シーン4 その頃の卑弥呼さま
神託の間は、薄闇で満たされていた。灯りが弱いのではない。四方の壁にしつらえられている蝋燭は盛大に燃え盛っているが、それでも薄闇は、少しずつ濃くなってさえいるようだった。
祭壇の前に佇む卑弥呼は、事態の推移を苦々しく見守っていた。
「何故だ……! 九分九厘成功していた我の作戦が、何故こうも……!
……いや、まだ我が想定の範囲で推移している。
もし万が一不測の事態が起きたとしても、その時は我が……!」
ざわり、と周囲の闇が濃さを増した。
卑弥呼はその闇を歓迎するが如く、とろけるような笑顔を浮かべる。
「主よ、ご安心下さい。
MSガールズは必ずや……」
闇が震え、地鳴りのような音が神託の間に満ちた。
卑弥呼は自らの身体に力が流れ込んでくるのを感じ、陶然として声を上ずらせる。
「あぁ……主のお力がますます……。
闇の力が急速に増大してゆく……。
全てを飲み込む闇の力……」
その時、濃くなっていた闇が急速に集まり、大きな黒い塊となった。その塊は闇を吸い寄せながら、その矛先を収束させていく。
「……え……? この……力……!
我を……な……っ!」
黒い塊は明確に意思を持って、卑弥呼を引き寄せていた。
突然の事に卑弥呼は恐怖した。
「な……これは……!」
卑弥呼はその引力に引きずられながら必死に抵抗するが、確実に引き寄せられていく。
「作戦はまだ終わっていない。我はまだ主のお役に立てていない!
なのに、何故……!
く……っ、抗えぬ……! 我の力を持ってしても……」
卑弥呼は黒い塊に飲み込まれながら、この恐怖の正体を感じ取っていた。
「これは……主……なのか……?
何故……っ!」
誰もいない神託の間で、卑弥呼は闇の中に引き摺り込まれていく。
「悟空……! アラジン……!」
卑弥呼の悲痛な叫びが消えた時、神託の間を照らしていた火が全て消え、神託の間は静かな闇に閉ざされた。




