが飛び出していく。その背にレッドが声をかけようとした時、バクの笑いがこだました。


「バックバクバク! 構える暇もないほど撃ってやれば良いだけバクー!

 高圧圧縮空気砲!! バルカンモード!! バ~クバクバク~~~!!」


 右腕の砲管を、六本の銃身が円周上に並んだ回転式機関砲のように変形させ、バクは圧縮空気弾を連射する。その空気弾はブルーへ殺到した。


「あ……きゃああっ!!」

「智恵!!」


 レッドは後先考えずに飛び出し、ブルーの前に立ちはだかった。


「あかり!」


 ブルーの声を背に受けて、その手に握ったパウ・サイブレードを構えるレッド。


「おりゃあああああああ!!」


 気合とともにレッドが振るう剣は、高密度で飛来する圧縮空気弾を全て切り裂いていく。


「すごい……あかりちゃん……」


 その姿に見とれるイエロー。レッドの剣は、振るっているその腕とともに、視認できるのは残像だけだ。


「早速、特訓が役に立ったな……」


 満足気に声をかける弧次郎。レッドは空気弾を切り払いながら叫んだ。


「智恵、今のうちに!!」


 ブルーは片膝をついて身体を安定させ、ワイズ・オールマイティーガンを構え、気合を込める。


「よぉし、いくわよ!

 ワイズ・オールマイティーガン! グランド・ビュレットぉ!

 いっけえええーーー!」

「はぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」


 ブルーとホーキングの力を込められた一発の弾丸が、光を引いてバクへ飛んだ。が、激しい気流で軌道が定まらない。


「な、なんだバク! そんなんじゃ当たらないバク~」


 左の砲管に迫る弾丸。ちょっと腕を動かせば弾丸はその脇をすり抜けていくだろう。

 ……だが。


「バ……バク?」


 弾丸は急激な弧を描いて、左の砲管へ飛び込んでいった。砲管の吸気が止まり、圧縮空気弾の連射が止む。土の弾丸からあふれ出した土が、管を詰まらせたのだ。


「やった!」

「智恵ちゃんすごい!!」

「ねえねえ! 弾丸が曲がったみたいだけど! そんなことできるんだ!!」


 盛り上がるMSガールズ。だがバクは、まだ負ける気はなかった。


「くぅ……、なぜバク……。

 まぁいいバク! 今度はこっちから空気吸って、圧縮空気ごと詰まった土を吹き飛ばしてやるバク!

 大口径超出力吸気圧縮砲管! 吸い込みモード!」


 バクは再び、右腕の管から空気を吸い込み始めた。

 その時。


「よぉし、もう一丁!!」


 ブルーの発射した弾丸が今度は右の管に飛び込み、管を詰まらせた。


「し、しまったバク! 両方、詰まっちゃったバク~~!!」

「すごい智恵ちゃん! 弾を曲げて百発百中で当てるなんて!」


 イエローの賛辞に、ブルーは銃をくるくると回して得意げだ。


「ふっ、あたしの計算通りね」

「あれだけ高圧で空気吸い込んでるんだから、大体で撃っとけば、後は吸い込んでくれるわなぁ」

「うっさいわね!」


 ブルーとホーキングが言い合いを続ける中、バクは流石に焦っていた。


「バ……ク~~~~!!

 や、やりやがったバクな! く、くそー、こうなると、管が邪魔バク……」


 完全に腕が上がらなくなり、動くこともままならなくなっているバク。


「今頃あの管の中は、グランドビュレットからあふれた土がびっしり詰まって、そーとー重くなってるはずだ」


 ホーキングの言葉を受けて、弧次郎は激を飛ばした。


「あかり、チャンスだ!」

「はいっ!!」


 小気味よく応えると、レッドは全身の力を込めてジャンプした。


「とぉっ!!!」

「バ……ババババ……バクーーーー!!」


 空中高く舞い上がったレッドを、バクは目で追う事しか出来ない。


「必殺……! 奥義・万斬刀ぉーっ!!!」


 一気に急降下しながら、最上段に振りかぶった剣をバクに振り下ろす。


「バ……バク~~~!」


 避ける事も出来ず、バクは斬られ、爆散した。


「……あ~あ、結構あっさりだったなぁ、おっさん」


 相変わらず頭の後ろで手を組んだまま、悟空がアラジンの顔を見上げた。

 その目は明らかに、『負けてどんな気分? ねえどんな気分?』と煽っている。


「……フン」


 アラジンは一つ鼻を鳴らすと、魔法の絨毯を広げ、飛び去った。


「あーらら、おっさん、ふてくされちゃった」


 悟空はニヤニヤ笑いながらアラジンを見送ると、三人に向き直った。


「おめでとう、ねーちゃん達。なかなかやるじゃん?

 次はこうはいかねーから、楽しみにしててくれよ!」


 悟空は三人に声をかけると、ひゅっ、と口笛を吹いて筋斗雲を呼んだ。


「じゃあなっ!!」

「あ! こら! 待ちなさい!」


 筋斗雲に乗り飛び去る悟空をレッドが呼び止めようとしたが、既に虚空に消え去っていた。


「……逃げられたわね……」


 ブルーがつぶやいて、変身を解除すると、レッド、イエローも変身を解除した。


「でも、勝ったね!」

「うん。校庭で寝ちゃってたみんなも、起き始めたわ」


 美佳のほっとした声。智恵は屋上の柵から校庭を見下ろし、安堵のため息をついた。


「一件落着、だね!」


 あかりの声も弾む。


「だが、これで終わりではない……」

「うん……」


 弧次郎の警告に、あかりも表情を引き締めてうなずいた。


「あの悟空ってガキとアラジンっておっさんは、すぐに次の手を打ってくるだろーな。

 ……俺様の計算によれば、ってな」

「……あたしの真似しないでよね」

「まぁまぁ、智恵ちゃんもホウキくんも、仲良く。ねっ」

「お嬢様、彼はホウキくんではなく……ホーキング、だそうですが」


 険悪な智恵とホーキングを仲裁する美佳。の間違いをそっと訂正するウォルフ。

 あかりは智恵と美佳と三人で円陣を組んだ。


「とにかく、あたし達の戦いは、今始まったばかりよ!

 ディスペアーの侵略から、この世界を守るために、みんな、がんばろー!!」

「おーーー!!」


 あかりたち三人は元気に、携帯の三人は仕方なく、声を上げた。


「じゃ、帰ろっか!」


 あかりの音頭で三人は校舎に戻っていく。と、美佳が智恵に走り寄った。


「あ! ねえねえ智恵ちゃん、武器の名前、ちょっと言いにくいから、あだ名つけていい?」

「あ、あだ名……?」


 こうして、あかりたちMSガールズの初陣は、勝利に終わった。

 しかし、ディスペアーはまだ侵略をあきらめたわけではない。

 あかり、智恵、美佳、そして三人のパートナー達。

 彼女たちの戦いは今、始まったばかりなのである。

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